ITジャーナリストの高橋暁子さんの著書『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』では、デジタルネイティブ世代のコミュニケーションツールの使い方や、それに伴う意識の変化について、鋭い分析を加えています。
今回は本書から一部抜粋し、ビジネスシーンにおいて今や「電話恐怖症」とも言われるほど若者が電話を苦手とする背景や、固定電話が特に嫌われる具体的な理由、そして世代間の認識の違いを踏まえた円滑なコミュニケーションのヒントについて紹介します。
「電話恐怖症」の若者が増えている
あなたはビジネス上のコミュニケーション手段として何を選ぶでしょうか。対面コミュニケーション、メール、電話、LINE、SNS、SMSなど、用件が複雑かどうか、急ぎかどうか、記録に残す必要があるかなど、総合的に判断してツールを選んでいるのではないでしょうか。
ところが、合理的に選んだはずのツールが喜ばれないことがあります。
たとえば電話です。電話業務はビジネス上必須なものですが、最近では苦手とする人が目立つようになりました。
音声通話ソリューションサービスを展開するソフツーの、「電話業務に関する実態調査」(2023年10月) によると、全体の6割近く (57.8%) が電話に対して苦手意識を持っています。
中でも、20~30代は72.7%と7割以上が電話に対して苦手意識を抱えています。
SNSやLINEなどの利用が増えたことで、電話で話す機会が減少し、電話に対する苦手意識が強い「電話恐怖症」の若者が増えているのです。
大人世代は、固定電話にかけて保護者に取り次いでもらったり、遅い時間に電話をしてしまい叱られた経験がある方などもいるでしょう。
その時に、電話をかけていい時間帯や大人に対する言葉遣いなどを覚えます。
若者が固定電話を嫌う理由
ところが若者たちは、若ければ若いほど固定電話にかけた経験が乏しいため、誰が出るかわからない、出ても何を話せばいいかわからないといった理由で、拒む傾向にあります。調査でも、固定電話を不快に感じる人は44.8%に上ります。
理由は「手を止めて対応する必要があり、集中力が途切れ業務効率が悪い」(50.8%) が最多であり、他の業務の効率を妨げる点が嫌がられていました。
年代別に見ると20代では「自分の知識で正しく回答できるか不安」(41.4%)、「上司にうまく取り次ぎできるか不安」(27.3%) が全体に比べてやや高くなりました。
緊急の連絡ができたり、複雑なやり取りができて便利な電話ですが、最近はこのように苦手とする人が増えてきています。
電話はビジネス上で必須なツールなので、使わないことはできないし、無理に避けるのも意味がありません。
早く確実に意思の疎通をしたり、伝達するのには、相変わらず最適なツールです。しかし自分が電話を好んでいても、特に急ぎではない場合は、相手に合わせてメールなども使うと、喜ばれるでしょう。 高橋暁子(たかはし あきこ)プロフィール
ITジャーナリスト/成蹊大学客員教授。元小学校教員。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著作多数。SNSやスマホの安心安全利用等をテーマとして、テレビ、雑誌、新聞、ラジオ等のメディア出演多数。令和3年度から中学校国語教科書(教育出版)にコラム掲載中。