今回は、金融経済教育推進機構が行った「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとに、60代の年収や貯蓄の実態をひもときます。これからの暮らし方を考えるヒントとして、ぜひチェックしてみてください。
60代・単身世帯の平均年収(税引き後)は?
まずは、単身世帯の「年間手取り収入(税引後)」の結果を確認してみましょう。・1位:300万円未満 59.9%
・2位:300万~500万円未満 22.4%
・3位:収入はない 7.9%
・4位:500万~750万円未満 7.7%
なお、平均は234万円、中央値200万円です。
60代単身世帯の年収は「300万円未満」が59.9%と最も多く、次いで「300万~500万円未満」が22.4%。つまり、8割以上の方が年収500万円未満で生活しているという実態が見えてきます。一方で、「収入はない」と回答した人も約8%、「500万~750万円未満」の高収入層も約7.7%と一定数います。
こうした幅広い年収層の背景には、60代特有の「多様な働き方」が関係しているといえます。実際、企業によって定年年齢は異なりますが、60代は「すでに退職して年金生活」という人と、「まだまだ現役で働いている」という人が混在しています。就業形態もさまざまで、調査では以下のような結果が出ています。
・就業(フルタイム雇用):27.5%
・就業(パートタイム雇用):19.8%
・就業(自営業主):10.7%
・就学:0.5%
・就業・就学ともになし:41.5%
この結果より、働いている人は全体の約6割。フルタイム雇用にこだわらず、自分のペースに合った働き方を選んでいる人が働いている人の半分を占めています。
60代・単身世帯の手取りから金融資産への振り分け状況は?
「60代の人たちは、どのくらい貯蓄しているの?」と気になる方も多いかもしれません。今回の調査では、金融資産を保有している世帯が、年間の手取り収入からどの程度を金融資産(貯蓄や投資)に回しているかについても聞いています。調査結果は以下の通りです。
・1位:「金融資産」への振り分けを全くしなかった 75.5%
・2位:35%以上 6.8%
・3位:10~15%未満 4.2%
・3位:20~25%未満 4.2%
上記より、約4人に3人が「まったく貯蓄や投資に回していない」という結果に。収入の大半が生活費に充てられている可能性が高く、「貯めたくてもなかなか余裕がない」現状がうかがえます。
一方で、一定割合(35%以上など)をきちんと金融資産に振り分けている人も一定数いることから、個人の経済状況や考え方によって、貯蓄の仕方に大きな差があることも分かります。
60代・二人以上世帯の平均年収(税引き後)は?
次は、二人以上世帯の「年間手取り収入(税引後)」の結果を確認してみましょう。・1位:300万~500万円未満 28.5%
・2位:500万~750万円未満 24.0%
・3位:300万円未満 19.6%
・4位:750万~1000万円未満 12.0%
なお、平均は546万円、中央値450万円です。
60代の二人以上世帯では、「300万~500万円未満」が最多で28.5%、続く「500万~750万円未満」が24.0%となっており、実に約5割の世帯が年収300万~750万円の中間層に位置していることが分かります。
平均年収は546万円、中央値は450万円と、単身世帯に比べると2倍以上の水準です。この差は、やはり複数人の収入があることや、世帯構成の違いによる影響が大きいと考えられます。
単身世帯とおなじく、就業形態についてもみてみましょう。
・就業(フルタイム雇用):47.7%
・就業(パートタイム雇用):15.8%
・就業(自営業主):9.4%
・就学:0.4%
・就業・就学ともになし:26.7%
二人以上世帯の就業形態を見てみると、フルタイム雇用が47.7%と約半数を占めているのが特徴です。パートタイムの15.8%や自営業の9.4%も含めると、実に7割以上が「何らかの形で働いている」ことになります。
一方で、26.7%は「就業・就学なし」と回答しており、完全に年金などの収入で生活している世帯も一定数あることが分かります。これは、健康状態や家庭の事情、本人の希望など、さまざまな背景が影響していると考えられます。
60代・二人以上世帯の手取りから金融資産への振り分け状況は?
60代の金融資産を保有している二人以上世帯についても、年間の手取り収入からどれくらいを貯蓄や投資といった「金融資産」に回しているかが調査されています。結果は以下の通りです。・1位:「金融資産」への振り分けを全くしなかった 63.2%
・2位:10~15%未満 9.2%
・3位:35%以上 8.9%
・4位:20~25%未満 6.6%
二人以上世帯の注目するべきポイントは、「まったく振り分けていない」と答えた割合が、単身世帯の75.5%よりも12.3ポイントも少ないという点です。これより、二人以上世帯の方が「貯蓄や資産形成への意識がやや高い」と見ることができます。
単身世帯では「自分一人の生活だからなんとかなる」と思いやすい反面、二人以上世帯ではパートナーや家族の将来も見据えて計画的に備えようとする傾向があるのかもしれません。
実際、夫婦で年金を受給していたり、一方が働いていたりする場合も多く、世帯収入が複数ある場合もあり、単身世帯よりも可処分所得が多くなりやすいと考えられます。
そうした余裕が、貯蓄や投資といった資産形成への意識や行動につながっているといえるでしょう。