今回は、遺族年金で誤解されやすいポイントについて、経済ジャーナリストでAll Aboutマネーガイドの酒井富士子さんにお話を伺いました。
「夫の年金がそのままもらえる」は誤解です
多くの方が誤解しやすいのが、「夫が亡くなれば、夫がもらっていたはずの年金がそのまま妻に支払われる」という認識です。実際は、配偶者が亡くなったとき、残された妻(または夫)が受け取る遺族年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の4分の3部分というのが原則です。国民年金(老齢基礎年金)は、夫婦それぞれが自分で受け取るものですから、亡くなっても引き継がれません。
仕組みが複雑なため「なんとなくそう思っていた」という方も多いのですが、まずはここを正しく理解していただくことが大切だと思います。
例えば、
夫:18万円(老齢基礎年金7万円+老齢厚生年金11万円)
妻:8万円(老齢基礎年金)
夫婦の受給額は合計26万円ですが、
夫が亡くなった場合、妻が受け取れるのは、
妻自身の老齢基礎年金:8万円
夫の老齢厚生年金の4分の3(遺族年金):11万円×3/4=8万2500円
合計16万2500円になります。
夫婦で受け取っていた26万円とは大きく差があり、「丸ごともらえる」というイメージとは違うことが分かると思います。
これからは「遺族年金が出ない夫婦」も増えるかも
遺族年金には、もう1つ誤解されやすいポイントがあります。それは、夫婦の老齢厚生年金で重なる部分は調整されるということです。特に共働き夫婦は注意が必要です。例えば、妻の老齢厚生年金が8万円、夫の老齢厚生年金が7万5000円という場合、妻の年金額のほうが多いため、遺族年金は1円も支給されません。
今後は、ますます共働き化が進み、夫婦それぞれが老齢厚生年金を受け取るケースが一般的になっていくと、「自分の年金額が相手より高いため、遺族年金が出ない」という夫婦は確実に増えていくと感じています。
もしものときに生活を維持するためには、遺族年金が出ない可能性も含めて考えておくことが大切です。互いに終身保険などに加入し、死亡後にはいくばくかの保険金が遺るというかたちで備えるのも1つです。
老後のお金は「長生きリスク」だけでなく、どちらかが亡くなったときのリスクも見据えて準備してほしいと思います。







