VFでよみがえらせるとしたら?
――石井監督とのお仕事はいかがでしたか?三吉:石井監督と池松さんは何作も一緒に映画を作られているので、あ・うんの呼吸があって、撮影現場は安心感がありました。石井監督の中で朔也や三好に対する明確な意図があり、演出にも一本筋が通っていて的確な指示をしてくださったので、私も迷うことなく取り組めました。
――池松さんと田中裕子さんとは初共演だと思いますが、一緒にお芝居をした感想を教えてください。
三吉:田中さんは朔也のお母さんとして、ずっと温かい雰囲気をまとっていらっしゃって、あの雰囲気は田中さんご自身のお人柄ゆえだと思いました。池松さんは、この映画の座長として客観的な視点で現場を見ている印象がありました。一緒のシーンが多かったので、とても頼れる存在だったし、ありがたかったです。 ――この映画では朔也が「亡くなった母の本当の気持ちを知りたい」とVFでよみがえらせますが、これが現実にあったら、三吉さんはVFで会いたい人はいますか?
三吉:いないですね。興味はありますが、少なくとも人間や動物はVFで再現させたいと思わないです。例えば頭の中で「おじいちゃん元気かな、会いたいな」とか「かわいがっていた猫に会いたいな」と思って、脳内でよみがえらせることはありますが、それで十分。基本的に人間関係はアナログであるべきだと思っていますし、人間同士でちゃんと向き合って、いい関係を構築していきたいです。
でも、とても美しい景色とか、行ったことのない外国とか、そういうものはVFで見てみたいと思います。
経験は宝物。無駄なことは一つもない
――『本心』は三吉さんにとって、心身共に削られるような作品だったようですが、この映画に出演して、ご自身の中で成長したこと、学びになったことはありますか?三吉:これまで出演してきた作品、似ている役というのは一つもなく、アクション作品も、歌って踊るミュージカル作品も、撮影に入るときはいつも「どうしよう、どうしよう」と毎回悩んでしまうんです。
でもどの作品も自分にとっては必要で、糧にならないことはないと思います。楽しいことも、苦しいことも、無駄なものは一つもない。今回の作品は、とても難しかったし、自分はいっぱいいっぱいの状態でしたが、この映画に自分が関われたことは喜びですし、次の作品でこの経験は絶対に生かされると思います。
――三吉さんは、例えば『ダンスウィズミー』ではミュージカル、Amazon Original『ナックルガール』ではアクションなど、フィジカルもメンタルもチャレンジングな作品への出演が多い印象があります。それは三吉さん自身が“挑戦できる作品”を、あえて選んでいるのでしょうか?
三吉:そう言われればそうですね(笑)。“挑戦”という強い気持ちを持って臨まないと乗り越えられない出演作が多いかもしれません。でも意識しているわけではなく、ご縁があったんだと思います。個人的には、いろいろなタイプの作品に関わっていきたいし、特にアクション作品は今後もやっていきたいです。
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