大晦日には「大掃除」をしない
慌ただしい師走は、大掃除も後まわしになりがちですが、正月準備は大掃除をしてからでないと始められません。そこで、筆者は「正月事始め」(大掃除のルーツの煤払いをして正月準備を始める日)の12月13日から少しずつ大掃除を進め、遅くとも28日までには終了するようにしています。大掃除には、元日に新年を司る年神様を迎えるために、家を清浄な場にするという意味があります。大事なお客さまを迎える際に、きれいに掃除をするのと同じです。
また、大掃除をすることで有形無形のさまざまなものを払ってケジメをつけられると考えられているため、すっきり気持ちよく新年を迎えられます。大掃除をしないと縁起が悪く、心の靄(もや)も晴れないですよね。昔から、大掃除で隅々まできれいにすると、年神様がたくさんの福徳を授けてくださるといわれています。
なお、大晦日にその年最後の掃除をすることを「掃き納め(はきおさめ)」といいます。大掃除とは異なり、軽い掃除をさします。
大晦日には、正月飾りの「一夜飾り」をしない
門松、しめ飾り、鏡餅などの正月飾りは、28日まで、遅くとも30日までに飾りつけるようにしています。これらは年神様をお迎えするためのものですので、まずは大掃除を済ませてから取り掛かります。きれいにした場所に正月飾りが整うと、すがすがしい気持ちになるものです。大晦日に慌ただしく飾りつけるのは、年神様に対する誠意に欠けるため失礼であること、葬儀の「一夜飾り」に通じて縁起が悪いことから、大晦日に飾ってはいけないとされています。家族や大切な人を亡くした経験がある人は、一夜飾りに通じないように……という思いが強くなるのではないでしょうか。
大晦日のうちに「寝て」しまわない
大晦日の夜は、寝ないで年が明けるのを待つようにしています。これは物心ついた時からの習慣で、幼いころは大晦日だけは夜更かしできるうれしさや、あと少しで1年が終わってしまう寂しさなどの感情がわき、特別な時なんだと実感したものです。かつての日本には大晦日は寝ないで年神様を迎える習わしがあり、寝てしまうと縁起が悪く、「早く寝ると白髪やシワが増える」という言い伝えもあります。新年を司る年神様に仕えることで、生命力が更生されると考えられていたため、早く寝てしまうと年神様に仕える義務を果たしていないことになり、生命力が衰えて老け込み、白髪やシワが増えるというわけです。
本来「縁起」は「吉凶」と関係ない
「縁」はつながりや条件、「起」は生じるという意味で、「縁起」とは、あらゆるものはあらゆる関係性の中で成り立っているという概念です。「縁起」という言葉は「因縁生起(いんねんしょうき)」の略で、「すべてのものは原因(因)とつながりや条件(縁)が結びついて生じる(生起)」という仏教の根本思想からきています。花に例えると、種(因)に土質・水分・温度・日光などさまざまな条件(縁)が結びついて咲く(生起)とされます。
一般的には「縁起がよい」「縁起が悪い」と吉凶の前兆や迷信を指すことが多いのですが、本来は「全てのものは他との関係によって生じている。独立して存在するものはない」という哲学的な教えであり、吉凶とは関係ありません。「縁起」は、全てのつながりを見つめ直し、感謝や思いやりの心を持つきっかけにもなる奥深い教えなのです。
そう考えると、大晦日に「縁起が悪いことをしたくない」と考える人が多いのも頷けますね。
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