ゲルニカに出会うことができる美術館
いかにも現代アートの美術館らしい近代的な建物。 |
8万平方メートルもの広大な面積を持ち、その4階建ての建物の内部は、2階と4階部分が常設展となっています。20世紀初頭から1970年代の作品を中心に、1万点以上の作品が展示されていて、ピカソのほかにもサルバドール・ダリやジョアン・ミロなど現代美術の巨匠たちの作品があります。
ゲルニカまでの道のり
順路は4階から始まり、そこではスペイン現代絵画の歴史がわかりやすいように作品が配置されています。絵心のある人であれば、このフロアだけでも何時間という時間を楽しむことができるでしょう。残念ながらそうでない場合は、この時点で芸術鑑賞には満足してしまうかもしれません。しかし、ここで帰ってしまうのはもったいないです!最大の見どころである「ゲルニカ」は2階の展示室に展示されているのですから……。そして2階にあるピカソの展示室へ。当然のことですが、ここにある作品は全てピカソによるもの。全ての作品の詳細には「作者パブロ・ピカソ」と書かれているのを見て、自然と心が躍ってきます。
いよいよ「ゲルニカ」とのご対面。この絵の展示方法だけでもこの作品がただものではないことがわかります。ほとんどの美術館でそうですが、各展示室には警備員が配置されています。また、すぐ手の届くところで観賞することができます。しかし、この絵には2名の警備員がいて、かつ絵に近づくことはできません。と言っても、この絵はかなり大きな作品なので近すぎると全体を見ることが難しいのですが……。
そして誰もがその迫力に圧倒され、なかなかその場を離れようとしないので、ゲルニカの前から見学者がいなくなることはありません。
ピカソの怒りの冷凍庫
この作品はピカソの平和への祈りとも言えるでしょう。彼はスペイン内戦時の1937年にパリ万博のスペイン館の壁画を依頼されていましたが、注文によって縛られることを好まなかったので、なかなか作品を描かずにいました。そんな矢先に祖国スペインで起こった悲報を知らされたのです。スペイン北部バスク地方の町、ゲルニカがドイツ空軍の無差別爆撃によって破壊されました。その爆撃は当時のスペインの独裁者フランコの要請により行われたものだったのです。ピカソはこの知らせに憤慨し、すぐに45枚ものデッサン、スケッチに取り掛かり、あの大きなキャンパスへ向かったのです。当時、彼はパリに滞在中でしたが、構想から完成までにかかった時間はわずか1ヶ月でした。
ゲルニカは綿密な構成の上に成り立っています。そのスケッチは人の目をした牛、子供を亡くし悲しむ母親、いななく馬、人の泣き顔などがあり、それらも見ることができます。
また、他の作品には鮮やかな色彩もたくさん使われていますが、ゲルニカは異なります。白、黒、グレーを基本色としたモノトーンで描かれていて、新聞の白と黒に印刷された写真が、ピカソに影響を与えたとも言われています。そこからはガイドブックの写真からは感じることのできない、冷たい恐怖心とピカソの静かな怒りが伝わってくるようです。
現在もこの作品からピカソの戦争への怒りと命の尊さを思う気持ちが見る人を魅了しています。ゲルニカはピカソに代わっていつまでも平和を叫び続けていくことでしょう。
【基本データ】
国立ソフィア王妃芸術センター Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia
所在地:Santa Isabel,52, 28012 MADRID
TEL:91-467-5062
開館時間:月~土曜 10:00~21:00、日曜 10:00~14:30
閉館日:火曜日
入館料:3.01ユーロ(土曜14:30~21:00、日曜、5/18、10/12、12/6は入館料無料) 3大美術館共通券※7.66ユーロ
アクセス:地下鉄1号線 Atochaより徒歩3分
URL:Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia
※3大美術館共通券とはプラド美術館、国立ソフィア王妃芸術センター、ティッセン・ボルネミッサ美術館の3つの美術館に入場できる共通券です。
【関連リンク】
スペインゆかりの芸術家
マドリッドの美術館
中部:マドリッドとその周辺