子供の教育

頑張って解いた宿題を「消しゴムで消させる」謎ルール…子どものやる気を奪う学校の一律主義

「勉強を頑張ったのになぜ?」――。指定された範囲以上に宿題を解いたら消させるという、理不尽極まりない学校側の対応。なぜ学校は子どもの伸びしろを削ぎ落とす「足並みそろえ」に固執してしまうのでしょうか。(画像:PIXTA)

All About 編集部

ドリルでの先取り学習をペナルティのように扱うのはなぜ?(画像:PIXTA)
ドリルでの先取り学習をペナルティのように扱うのはなぜ?(画像:PIXTA)

子どもの宿題をチェックしていて、学校側の対応に思わず耳を疑った――という経験はないでしょうか。特にネットやSNSでたびたび議論の的となるのが、「先取り学習」をめぐるトラブルです。

一見すると、「勉強を頑張ったのになぜ?」「子どものやる気を削いでしまうのでは」と理不尽極まりない対応に映りますが、なぜ学校現場ではこのような指示が出されてしまうのでしょうか。

All Aboutの子育て・教育ガイド、鈴木邦明氏の著書『言い方・伝え方でこんなに変わる 保護者の相談・クレーム対応100』(学事出版)から一部抜粋・編集し、現代の教育現場で起きている「学校と家庭の認識のズレ」を取り上げます。 

【Q:保護者からの相談】

宿題のドリル、子どもにやる気があったので指定された範囲より先のページまで進めました。すると先生から「範囲外の箇所は消しゴムで消して」と注意されてしまいました。せっかく頑張ったのに、消させるなんて理不尽じゃないですか?

【A:子育て・教育ガイド 鈴木邦明氏の解説】

やったものを消させるのはさすがに少し違うように思います。せっかく取り組んだのに、それを認めず消させるという対応は、子どもの学びの意欲を大きく消失させる可能性があり、学校への不信感を抱かれても仕方がない行為です。しかし、教員が頑なに「ペースをそろえてほしい」と強要する背景には、学校教育が抱える根深いシステムの問題が隠されています。

「できない子」に合わせるルールが、「できる子」のやる気を奪う矛盾

教員としては、学級全体でペースをそろえてドリルに取り組ませたいのだと思いますが、やはり「消させる」のは対応として行き過ぎです。

背景にあるのは、学校がどうしても陥りがちな「落ちこぼれを生まないための、平準化(一律主義)」です。学級全体の学習進度を同じに保ち、一括で管理したいという、教員側の都合や管理主義が優先されてしまっているのです。

学校教育では、授業についていけなくなる「落ちこぼれ」への対策が重視される一方で、授業内容を簡単に理解して先へ進んでしまう「吹きこぼれ」の子どもたちへの対応が後回しになりがちです。今回のケースは、まさにその平準化のシワ寄せが、子どもの向学心を直撃してしまった形と言えます。

もし、どうしても同じペースで取り組ませたい正当な理由があるのなら、事前に子どもや保護者へ丁寧な説明が必要です。つい間違えて先まで解いてしまった子がいたとしても、「次からは気をつけようね」と伝えるのが本来の指導ではないでしょうか。

そもそも「宿題」に明確な法的根拠はない

この問題を本質的に論じるには、そもそも「宿題とは何か」を考える必要があります。

実は、私たちが当たり前だと思っている「宿題」には、学習指導要領上の明確な定めや法的根拠はありません。あくまで学校や担任がそれぞれの判断、あるいは自治体ごとの学習統一基準(いわゆる〇〇スタンダードなど)に基づいて課しているものです。

こうした基準は、年度替わりやクラス替えの際、子どもたちが戸惑わないようにするというメリットがある反面、教員側の管理上の都合だけを優先したものや、時代に合わなくなっているルールで子どもを縛り付ける原因にもなっています。

「学びの個別最適化」が重視される現代、宿題に関しても少し考え方を変えていく必要があるのではないでしょうか。クラス全員が一律に取り組む宿題も時には必要かもしれませんが、これまで以上にそれぞれの特性に合わせた(苦手の改善に取り組む、好きな部分をさらに伸ばすなど)柔軟な形が求められています。

管理のしやすさだけを優先するのではなく、「子どもの学びと成長のために何が最善か」を、学校と家庭がチームとして共に考え、アップデートしていく時期に差し掛かっています。

鈴木 邦明 プロフィール
神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年勤めた後、短大、大学での教員養成、保育者養成に移り、現在に至る。現在は、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演などに幅広く活躍中。

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