
「ミドル世代の転職では給料が下がる」そんなイメージは、必ずしも当てはまらなくなっています。最新の統計では、40代後半から50代前半の男性では賃金が上がった人が下がった人を上回る一方、女性は企業規模や業種によって結果が分かれるなど、年代や性別によって傾向が大きく異なっています。
『女性たちの定年後ーお金・仕事・暮らしのリアル』(坊 美生子著)では、女性が直面するキャリアの壁や定年後の現実についてお伝えしています。
今回は本書から、ミドル世代の転職後の賃金動向や、その背景にある業種・企業規模による違い、さらに55~59歳女性に見られる特徴的な傾向について紹介します。
40代後半男性の転職は賃金増加
転職によって賃金が上がった人はどれぐらいいるのでしょうか。従来、転職で処遇が上がるのは若年層というイメージが強いと思いますが、結論から言うと、直近では、40代後半から50代前半だと、男性は、給料がアップした人のほうが、ダウンした人よりも多いのです。女性は給料がダウンした人のほうが多く、企業規模や産業によってばらつきがあります。
50代後半になると、男女の状況が逆転します。以下、同じく「雇用動向調査」より、転職によって賃金が増減した人の構成割合を、性・年齢階級別に詳しく見ていきます。
まず「45~49歳男性」全体では、10人中7人は、転職後の給料は転職前と同等または増加でした。産業別に見ると、「建設業」や「運輸業、郵便業」など、人手不足が深刻な産業で増加した人の割合が高くなっていました。
転職者数が産業別で最多の「製造業」は、増加と減少がほぼ均衡しており、転職者のスキルや経験等によって評価が分かれた可能性があるでしょう。
一方、「45~49歳女性」全体では、10人中6人が転職前と同等または増加でした。産業別で増加した人の割合がもっとも高かったのは「教育、学習支援業」です。
転職者数が最多だった「医療、福祉」は、減少が過半数を占めました。人手不足感が強く、専門性も高い産業ですが、労働条件が良いとは必ずしも言えないようです。

女性の転職は産業・企業規模で差
次に「50~54歳男性」でも、増加が減少を上回りました。「建設業」では、ほとんどの人が増加または同等でした。「医療、福祉」では増加した人が7割を占めました。
「50~54歳女性」では、減少が増加を上回りました。ただし、企業規模別に見ると「100~299人」では増加が半数近くを占め、突出して高くなっていました。
人手不足が深刻化する中小企業が、より良い労働条件を示して、ミドル女性を積極的に中途採用していると考えられます。管理職として、前職よりも好待遇で招いているケースもあるでしょう。
産業別にみると、「製造業」では増加が6割弱に上りました。
設計や開発部門で専門技術のある女性が賃金増加しているというよりも、企画や人事など、事務系のコーポレート職種で専門スキルを持つ女性が、管理職層への就任を含め、好待遇で転職している可能性があります。
50代後半の女性は賃金増加が4割
「55~59歳男性」全体では、減少が増加を上回りました。住宅ローンが残っている方など、お金の優先順位が高い男性にとっては、50代後半の転職はリスクが大きいと言えるでしょう。
企業規模別に見ると、「30~99人」や「5~29人」など、小規模企業で、増加した人の割合が大きくなっていました。役職定年を機に、大企業で管理職を務めていた人が、中小企業やベンチャー企業で、好待遇で迎えられる、というパターンが一定数あると考えられます。
これとは違って、ユニークな動向を示しているのが、「55~59歳女性」です。転職者数自体は男性よりも少ないですが、賃金は増加した人が全体の4割近くに上り、減少を引き離しました。
一部の上位管理職層の女性については、50代後半であっても、女性管理職比率の引き上げを急いでいる大企業が、好待遇の管理職ポストで招いている可能性があるでしょう。
著者:坊 美生子(ニッセイ基礎研究所 准主任研究員)
1978年、福井県生まれ。ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任。神戸大学大学院国際協力研究科修了。2002年、読売新聞大阪本社入社。記者として労働問題や地方行政などを担当。2017年より現職。主な研究分野は、中高年女性のライフデザイン、高齢者の移動サービス、ジェロントロジー(老年学・高齢社会研究)。特に、日本のジェンダーギャップ解消と女性の自立を目的として、中高年女性の雇用関連の調査研究に力を入れている。






