<目次>
坂口健太郎さんと渡辺謙さんの芝居を間近で見たかった
映画『盤上の向日葵』は、アマチュアから異例の昇進でプロ棋士になった青年・上条桂介(坂口健太郎)が、山中で見つかった白骨死体に関わりがある人物として捜査線上に名前が挙がったことから始まるヒューマンミステリーです。この事件を担当することになった警察官を佐々木蔵之介さんとともに演じるのが高杉真宙さん。プロ棋士になる夢を断念した青年を熱演しています。
まず出演の経緯からお話を聞きました。
――上条の壮絶な人生に熱いものがこみ上げてくる作品でした。この映画に出演すると決めた理由から教えてください。
高杉真宙さん(以下、高杉):まず心惹かれたのは、主演の坂口健太郎さんと渡辺謙さんとの共演です。「お二人の芝居を見たい!」と、脚本を読む前から、出演に前向きな気持ちになっていました。
僕は出演作を決めるときの理由の1つに「自分が見たい作品かどうか」というポイントがあるのですが、この作品は純粋にそういう気持ちになりましたし、俳優としてこの作品のためにできる限りのことをしたいと思いました。
役作りの軸は“佐野の将棋への思い”
――高杉さんが演じた佐野直也は、警察官になる前は、プロ棋士を目指していた青年ですが、どのような役作りをして撮影に臨まれましたか?高杉:佐野はプロ棋士を目指してきたけれど夢がかなわなかった人です。天才棋士の上条に対して嫉妬心を抱くと同時に、その才能を認める気持ちもあったのではないかと。上条にかつての自分を重ね合わせていたとも思います。また佐野はプロにはなれませんでしたが、将棋を嫌いになったわけではないんです。
夢に破れた悔しさはあるけれど、今でも将棋が好きだという彼の思いが役作りの軸になっていました。警察の中で誰よりも棋士の気持ちが分かるのは佐野なので「上条を理解できるのは佐野だけなのだ」と解釈をし、その気持ちを大切にしながら演じました。
――白骨死体が発見された場所に希少な将棋駒が見つかったことから、事件に関わる人物として上条の名前が浮上します。捜査を進めていくうちに、佐野の気持ちがどんどん熱くなっていくのがスクリーン越しにも感じました。
高杉:事件を追いかけていくうちに「上条が関わっているのではないか。もしかしたら殺したのではないか」と、佐野の心の中で疑惑がどんどん膨らんでいきます。しかし、上条が素晴らしい才能の棋士であることを知っている佐野は、「彼は事件とは関係ない」と証明したい気持ちもあったのではないかと。なので、佐野の気持ちはヒートアップしていったのだと思います。
佐々木蔵之介さんとのバディー役は最高の経験!
――佐々木蔵之介さん演じる石破剛志刑事は佐野の上司。ずっとコンビで捜査していたので、高杉さんのシーンは、ほぼ佐々木さんと一緒でしたね。佐々木さんとの共演はいかがでしたか?高杉:最高の時間を過ごさせていただきました。僕がこの役を演じていなかったら、ほかの俳優さんが佐野を演じていたわけで、そうなっていたらめちゃくちゃ悔しいだろうなと(笑)。そんなふうに思ってしまうほど蔵之介さんとの共演は素晴らしい経験でした。 ――充実されていたんですね。
高杉:撮影現場では本当にたくさんお話をしました。諏訪でのロケが1週間ほどあったのですが、毎日、僕と一緒に食事をする時間を作ってくださって。蔵之介さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
――佐々木さんからどのような学びがありましたか?
高杉:さまざまな経験を積み重ねてこられただけあって、蔵之介さんのお話はすべて興味深く、学びがたくさんありました。特に舞台の話が一番心に響きました。
実は、僕は2年間ほど舞台から離れているんです。2023年の舞台『ロミオとジュリエット』が終わったとき、「やり切った!」という達成感と同時に燃え尽きた感じもありまして。
でも蔵之介さんから舞台の話を聞いていたら、舞台の楽しさとやりがいを思い出し、早く舞台をやりたくなりました。それくらい蔵之介さんの影響力は大きかったです。
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