THX認定の条件「音響透過」
E2Sの音響透過特性。 40kHz付近まで実用的なので、次世代の高音質フォーマットにも対応可能。 |
THXのスクリーン製品認定審査を受けるには、まず、映画館と同じ仕組みである、音響透過タイプである事が前提となります。 音響透過とは、スクリーンの背面にスピーカー設置し、スクリーン越しに音を聴かせるものです。 台詞など、登場人物の口元から発せられているかのような感覚が、ストーリーに集中するためには不可欠なのです。
THX認定のスクリーンを製造しているメーカーは、今回の「イーストン」も含め、世界で3社有りますが、スクリーン透過時に高音が減衰してしまう為、補正用のイコライザーを必要とする製品もあります。
イーストンの「E2S」は、イコライザーなしで、測定データ(図)のような音響特性を備えているのが特長です。
実際に聴いてみると、スクリーンが有るときと、無いときでの区別はつきません。(筆者の耳では・・・)
フィルムライクで「しっとり」した画質
こんなに極端な角度から見ても、隅々まで均一な明るさ。(写真を拡大) |
音響透過型スクリーンの課題は、プロジェクターから投射した光が、音を通す為の穴や繊維の隙間から、後方へ漏れ、反射して再びスクリーンに戻ってくる現象です。 反射した光が戻ってくると、投影光と打ち消しあって、コントラスの弱い、締まりの無い映像になってしまうのです。
一般的には、反射面の裏側に、黒色の素材を追加する手法がありますが、音の透過率は悪くなってしまいます。 この問題を、「イーストン」の「E2S」は、独自の「ステンレス・スパッタリング」で軽減しています。
スパッタリングとは、分子レベルの金属を衝突させて被膜を形成する技術。 光を反射するのに好都合なのです。 音響透過性能と、画質を両立させるのに、一役買っています。
実際に映像を見てみると、黒がしっかりと沈みつつ、太陽のまぶしさも感じられる「ダイナミックさ」が印象的です。 幕面は、平滑性と拡散性にも優れているので、どの角度から見ても、隅々まで均一に明るく、しっとりと落ち着いた映像が楽しめます。 裏を返せば、プロジェクターの近距離設置とも相性が良さそうです。
いづれにしても、画質に関しては、THXの測定に基づく「お墨付き」を得ている訳ですから、より良い映像を得るためには、テストパターンを利用し、プロジェクターを入念に調整するのが基本と言えるでしょう。
さいごに
THX認定ホームシアターデザイナーとして、筆者の関わりが深い製品の為、主観的なお奨めは避け、製品のご紹介までにしたいと思います。
しかしながら、「日本メーカー初のTHX認定スクリーン」であるのは事実。 ご興味のある方は、全国のホームシアター製品を取り扱っているお店で、是非ご自身の目と耳でご判断頂ければと思います。
(*イーストンショールームでも、視聴予約を受け付けています。)