父は90代まで生き、医療費や介護費で年間100万円単位のお金が出ていきました。年金をしっかりもらっていても、医療費が2割負担、介護サービスも2割負担となると、あっという間に貯金が減っていきました。
そんな経験から、私は「老後のお金は3つに分けて考える」ことをおすすめしています。
1. 日常生活費
2. ライフイベント資金
3. 医療・介護に備えるお金
1. 日常生活費
まずは、年金とパート収入などでまかなう「日々の生活費」です。生活費は家庭によってさまざまですが、収入としては夫が年金211万円、妻が155万円以内に収まると、「住民税非課税世帯」となり、医療費や保険料の負担が軽くなります。このとき、妻は年金を繰り下げしても155万円に届かないことも多いです。繰り下げて不足する分は、月5万円ほどパート収入を得るのも良いでしょう。社会とのつながりも保てますし、家の中に閉じこもるよりもずっと健康的です。
2. ライフイベント資金
「ライフイベント資金」は、家の修繕やリフォーム、車の買い替え、お子さんやお孫さんへの援助など、予期せぬ大きな出費(ライフイベント)に備えるための資金です。例えば、50代後半で子どもが独立した後であれば、不測の出費に備えて500万~1000万円程度を個人向け国債に預けておくのがおすすめです。
個人向け国債は、現在1%程度の利回り(2025年10月時点、変動金利型10年の場合)があり、普通預金よりも高金利で安全性も高いです。さらに、発行から1年経てば一部解約(中途換金)も可能という利便性もありますので、まとまったお金を管理するのに適していると考えます。
3. 医療・介護に備えるお金
そして3つ目が、85歳以降の「医療・介護に備えるお金」です。老後のお金の中で、最も不確実で不安が大きいのが、この医療や介護にかかる費用です。85歳になった時点で、介護や医療費として夫婦で1000万円を目安に保持しているとよいでしょう。
高齢での入院は長期化しやすく、高額療養費制度を利用しても、医療費や介護サービス費、雑費などで貯金が減りやすい傾向にあります。せっかく長生きしていても「お金がなくて介護も医療も受けられない」という事態を避けるために、この医療・介護費用は必ず残しておくべきです。
「途中で使わずに終わったらもったいない」という声もありますが、それならそれで幸せなことだと思えばいいのです。誰も自分の寿命は分かりません。万が一長生きしたときに、お金がないほうがずっと不安ではないでしょうか。
お金の役割を整理して、老後の不安を減らしましょう
老後のお金の不安は、「なくなったらどうしよう……」と考えるほど大きくなります。だからこそ、「いつ」「何に」使うのかを分けて考えること。お金の役割を整理するだけで、将来の見通しが立ち、心の負担も軽くなります。そうやって自分を守る仕組みを作っておくことが、老後の不安を減らしてくれるんです。







