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2025年4月定期接種化! 帯状疱疹ワクチンの必須知識:種類・費用・後遺症リスクを徹底解説

【医師が解説】2025年4月から65歳以上で定期接種になった帯状疱疹ワクチン。発症すると強い痛みが続き、深刻な後遺症に悩まされることもあります。ワクチンの種類や選び方、接種時の注意点など、大切な情報を分かりやすく解説します。

秋谷 進

秋谷 進

医師 / 子どもの健康・医療ニュース ガイド

小児科医・児童精神科医・救急救命士。金沢医科大学卒業後、国立小児病院小児神経科、獨協医科大学越谷病院、三愛会総合病院、東京西徳洲会病院小児医療センターを経て、たちばな台クリニック小児科。小児神経・児童精神を中心に診療に従事している。

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ワクチン接種

帯状疱疹ワクチンの予防接種(画像:アマナ)

2025年4月、つらい痛みを引き起こす帯状疱疹のワクチンが、65歳以上の方などを対象に予防接種法に基づく「定期接種」となりました。帯状疱疹は多くの人が発症する可能性のある身近な病気です。皮膚症状が治った後も、深刻な後遺症に悩まされることがあります。

この記事では、帯状疱疹の怖さと、定期接種の対象者、ワクチンの種類と選び方、接種時の注意点などについて、分かりやすく解説します。自分や大切な家族の未来のために、正しい知識を身につけましょう。
 

帯状疱疹の原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス」……日本人の約3人に1人が発症

帯状疱疹の原因は、多くの人が子どもの頃にかかる水痘(水ぼうそう)と同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」です。水痘が治癒したあとも、ウイルスは体内の神経細胞に生涯にわたって潜伏しています。潜伏感染しているウイルスは、加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が低下すると、再活性化し、帯状疱疹として発症します。

日本人の約3人に1人が80歳までに発症するといわれており、誰にとっても他人事ではない身近な病気です。
 

なぜ帯状疱疹は怖いのか? 深刻な後遺症「帯状疱疹後神経痛(PHN)」とは

帯状疱疹が、珍しくない身近な病気なのに恐れられる理由の1つが、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という合併症があることです。

皮膚症状が治った後も、数カ月から数年にわたって激しい痛みを伴うことがあります。発症リスクは1~5割と考えられていますが、高齢者ほどリスクが高いです。激しい痛みは、「焼けるような痛み」「針で刺されるような痛み」と形容されることもあり、痛さで眠れなくなるなど、生活に支障を来すことも少なくありません。激痛に苦しむケースがあります。
 

帯状疱疹ワクチンの定期接種、対象者と接種方法・費用

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹ワクチンとは?(筆者作成)


帯状疱疹の予防にはワクチン接種が有効です。ワクチンには、帯状疱疹後神経痛のリスクを減らす効果もあります。

65歳以上の方が対象の帯状疱疹ワクチンの費用は、自治体によって異なります。積極的な接種勧奨はないので、自分で情報を確認し、予約する必要があります。

■対象年齢と条件
帯状疱疹ワクチンの定期接種の対象者は、以下の通りです。
  • 接種を受ける年度に65歳になる方
  • 60~64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはHIVによる免疫機能に重い障害がある方
さらに、経過措置として
  • 令和7~11年度までは、70歳以上で5歳刻みの方(70、75、80、85、90、95、100歳)、および令和7年度に限り100歳以上の方
も対象となります。

■接種の流れと費用
接種は居住自治体が指定する医療機関で行われ、費用は自治体によって異なります。全額公費ではなく、一部自己負担が必要なケースもあります。詳しくは自治体のホームページなどで確認しましょう。

帯状疱疹ワクチンは、インフルエンザワクチンと同様に希望者が受ける「B類疾病」の定期接種です。そのため、自動的に自治体から接種券が届くなど、積極的な接種勧奨は原則ありません。自分から予約・確認が必要です。
 

帯状疱疹のワクチンは2種類……効果、副反応の違い

帯状疱疹の定期接種で使われるワクチンは、「組換えワクチン」と「生ワクチン」の2種類です。  

■組換えワクチン(シングリックス®)
2回接種で発症を9割以上防ぎ、10年後も7割程度の効果があるとされます。副反応(接種部位の腫れや痛み、発熱など)はやや多めですが、米国ではこれが主流です。

■生ワクチン(乾燥弱毒性水痘ワクチン)
1回の接種で済みますが、予防効果は組換えワクチンよりもやや穏やかで、時間と共に効果が低下する傾向があります。

2種類のワクチンの特徴を理解し、医師と相談してどちらを接種するかを決めましょう。
表:定期接種で使用される帯状疱疹ワクチン(筆者作成)

表:定期接種で使用される帯状疱疹ワクチン(筆者作成)



高い予防効果を重視するなら、組換えワクチン(シングリックス®)が有力な選択肢です。2回接種で帯状疱疹の発症を9割以上抑え、その効果は10年後も7割程度維持されるとのデータがあります。米国では、組換えワクチンのみが定期接種で用いられているのが現状です。
 
一方、生ワクチン(乾燥弱毒性水痘ワクチン)は1回の接種で済みますが、効果は組換えワクチンに比べると穏やかで、時間とともに低下する傾向があります。

副反応については、どちらも重篤なものは稀ですが、接種部位の痛みや腫れ、疲労感といった一時的な症状は、組換えワクチンのほうが高い頻度でみられます。

また、ワクチンは帯状疱疹の発症自体を防ぐため、周囲にいる未感染者に、水疱に含まれる水痘・帯状疱疹ウイルスが感染するリスクも抑えることができます。これもワクチン接種の大切な効果の1つです。
 

帯状疱疹ワクチンの接種ルール。スケジュールに注意!

ワクチン接種には重要なルールがあり、異なる種類のワクチンを混合して接種することはできません。1回目に選んだワクチンで最後まで完了させる必要があります。

特に組換えワクチンは、1回目の接種から2カ月後(遅くとも6カ月後)までに2回目を終える必要があります。これを超えると、公費助成が受けられない場合があるため、計画的に接種しましょう。医師が早期の接種が必要と判断した場合のみ、接種間隔を1カ月まで短縮できます。
 

帯状疱疹ワクチン接種で、認知症の発症リスクを下げられる可能性も

2025年6月、オーストラリアの研究で「生ワクチンの接種が認知症リスクを低下させる可能性がある」という結果が示されました。現在、日本を始め多くの国で主流となっている「組換えワクチン」での検証はこれからですが、帯状疱疹による慢性炎症が認知症リスクと関連していることが指摘されており、今後の研究結果が注目されます。
 

まとめ:帯状疱疹ワクチンの接種で、痛みや後遺症から自分を守る選択を

帯状疱疹ワクチンの定期接種は、痛みや後遺症から自分を守る重要な手段です。2種類のワクチンの効果や副反応、接種回数の違いなどの特徴を理解し、生活スタイルや健康状態に合ったものを選ぶことが大切です。

筆者の周囲でも、ストレス社会そして高齢化社会に加え、コロナ禍でのストレス増加や生活習慣が変わったことにより免疫力が下がってしまったことから、帯状疱疹の発症が増えているます。帯状疱疹後神経痛を発症し、年単位で生活の質が下がってしまったケースも珍しくありません。

小児科では麻疹、風疹、肺炎球菌、インフルエンザ菌など、さまざまな予防接種があり、医師として、その効果と恩恵を感じます。予防接種はそもそも病気にならないようにするため、また、病気になったとしても症状を軽くしたり、後遺症を軽くしたりするためにあります。私自身、1型糖尿病という持病があるため、帯状疱疹ワクチンの定期接種が可能な年齢となればすぐに接種する予定です。

皆さんも対象年齢に達した際は、居住自治体のホームページを確認したり、保健所に問い合わせたりして、正確な情報を確認してください。なお、万が一の健康被害に備えて、国による救済制度も整備されています。安心して接種を検討していただけます。

■ 参考
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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