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なぜ20歳の若手に“100億円超”がつくのか? 最強アナリストが語る移籍市場【サッカー界のリアル】

サッカー選手の“移籍金”は、どのように決まっているのか。プレミアリーグ優勝を果たしたリバプールFCでデータ分析部門を率いた元リサーチ・ディレクター、イアン・グラハム氏が、欧州サッカーの移籍市場の実態を明かす。(画像出典:PIXTA)

All About 編集部

リバプールFCの本拠地「アンフィールド」
リバプールFCの本拠地「アンフィールド」(画像出典:PIXTA)

2026年のサッカーワールドカップでは、世界中のスター選手たちがピッチで火花を散らす。その華やかな舞台の裏で、欧州サッカー界が熱狂しているのが「この選手に何億円を支払う価値があるのか」をめぐる巨大なマネーゲームだ。

名門リバプールFCをデータ分析で復活させ、プレミアリーグ優勝へ導いた元リサーチ・ディレクター、イアン・グラハム氏。彼の著書『サッカーはデータが10割 最強アナリストが明かすプレミアリーグで優勝する方法』(飛鳥新社)から、一般には知られていない「移籍市場の裏側」を一部抜粋・編集して紹介する。

実は、サッカー選手の移籍金にはデータが証明する明確な“法則”が存在するという。若い選手ほど高額になりやすいロジックや、プレミアリーグへの移籍だけ価格が“4割増し”になる不都合な実態――。リバプールの分析チームが導き出した、移籍市場の「適正価格」の正体に迫る。

目次

「何を過剰とみなすか」リバプールが挑んだ移籍金の適正化

私たちは、移籍金についても「適正」と判断できる基準を定めたいと考えており、移籍市場も給与と似たような仕組みで動いているのかを確認したかった。

リバプールは過去にアルベルト・アクイラーニやアンディ・キャロルといった選手に高い価格を付けすぎていた(キャロルへの過剰支出は、フェルナンド・トーレスの売却金としてチェルシーから過剰なまでの高額を受け取ったことで相殺されたが)。こうした過剰支出をなんとしても防ぐためには、何を「過剰」とみなすのかを明確にするほかない。

報道される数字は嘘? サッカー界の移籍金で“本当の金額”が見えにくい訳

移籍金の正確な情報を得るのは難しい。報道される数字は正確とは限らず、実際の金額というよりも、クラブが世間に「そう思わせたい金額」が報じられることも多い。スポーツ教育機関のCIES(Centre International d’Etude du Sport)は、報道される移籍金は実際よりもおよそ10パーセント低いと試算している。

上場しているクラブは移籍金に関する情報を公開しているが、上場しているクラブは多くない。移籍金の情報サイトとして広く知られているのがドイツのウェブサイト「Transfermarkt(トランスファーマルクト)」だ。そこに掲載されるデータは正確なものばかりではないが、基本的には現実に近く、私たちが移籍金モデルを作るには十分な精度だった。

ドイツの専門サイトで検証。ファンの熱量が「移籍金」と強く相関するデータ

私は給与を予測する際に使いた「Praise」モデルにさらなる変数を加えた。Transfermarktには推定移籍金のほか、「市場価値」も公開されている。これはユーザーコミュニティの意見に基づいた評価で、ユーロで表記されている。この「市場価値」は選手に対する世間の評価を示すものであり、移籍金と非常に強い相関があることが分かっている。

それから、移籍する選手の契約満了までの期間や、どの国からどの国への移籍かについても調べた。国ごとの移籍金の違いは大きかった。2016年には中国のフットボールバブルが絶頂期にあり、中国のクラブは非常に高額な移籍金を支払っていた。当時の中国では、金額など障壁ではなかったのだ。

同じ能力でも価格が急騰。「プレミアリーグ移籍」が4割高くなるカラクリ

さらに、「プレミアリーグ割増金(プレミアム)」と呼べるようなものも見つかった。同じ能力を持った2人の選手が同じクラブから移籍するとして、ひとりはプレミアリーグに、もうひとりはブンデスリーガに移籍した場合、プレミアリーグに移籍する選手の移籍金の方がおよそ40パーセント高くなる可能性がある。

移籍市場を調べた結果は給与の場合とよく似ていた。それだけでなく、「市場価値」が移籍金と相関していることも判明した。

また、他の条件が同じであれば、契約期間の残りが長い選手ほど移籍金が高い傾向があることも分かった。これは売却側のクラブに「もう1年活躍してもらって、その次の年に売る」という選択肢があるため、売却を急いでいないことが要因だと考えられる。

なぜ20歳の若手に“100億円超”がつくのか

一方で給与と移籍金のパターンには、ひとつの興味深い違いがあった。それは「年齢」の影響だ。給与の場合、年齢が上がるにつれて増加していったあと、やがて減少する傾向にある。しかし移籍金は、年齢と共に下がっていく一方だった。これは直感に反する内容に聞こえるかもしれない。20代半ばの選手に対して高額な移籍金が積まれることが多いからだ。

だが私の統計的アプローチでは、当該選手にもたらす影響をデータごとに切り分けて見極めようと試みた。20代半ばの選手は経験が豊富で、より先発の機会が多く、代表チームでもプレーしている可能性が高い。これらはすべて移籍金と正の相関がある要素であり、そのため20代半ばの選手の移籍金が高く見えるのだ。

しかし、すべての条件が同じで年齢だけが異なる2人の選手を比較した場合、若い方の選手の移籍金が高くなるはずだ。

たとえば、バルセロナが25歳のフィリペ・コウチーニョを獲得するために払った額は、彼よりも遥かに経験が少なかった20歳のウスマン・デンベレの移籍金と比較して、わずか18パーセント多いだけだった。

この書籍の執筆者:イアン・グラハム  プロフィール
リバプールFC元リサーチ・ディレクター。ケンブリッジ大学で物理学博士号を取得後、2012年からリバプールFCでデータ分析部門を率いる。プレミアリーグ初となる本格的な分析チームを構築し、選手補強や戦術分析にデータを導入。プレミアリーグ優勝、UEFAチャンピオンズリーグ制覇など、リバプール“復活”の裏側を支えた人物として知られる。

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