ろう児のためのバイリンガル教育とは?
4月に開校した明晴学園は日本手話と書記日本語のバイリンガル教育を行う学校として開校しました。 |
……と聞いても、多くの人は「?」かもしれません。
そもそも、日本手話って? 普通の手話と違うのでしょうか? しかもバイリンガルって?
明晴学園の斉藤道雄校長先生にその疑問をぶつけると、
「まさにそこが、この学校を作った理由なんです。ろうとは何か、日本手話とはどんな言語かを理解していただかないと、この学校を作った意味を理解していただけません」
という答えが返ってきました。
実は、私たちが手話教室などで学ぶ手話と、ろう者が使っている日本手話は、違う“言語”なのです。まずその辺りの解説をしましょう。
ろう者が使う独自の言語、それが日本手話
一般的な手話は、日本語の言葉を手の表現に置き換えられて伝えられます。「いつ学校から帰る?」なら「いつ/学校/帰る/質問」と、語順も日本語のままで表現することがほとんどです。日本語と対応していることで、日本語対応手話とよばれます。これに対して、ろう者の間で長い時間をかけて言語として形成されてきたのが日本手話です。日本語や英語と同じように、独自の体系を持っています。
語順や文法も異なりますし、手の動きだけではなく、顔の表情や、目の動き、首の動きなどの非手指動作も、言葉としての意味を持ちます。日本語を単純に手の表現に置き換えたものではないのです。たとえば、「いつ学校から帰る?」は、「学校/そこ/帰る/いつ(顔の表情で疑問形を表す非手指動作)」となり、日本語にはない文法とルールが存在しています。
日本語対応手話が、日本語で置き換えるのに対して、日本手話は、意味全体を捉えて伝えます。つまり、翻訳しているわけです。日本語とは違う言語として存在し、それは、ろう者にとっての母語になります。