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月の年金14.7万円「こんなはずじゃ……」熟年離婚で年金分割、相次ぐ病気に苦しむ71歳男性の誤算

年金生活を迎えれば穏やかな老後が待っているはずだった。ところが「想定外の出来事」によって生活は一変。71歳男性の厳しい現実と、誤算続きの年金生活の実態に迫る。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

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病気が重なり仕事も失う……「こんなはずじゃなかった」年金生活 ※画像:PIXTA
病気が重なり仕事も失い「こんなはずじゃなかった……」※画像:PIXTA

老後は、誰もが思い描いた通りになるとは限らない。熟年離婚や突発的な病気など、たったひとつの出来事が年金生活の前提を大きく変えてしまうこともある。

ノンフィクション作家・増田明利氏の著書『今日、年金暮らしになった 定年を迎えた17人のリアルな老後』は、当事者への取材を通して、高齢者格差や年金生活のシビアな実態を浮かび上がらせた一冊だ。

今回は本書より、思いもよらぬ事態から、思い描いた老後とはかけ離れた暮らしを余儀なくされた、71歳男性のリアルな体験談をお届けする。【前後編の前編/後編を読む】

目次

取材対象者プロフィール

氏名:高野昌成(71歳・仮名) 
現住所:東京都江戸川区
家族構成:単身
年金額:14万7000円 
その他の収入:なし
住居形態:持ち家(マンション)
維持費:管理費・修繕積立金1万2200円、固定資産税2万4000円
健康状態:糖尿病、高血圧、脂質異常症、心筋梗塞、脊柱管狭窄症

熟年離婚で年金も住まいも失った

年金生活にそれほど大きな期待はしていなかった。年齢が高くなっていくのだから体力は低下するし容姿も衰えていく。こういう覚悟はしていたが、今の生活状況は想定していたより悪い。正直なところ「誤算続きだ、こんなはずじゃなかったのにな」という気持ちだ。

1つ目の誤算は、50代半ばに熟年離婚したこと。離婚に伴って年金分割をしたので、もらえる年金が1か月につき約2万8000円も減ってしまった。「本来なら17万5000円ぐらいだったのが14万7000円ほどに減ってね。自分にとってはとても大きな金額ですよ」

離婚したのは16年前。高野さんが55歳、奥さんが53歳だった。「離婚の原因は性格の不一致、価値観の違い。あとは嫁姑問題です。よくある話だよ」

別れた奥さんは美容師免許を持っており、結婚生活中は主婦兼パートタイム美容師として、高野さんの扶養の範囲内で働いていた。離婚後はやはり美容師として働いている妹と一緒に自分たちの美容室を開業したということだ。

2つ目の誤算は、離婚したことによって住まいを失ったこと。「家(中古マンション)を買ったとき頭金のほぼ半分を向こうが出して。月々のローン返済7万8000円のうち3万3000円をパート収入から出していた。別れるとなったから精算しろというわけなんです」

売却処分し、諸々の経費を差し引いた残金の約40%を元妻に渡したという次第。「わたしは賃貸アパートに移ったけど、60歳近くになってアパート暮らしはつらいものがあって。年齢が高くなると家主や管理会社が嫌がるというでしょ、高齢者になって住むところの心配をするなんて哀れだもの。なので自分が受け取った金額以内で買えそうな、小さな中古マンションを探しましてね。今のところを見つけて購入したわけなんです」

23区の最東端にある築37年の1LDK。最寄駅から20分も歩くが、これで住まいの不安は解消できた。

病気が重なり仕事も失う……医療費も大きな負担に

3つ目の誤算は、次々と病気に見舞われたこと。「最初は糖尿病でね。57歳のときに会社の健康診断で、血糖値が高い、要精密検査と判定されて、地元で一番大きな総合病院に行ってみたんです。そこで正真正銘の糖尿病と言われ薬を飲むようになったんです」

年齢が高くなっていくにつれ血圧とコレステロール値も高くなり、ずっと通院していたが、65歳になって4カ月ぐらい経ったときに今度は狭心症の発作を起こして、大学病院に緊急搬送され即入院。「もう投薬だけでは無理ということでバルーン療法を受け、血管の狭窄を拡張する治療を受けました」

このせいで仕事も失った。倒れたときは宅配会社の地域センターのパートタイマーで、受付と荷物、メール便の仕分けをやっていた。1日3時間で週3日の勤務だったが高野さんには貴重な収入源だった。

「分割で年金額が月当たり2万8000円減ったでしょ。月収は4万円ぐらいだったけど、これがあるのとないのでは大きく違う。外で働けば人との係わりも持てるからありがたかったんだけどね」

重労働ではないが身体を動かす仕事。倒れられたり何かあったりしたら困るということで辞めるしかなかった。「去年の暮れには脊柱管狭窄症の手術もしました。悪くなったのは一昨年の春先辺りで痛み止めの飲み薬や湿布薬で対処していたけど痛みが一段とひどくなって。歩くのもつらくて痺れも出てきたので手術してもらったんです」

手術して痛みは治まったがたまに若干の痺れが出てくる。日常の生活に支障はないが梅雨時や冬場は歩くのがしんどいことがある。「糖尿病の状態もあまり芳しくなくてね。糖尿病と診断されたのが57歳のときでしょ、病歴が14年にもなるので節制していても徐々に進んでしまいまして」

糖尿病と診断されてから4年ぐらいは飲み薬1種類と1日1900キロカロリーで抑えられていたが、その後は薬が2種類、3種類と増やされていった。「68歳になった直後からはインスリンの自己注射も必要になり、飲み薬もより強いものに変えられました」

最近は糖尿病の影響で目も悪くなってきた。「かすみ目で視界がぼやけたり、暗い所で見えにくかったりすることがあります。眼科の先生には糖尿病の影響だと言われました」

状態が元に戻ることはなくさらに悪くなったら最悪の場合、糖尿病網膜症で失明することもある。とにかく血糖値を上手くコントロールするしかないと忠告された。「というわけで今は糖尿病内科、眼科、整形外科で診てもらっているんです。毎月、いずれかの診療科に通っています。もう医療費が大変だよ」

70歳になって医療費の窓口負担は2割になったが糖尿病は検査と診察で2400円。調剤薬局では糖尿病の内服薬と自己注射のインスリン、血圧とコレステロールの薬も出してもらっているので2500円。合わせて4900円、1年だと5万9000円近くも必要だ。

「これだけじゃなく眼科で視力検査、眼圧検査、眼底検査をしていて、1回行くと1300円ぐらいかかる。年に4回やっているので5000円とちょっと払っている」

去年はこの他にも腰痛と膝痛で整形外科に2回通い、詰め物が取れたり部分入れ歯が合わなくなったりして歯科医院にも通ったので払った医療費の総額は8万円を超えていた。「やはり重たいですね。だけど我慢して状態が悪くなるのも困る。病院には行かないというのは無理ですものね」

健康寿命は72歳が限度といわれているから、自分と同年齢以上の人はどこかしら不調で病院通いしているのだろうが、年間で8万円も払うのは結構な負担感がある。

「せめて半額ぐらいだったらいいのにな。1か月当たり3400円浮かせられたら、ちょっとは楽になる。近くのスーパーだと、プライベートブランドの食パンが1斤88円(税込み95円)。月末の特売ではカップ麺やレトルトカレーが99円になるんだ。3400円もあったら食パンが10斤とカップ麺とレトルトカレーを10個ずつ。ついでにコロッケも3個買える。こんな風に考えちゃう、我ながらケチ臭いと思うけど」

【後編に続く】
「180万残っていれば……」退職金をつぎ込んだ株が大暴落、71歳男性が直面する「ショボい老後」

著者:増田 明利(ルポライター)
1961年生まれ。1980年都立中野工業高校卒。ルポライターとして取材活動を続けながら、現在は不動産管理会社に勤務。2003年よりホームレス支援者、NPO関係者との交流を持ち、長引く不況の現実や深刻な格差社会の現状を知り、声なき彼らの代弁者たらんと取材活動を行う。著書に『今日、ホームレスになった』『今日、派遣をクビになった』『今日から日雇い労働者になった』『今日、会社が倒産した』『本当にヤバイ就職活動』『今日からワーキングプアになった』『貧困のハローワーク』『今日、借金を背負った』『お金がありません』(いずれも彩図社)、『不況!!東京路上サバイバル─ホームレス、28人の履歴書』(恒友出版)、『仕事がない!―求職中36人の叫び』(平凡社)、『ホープレス労働─働く人のホンネ』(労働開発研究会)がある。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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