これにともない、年金受給者の所得税の控除額が増える、年金受給者が子どもを扶養に入れられる、もしくは年金受給者の親族が新たに年金受給者を扶養に入れられるケースも出てきます。
今回の変更点と対象者について、経済ジャーナリストでAll Aboutマネーガイドの酒井富士子さんに年金受給者の目線で解説してもらいました。
19~23歳までの子ども(特定扶養親族)がいる場合
年金受給者の方の中には、主に大学生にあたる19~23歳までの子ども(特定扶養親族)を扶養に入れている場合も多いのではないでしょうか。税制では、これまで特定扶養親族の年収が103万円以内であれば63万円が控除されましたが、今回の税制改正により年収の上限が(103万円から)123万円まで引き上げられました。
さらに、「特定親族特別控除」が新たに設けられ、扶養にできる年収の範囲が最大188万円まで広がります(控除額は収入に準じる)。
対象者:
19~23歳までの親族(特定扶養親族)
扶養にできる年収の範囲:
給与収入103万円上限から、最大188万円以下に引き上げ
(123万円までは従来の扶養控除、123万~188万円は新設の特別控除)
特定親族特別控除額(出典「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」国税庁)
特定扶養親族の給与収入が120万円(月収10万円)の場合、控除額は63万円
特定扶養親族の給与収入が180万円(月収15万円)の場合、控除額は11万円
これにより、アルバイトや収入が多めの学生でも扶養に入れられる(控除を受けられる)可能性が高まりました。
年金収入のみで「扶養親族等申告書」などを提出していない場合は、確定申告が必要になりますので、子どもの年収を確認した上で手続きしましょう。
子どもの扶養に入っている場合
一方で、年金を受給されている方の中には、子どもの(税制上の)扶養に入っている場合もあるかもしれません。例えば、老親などの扶養親族(70歳以上の老人扶養親族)の場合、税制では所得が48万円以下(年金受給額158万円)であれば、同居の場合は58万円、同居以外の場合は48万円が控除されました。
今回の税制改正により、所得要件が58万円に引き上げられたことで、年金受給額の目安が(158万円から)168万円に拡大します。
対象者の例:
70歳以上の親などの扶養親族
扶養にできる目安(年金収入のみの場合):
年金受給額158万円目安から、168万円目安へ実質的に引き上げ
この控除は、年金受給者の方が子の扶養親族となっている場合、子の所得税に適用されるものですので、(年金受給者)ご本人の税金が控除されるわけではありません。
しかし、年金受給者の中には「158万円を超えないように」と年金額とパート収入のバランスを考えて働き方を調整していたケースや、扶養から外れていたケースもあると思います。
今回の改正により、年金収入のみであれば168万円まで扶養に入ることが可能になります。パート収入などがある場合も、以前より(合計所得で)10万円分多く稼げるようになったため、これまでより働き方の選択肢も広がるでしょう。
なお、この控除を受ける場合は、扶養控除を受ける側(=子ども側)での手続きが必要です。
親の年金、子どもの収入──家族ごとに確認を
今回、ご紹介した2つの扶養を、同じ方が同時に適用するケースは多くありませんが、今回の税制改正により、親も子も柔軟な働き方が可能となったといえます。それぞれ手続きが異なりますので、年末に向けて、家族それぞれの収入を確認し、どの控除が使えるのか、どんな申告が必要なのかをチェックしておきましょう。
参考:
令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
No.1180 扶養控除
No.1600 公的年金等の課税関係







