65歳以上の就業者数は、20年連続で増加し914万人と過去最多最高の数字
総務省統計局が令和6年9月15日に発表した「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」によると、65歳以上の就業者数は、20年連続で増加し914万人と過去最多最高の数字となっています。 このように、65歳以上になっても働き続ける理由には、いくつかの要因が考えられます。まず、昨今の物価高が家計を圧迫していることが挙げられます。2025年1月から、パックご飯やパン、酒類・飲料など飲食料品約4000品目が値上げされる予定で、生活費の負担がさらに大きくなる見通しです。これにより、「年金だけでは生活が厳しい」と感じる高齢者は、働いて収入を得たいと考える人が多いでしょう。また、医療の進歩や健康志向の高まりで、元気な高齢者が増えたことも理由の1つです。さらに、長寿化によって資金が枯渇する「長生きリスク」に備え、貯蓄を増やす必要性を感じる人も少なくありません。このようなさまざまな理由が、高齢者の就業者数の増加につながっていると考えられます。次は、「年金だけで生活する人の割合」を見てみましょう。
年金だけで生活している高齢者世帯の割合は?
厚生労働省の「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」で公的年金・恩給だけで生活している高齢者世帯の割合を確認してみると「41.7%」となっています。 【公的年金・恩給の総所得に占める割合別の高齢者世帯の構成割合】・公的年金・恩給が100%の世帯:41.7%
・公的年金・恩給が80~100%未満の世帯:17.9%
・公的年金・恩給が60~80%未満の世帯:13.9%
・公的年金・恩給が40~60%未満の世帯:13.2%
・公的年金・恩給が20~40%未満の世帯:9.3%
・公的年金・恩給が20%未満の世帯:4.0%
また、高齢者1世帯当たりの平均所得金額の種類別の構成割合をみると、以下のとおりになっています。
【所得の種類別の状況】
・総所得:304万9000円
・稼働所得:79万7000円(26.1%)
・公的年金・恩給:191万9000円(62.9%)
・財産所得:14万円(4.6%)
・年金以外の社会保障給付金:2万5000円(0.8%)
・仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得:16万9000円(5.6%)
これより、年金が生活の中心を占める高齢者世帯が多いことが分かります。その一方で、働いて収入を得ている人が約30%いることが分かります。
最近では、医療の進歩もあり、60~70代といっても元気な方が多く、年金の不足分を「働いて補う」ことも容易です。老後の生活を充実させるためには、自分に合った働き方を見つけ、あわせて家計や将来に向けた計画を立て、より前向きな暮らしを目指す必要があるといえるでしょう。
高齢者が働き続けるメリット3つ
高齢者が働き続けるメリット3つを紹介します。●高齢者が働き続けるメリット1:気持ちに張りが出て自信が得られる
仕事をすることで日々の目標が明確になり、生活に張り合いが生まれます。また、社会とつながり続けることで孤独感が薄れ、自分がまだ社会の一員として役立っているという実感が得られます。特に高齢者の場合、「仕事をしている」という自信が、精神的な安定や前向きな気持ちにつながりやすいと言えるでしょう。
●高齢者が働き続けるメリット2:規則正しい生活で健康維持につながる
働くことによって生活リズムが整い、身体を動かす機会も増えます。これにより健康が維持され、体力の低下を防ぐことが期待できます。また、仕事を通じたコミュニケーションが、認知機能の維持や向上に役立つと考えられています。働くことは、心身の健康を支える重要な要素となるのです。
●高齢者が働き続けるメリット3:厚生年金に加入して働き続けることで、将来受け取れる老齢厚生年金が増える
もし、65歳以降も働き、厚生年金に加入するのであれば、その期間分、将来受け取れる老齢厚生年金が増えます。65歳以降にパートなどで厚生年金に加入して働く場合、在職定時改定といって毎年10月に65歳以降に払った保険料が12月から支払われる老齢厚生年金額に反映されます。
ただし60歳以上の人が働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、在職老齢年金制度によって、支給停止基準額(令和6年度は月額50万円)を超えた分の年金が支給停止となってしまいますのでその点はおさえておきましょう。
参照:
働きながら年金を受給する方へ|日本年金機構
在職老齢年金の計算方法|日本年金機構