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MVPを受賞した大谷翔平選手は「CMキャラクター」としても規格外の活躍! タレント広告のメリデメを考察

メジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手は、広告起用でも引っ張りだこ。規格外の活躍を見せています。大谷選手のようにタレントを広告に起用する企業は昔から多く存在しますが、タレントの広告起用にはどのようなメリットとリスクがあるのでしょうか。※画像:Shutterstock.com

大関 暁夫

大関 暁夫

組織マネジメント ガイド

東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。

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今期もMVP(最優秀選手賞)を受賞した大谷翔平選手は、CMキャラクターとしても大活躍を見せている ※画像:Shutterstock.com

今期もMVP(最優秀選手賞)を受賞した大谷翔平選手は、CMキャラクターとしても大活躍を見せている ※画像:Shutterstock.com

日本人3選手の活躍で、国内でも大きな注目を集めた米メジャーリーグのワールドシリーズは、ロサンゼルス・ドジャースがチーム史上初の2連覇を達成し、先発、リリーフとフル回転で活躍した山本由伸投手がシリーズMVPを獲得して幕を閉じました。シリーズで投打にわたる活躍を見せた大谷翔平選手も、3年連続4度目のシーズンMVP(最優秀選手賞)を獲得し、大谷フィーバーはまだまだ続きそうです。
<目次>

広告起用でも引っ張りだこ

大谷選手に関しては、昨年も今年も他の追随を許さぬ大活躍ぶりから、広告起用でも引っ張りだこ状態です。25年上期のCM契約本数は、なんと21本。シーズンが終了した今も、テレビ、街のポスターや看板などで、彼の姿を見かけない日はないほどの大人気が続いているのです。

業界情報によれば、大谷選手の広告出演年間契約料は9億円といわれており、日本人タレントとしては最高額であるとされています。年間9億円以上もの宣伝広告費を1キャラクターに拠出する企業が20社以上もある、という現実をどう見るか。キャラクター広告に大金を投じる企業のメリット、デメリットを考えてみましょう。

タレントを広告起用する企業の狙い

大谷選手ほどの契約金額ではなくとも、タレントを自社のイメージキャラクターとして契約して、CMをはじめ、媒体広告やポスター、チラシに使用する企業は昔から多く存在しています。

その大半は、BtoC(消費者向け商品・サービス提供)企業で、特に嗜好品の類を販売する企業です。嗜好品とは栄養の摂取を目的としない、お茶、コーヒー、アルコール飲料、清涼飲料、お菓子などです。

嗜好品は、どのメーカーの商品・サービスも、若干の違いこそあれ、大きくは変わりません。清涼飲料やビールメーカーなどが盛んにキャラクター広告を打つのは、イメージで嗜好品を売ろうとしているからに他なりません。

例えば大谷選手を起用している飲料メーカーは、彼を使うことで爽やかな印象を植え付け、広告を見る人に商品の飲み心地のよさの印象付けを狙っていると思われます。視聴者が店舗に買い物に行った際に、その商品を手に取らせることができれば、狙い通りの効果が得られたとなるわけです。

爽やか、若々しい、かわいい、しっかりしている、強い、親しみやすい……それぞれのイメージを持つタレントやスポーツ選手が広告に使われて、イメージアップさせて商品、サービスの売上伸長に貢献する、それが広告キャラクターの役割です。

大谷選手がとりわけ人気が高いのは、強い、たくましい、爽やか、親しみやすい、若々しい、と多くのよいイメージで好感度がとびぬけて高いからです。アンチが少ない、というのも大きな強みでしょう。

彼と同じものを持ちたい、同じものを食べたい、同じものを飲みたい、見る人にそう思わせる力が強いので、高額な契約料になるのも当然のことなのです。

BtoB企業は求職者への訴求が多い

最近ではBtoC企業に限らずBtoB(企業向け商品・サービス提供)企業でも、キャラクター広告を展開するケースも増えています。この場合は、商品・サービスをキャラクター広告で売ろうとしているのではなく、人材採用での求職者に対するイメージ向上を目的として使われているケースが多いです。

好感度の高いキャラクターが自社の社員であるかのような使われ方や、自社について語るような使われ方の広告を通じて、求職者によいイメージを持ってもらいたい、という思いがそこにあるのです。特に技術者が絶対的に不足している昨今では、BtoB企業のイメージ広告はますます増加傾向にあるようです。

キャラクターを広告起用するのはリスクも

一方で、キャラクターを使用することのリスクもあります。1つは、想定したイメージ通りにいかないケースです。明るいイメージを期待していたのに、タレントが病気になってしまったりケガをしてしまったりとか、あるいはスポーツ選手を起用してスピード感や強さを印象付けようとしたのに注目の大会や試合で負けてしまったりとか。

あるいは契約期間中の結婚や離婚によって、狙ったイメージが変わってしまうことも。キャラクターも人間なので想定外の出来事で、当初のイメージがずっと続くわけではないのです。

最悪のケースは、採用タレント絡みの不祥事です。この場合は、損害賠償の対象になりますが商品・サービスのイメージダウンは免れ得ず、不祥事によって被ったイメージの低下を回復するのに、余計な時間とコストがかかることは必至です。

大谷選手のような超人気者を採用するリスクも存在します。人気キャラクターはイメージ、好感度は申し分ないものの、多数社と同時契約していると没個性となってイメージの差別化がしにくくなったり、先行他社のカラーが強めに出て自社キャラクターとしてのインパクトが弱まってしまったりする、というリスクも存在するのです。1キャラクターの採用企業が一定数以上になると、契約社数が頭打ちになるのはそのような理由によります。

「大谷フィーバー」広告でも規格外の大活躍

しかし大谷選手の広告効果は依然として絶大なようで、スポーツ経済学に詳しい宮本勝浩関西大学名誉教授によれば、2025年の大谷選手の経済効果は増えに増えて1300億円にも上ると試算されているのです。

「大谷選手がCMに出演している企業が信頼を高めて、それらの企業の品物やサービスを購入するという一つの大きな『社会現象』が発生し、経済効果を拡大している」(宮本名誉教授)のだといいます。

大谷選手は、たとえケガをしてもイメージダウンとは無縁、結婚して好感度はむしろ上昇。さらには、キャラクターCM多数社契約による没個性リスクなどどこ吹く風と、契約社数もまだまだ増加中といった具合で、ここでも規格外の大活躍を見せているのです。大谷フィーバーは、CMの世界でも当分止みそうにありません。

<参考>
関西大学 宮本勝浩名誉教授「2025 年の大谷選手の経済効果
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