人間関係

「それでも電話に出るなというんですか!」電車内での女性の絶叫に「車内が静まり返った瞬間」

電車内での通話は控えるのがマナーだが、その場にいる人と話すのはよくて、通話はダメな理由が分からないとの声もある。急用で通話したいときもあるだろう。電車内の“騒音”問題には、相手の立場を想像する思いやりが必要だ。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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電車内での「騒音」問題とは(画像:PIXTA)

電車内での「騒音」問題とは(画像:PIXTA)

最近、電車内で通話をし続ける女性に、年配男性が怒鳴りつけている投稿がSNSで話題になった。注意されてもされても話すのをやめず、ついに男性が怒ったらしい。ただ、SNS上では「友達同士で話しているのはよくて、電話がダメというのが分からない」という声が多かった。

確かに、グループでしゃべり続ける人たちを迷惑だと感じている乗客もいるだろう。だがそれはよほどの大音量でなければ、スルーされてしまう。なのに電話だと目くじらを立てる人がいるのは、なんとも不思議ではある。

急用ということもある

「父が入院して大きな手術をしたんですが、コロナ禍でお見舞いにも行けなかったので、手術前後にはよく病院から電話がかかってきたんです。病院の医師からの電話には出たい。電車に乗っているときは迷いました。でも思い切って出て、電話を手で覆うようにして小声で話し、次の駅で降りて話を続けたのを覚えています」

サチヨさん(39歳)は思い出しながら、そう話してくれた。父の病状が急変したときも連絡を受けたのは電車内だった。小声で「今すぐ行きます」と言ったものの、落ち着いていて退院間近だった病状があまりに急変したので、信じられない思いで涙がこぼれそうだった。だが電話を切ったとき、隣に立っていた年配の男性が、サチヨさんを見て「チッ」と舌打ちをした。

「『まったく今どきの人間は』とつぶやいたんですよ。思わずカッとして、『父が危篤だという連絡なんです。電話に出るなというんですか』と大声で言ってしまった。車内が一瞬、シンとしました。本当は次の駅で降りたかったけど、降りている時間はない。病院はその2つ先の駅前だったから。周りは当然、見て見ぬふりですよね。その男性は、わけの分からないことをぶつぶつ言いながら次の駅で降りていきました。彼をさらし者にしてしまったのかもしれないけど、あれだけは我慢できなかった」

電話を受ける側も気を遣れば

友達との会話ではない、通話は人の生死に関わる連絡のこともあるわけだ。だから一概に禁止というのもおかしいとサチヨさんは考えているという。病気の家族を抱えていれば、いつ病院から連絡があるか分からないのだから。

「電話を受ける側も気を遣わないといけないとは思います。ごく小さな声で会話するとか、『今、車内なので聞きづらいかもしれないけど』と相手に言うとか。かけ直してすむ電話ならかけ直した方がいいでしょうしね。受ける側が気を遣えば、周りもそれほどいらだったりはしないと思うので」

コロナ禍のリモートを経て、出社回帰の現象が増える中、車内は以前より殺伐としている。だからこそ、少しの気遣いがいらだちを減少させるはずだ。

子どももやり玉に挙げられるが

車内の“騒音”といえば、どうしてもやり玉に挙げられるのが「子ども」だろう。赤ちゃんの泣き声、キーキー騒ぐ幼児など、母親としてはいたたまれないことが多々あるものだ。

「子どもの場合は、母親の態度1つだなと思います。自分の経験からも、人のことを見ていてもそう思う」

マヤさん(43歳)はそう言った。現在、12歳、10歳、5歳の子をもつ彼女は、子どもが増えるたび、人の冷たさと温かさをたびたび感じてきた。

上の二人は2歳差なので、二人が小さいときは大変だった。

「実家の母が倒れたという連絡があったんです。新幹線の距離だけど、夫はたまたま出張していた。どうしようと迷ったけど、どうしても母に会いたい。そこで無理を承知で新幹線に乗りました。3歳と1歳の子を連れて2時間の長旅は、精神的に緊張しましたね。上がぐずる、下が泣くで、どうしたらいいか分からなくなって……。周りからは咳払いやため息も聞こえてくる。申し訳なさが募って、私の方が泣きたくなりました」

立ち上がって大声で謝るわけにもいかない。心の中で「申し訳ない」と言いつつ、二人を連れてデッキへと避難した。そこへ追いかけるようにやってきた年輩の女性がいた。

「上の子を見てましょうかと言ってくれたんです。お孫さんが同じ年齢だからと、上の子に話しかけ、席に戻ってお手玉を持ってきた。子どもはお手玉に目を輝かせていました。下の子も泣き止んで、それをじっと見てる。彼女に負担がかかったら悪いと思ったんですが、『大丈夫、慣れてるから』って。神様に見えました」

母親の状況を想像してみて

その上、彼女はお手玉をくれたから、上の子は大喜び。しばらくはお手玉が上の子のお守りになった。今どきの子でも、お手玉のようなものは通用するんだとマヤさんは驚いたという。

「子どもと一緒に電車に乗って、ぐずったり泣かれたりしたら、母親はあわてふためいて困ってしまうものだと思います。『母親はすまなそうなそぶりもない』なんてSNSなどで叩かれることもあるけど、すまないというよりどうしたらいいか分からなくてパニクってるんだと思う。私がそうでしたから。申し訳なさをどう表したらいいか分からないし。だからこそ優しい言葉をかけてくれる人がいると、涙が出るほどありがたい」

マヤさんは自分がそういう経験をしたから、今は泣きじゃくる幼い子を連れている若い母親には積極的に声をかけるようにしていると言う。少しでも助けになればいい、気持ちを楽にしてほしいと思うからだ。

「いろいろな事情を抱えて、どうしても幼い子を連れて電車に乗らなければならないこともある。少しだけその母親の状況を想像してみてほしいと思います」

電車内の雰囲気をよくするのも悪くするのも、人のささやかな優しさがあるかどうかということなのだろう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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