奇想天外なSF設定の中、その世界で生きる人間の感情も描いた斬新な作品。栁俊太郎さんは、ヒロインの雨音と結婚する朔を演じています。まずこの難役について、依頼があったときのこと、朔役について話を聞きました。
『消滅世界』出演、栁俊太郎さんにインタビュー
――本作出演の決め手について教えてください。栁俊太郎さん(以下、栁):川村誠監督から出演オファーのお手紙をいただきました。そんな熱意のあるオファーを受けたことがなかったので、とてもうれしかったです。その後、原作小説の『消滅世界』を読んだのですが、この小説を映像化したら面白い作品になるのではないかと思い、出演を決めました。
――舞台設定も朔の役もとても難しい作品ですよね。どのような役作りをしましたか?
栁:完全にSFで、僕にとっても未知の世界。言葉にするのが難しいのですが、原作と脚本を読んで思ったのは「あり得ない世界ではない」ということです。今、自分たちが生きている世界と、この映画が描く未来が、それほど遠くもなく、絶妙な距離感だと思いました。管理社会を受け入れる人間がいてもおかしくない気がします。 ――私が試写を見たとき、ヒロインの雨音は映画と観客をつなぐ存在なので、彼女が考えていることが分かるのですが、朔は比較的、受け身な男なので、心の中が見えにくいキャラクターだと感じました。朔をどう解釈して演じましたか?
栁:川村監督とよく話し合いました。朔がエデンのルールを素直に受け入れるのはなぜだろうと考えたとき、目の前に差し出された物事に対し、それが自分の生きる道ならば、素直に環境に合わせることができる人だからではないかと。少しロボット的なものを感じました。
――朔は感情を表に出しませんが、感情があまりない男として演じたのでしょうか?
栁:彼にも感情はあると思うんですよ。でも血の色が赤くないといいますか、もしかしたら青色の血が流れているかもしれない。そういう不気味さがありました。
テンポのいい独特のリズムが映画の魅力
――本作では雨音を演じる蒔田彩珠さんとのシーンが多かったと思いますが、共演されていかがでしたか?栁:初めて一緒に芝居をしたのですが、目が魅力的な俳優さんだと思いました。引き込まれるようなお芝居をされるのですが、それが本当に自然。シンプルなお芝居なのに強く伝わってくるんです。伝えようとしていなくても伝わってくる。それができる俳優はなかなかいないと思います。
――撮影合間にお話はしましたか?
栁:結構話しましたよ。この映画は特殊な設定で静かに奇妙なことが起こっていく作品ですが、川村監督は撮るのが速く、停滞せずにトントン進むことが多かったし、スタッフとキャストはにぎやかで撮影は楽しかったです。
――完成した映画を見た感想は? いかがでしたか?
栁:川村監督の独特のリズムを感じる映画でした。見始めたとき、意外とテンポのいい作品だなと思ったんです。流れる音楽やインサートされる映像などが作品にリズムを作っていました。そこから後半はスローペースになっていくのもまた独特のリズムがあって。映像ディレクターでもある川村監督らしい作品だと思いました。
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