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「どの選手に、いくら払うべきか」リバプール元分析統括が明かす“勝者の裏側”

2026年W杯開幕が近づくなか、欧州サッカー界では“データ”と“資金力”が勝敗を左右している。リバプールFCでデータ分析部門を率いた元リサーチ・ディレクターが、世界最高峰リーグの「お金の使い方」を明かす。(画像出典:PIXTA)

All About 編集部

リバプールFCの本拠地「アンフィールド」
リバプールFCの本拠地「アンフィールド」(画像出典:PIXTA)

2026年のサッカーワールドカップ(W杯)開幕が近づき、世界中で再びサッカー熱が高まっている。

スター選手のスーパーゴールに注目が集まる一方で、いま欧州のトップクラブでは「どの選手に、いくら払うべきか」をデータで見極める時代になっている。

かつてリバプールFCのデータ分析部門を率い、チームをプレミアリーグ優勝や欧州チャンピオンズリーグ制覇へと導いた元リサーチ・ディレクター、イアン・グラハム氏の著書『サッカーはデータが10割 最強アナリストが明かすプレミアリーグで優勝する方法』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集して紹介する。

なぜサッカークラブは、選手にそこまで莫大な金額を払うのか? 資金力で圧倒的に勝るライバルたちに対し、リバプールはどうデータで立ち向かったのか。世界最高峰リーグの“勝者の裏側”に迫る。

目次

プレミアリーグでは“18.5億ポンド”が移籍金に使われている

お金そのものが直接ゴールを決めることはできないが、ゴールを決められる選手をクラブに惹きつけるためには大きく役立つ。2021/2022シーズンのプレミアリーグでは、36億ポンドが給与に、18.5億ポンドが移籍金に費やされた。

チームのパフォーマンスを向上させる選手を見つけることは重要だが、その選手がコストに見合った価値を持つかを見極めることはまた別の問題だ。

結局のところ、「マネーボール」の基本的な考え方は、パフォーマンスを向上させることそのものではなく、コストを最小限に抑えながらパフォーマンスの向上を最大化することにある。

「マネーボール」の本質は“安く勝つ”ことにある

プレミアリーグのチームでは、収益のうち65パーセントが給与に、25パーセントが移籍金に使われている。たとえば、サウサンプトンは2021/2022シーズンに1億5100万ポンドを稼ぎ、1億1300万ポンドを給与に、5100万ポンドを新加入選手の移籍金に費やし、売却で3100万ポンドを得た。

マネーボールの基準は金(マネー)だ。そして、その90パーセントは選手に使われる。手元の資金でより大きな効果を得たければ、資金を効果的に使わなければならない。

リバプールは世界で最も収益の高いクラブのひとつだが、そうであっても稼いだ額だけしか使えない。しかもマンチェスター・ユナイテッドのようなより収益の高いクラブや、マンチェスター・シティのような湾岸諸国が所有するクラブと競っている。リバプールでの私たちの任務は、責任を持ってクラブの収益を活用することだった。

そのためにはどのようなパフォーマンスに移籍金が費やされ、どのようなパフォーマンスに高い給与が支払われるのかを理解する必要があった。それから、他クラブと比較した自分たちの財務状況も把握しておかなければならない。給与や移籍金に使う収益は、他クラブと比べて多いのか少ないのか。このレベルの支出としては周りより優れたパフォーマンスであるのかどうか。

なぜサッカークラブは“給与”に莫大な金を払うのか

著書『The Price of Football』のなかでキーラン・マグワイアは、アーセナルを例に挙げながら、1992/1993年の創設以来プレミアリーグの収益と支出がどのように拡大していったかを紹介している。1993年から2019年にかけてアーセナルの収益は2671パーセント増えた。年平均13パーセントの増加だ。一方で給与総額は3169パーセント(年平均14パーセント)増加している。

イングランドのクラブは収益の大半を移籍金や給与に費やしてしまうため、継続して利益を出せるクラブは少ない。フットボールクラブを別の視点から見ると、非常に複雑な仕組みで選手たちにお金を配分する場所だとも言える。どの国のリーグでも、クラブにとって群を抜いて大きなコストとなっているのが給与である。

プレミアリーグでは、収益の約65パーセントが給与に使われている。高いと感じるかもしれないが、チャンピオンシップ(2部)に目を向けてみると、ほとんどのクラブが収益の100パーセント以上を給与に使っている。オーナーたちは、プレミアリーグ昇格を目指してギャンブルをしていると言える。

放映権マネーがプレミアリーグを巨大産業に変えた

収益増加の主な要因はテレビ放映権だ。2021/2022シーズン、プレミアリーグのテレビ放映権契約は25億ポンドの収益をもたらした。

その恩恵を最も受けたのはマンチェスター・シティで、1億5300万ポンドを受け取った。一番少なかったノリッジ・シティでも1億ポンド。また、チャンピオンズリーグに出場するプレミアリーグチームには、追加で8000万~1億2000万ポンドの放映権収入がある。

さらに、ビッグクラブはスポンサー権やユニフォーム販売、そしてチケット収入といった商業活動からも多くの収益を得ている。プレミアリーグの平均では、収益のうち約15パーセントを試合日から、およそ30パーセントを商業活動から得ている。しかし、バーンリーやブレントフォードのような小規模クラブでは、テレビ放映権料が収益の約80パーセントを占めている。

移籍金収入があってもクラブ経営はラクにならない

もうひとつ、チームにとって収入源になるものがある。選手の売却による移籍金収入だ。しかし、これは通常クラブの財務諸表に収益としては計上されず、特別利益として計算される。移籍金収入が一度きりで再現性のない収益であることが多いからだ。

プレミアリーグ以外では、移籍金収入が重要な収益源となっている。たとえば、チャンピオンシップの各クラブは、平均すると選手獲得に支払う額よりも選手売却で得る額の方が多い。しかしプレミアリーグでは、移籍で収入を得ても、遅かれ早かれ移籍市場での支出が上回る。

この書籍の執筆者:イアン・グラハム  プロフィール
リバプールFC元リサーチ・ディレクター。ケンブリッジ大学で物理学博士号を取得後、2012年から2023年までリバプールFCでデータ分析部門を率いる。プレミアリーグ初となる本格的な分析チームを構築し、選手補強や戦術分析にデータを導入。プレミアリーグ優勝、UEFAチャンピオンズリーグ制覇など、リバプール“復活”の裏側を支えた人物として知られる。

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