Q. 「チメロサールフリー」のワクチンにデメリットはありますか?
「水銀を含まないワクチン」に、デメリットはあるのでしょうか?
Q. 「子どものワクチン接種を控えているのですが、ワクチンには保存剤として水銀が入っていると聞き、心配です。『チメロサールフリー』のワクチンなら、水銀が入っていないと聞きましたが、なぜあまり一般的ではないのでしょうか? 誰でも、水銀が入っていないワクチンを選ぶと思うのですが……。何かデメリットがあるなら教えてください」
A. コストや手間、安定供給に課題があります。水銀のリスクの有無も正しく理解を
まず、ワクチンには確かに水銀が入っていますが、これは「チメロサール」という種類の水銀で、細胞毒性のある「メチル水銀」とはまったく異なるものです。この2つを混同して過剰に心配する方は少なくありませんが、チメロサールには少量で殺菌作用があり、保存剤として役立つというメリットがあります。ワクチンによって多少の差はありますが、1回のワクチンに入っている「チメロサール」の量は約0.005mg(5マイクログラム)程度。メカジキなどは刺身1人前で80マイクログラムの「メチル水銀」が含まれています。水銀の種類もですし、量で考えても、そこまで心配する必要はないとお分かりいただけるでしょう。
「チメロサールフリー」ワクチンのデメリットを挙げるならば、保存剤(チメロサール)が入っていない分、1本のバイアル(瓶)のワクチンを複数の人に打つことが難しくなる点でしょう。バイアルを開けてからの保存がきかず、ワクチン内で細菌が繁殖するリスクがあるためです。生産数が減るため、安定供給が難しくなるという課題があります。
自費の場合、個人の負担額が高くなるのもデメリットと言えるでしょう。病院やクリニック側も、通常のワクチンよりも高いコストと手間がかかります。在庫の確保が難しいため、やはり安定供給が難しくなるという問題は、無視できません。
現在「チメロサールフリー」ワクチンは増えており、シリンジタイプで供給されるようになりました。一方でワクチン製造会社は限られているため、日本脳炎ワクチンや麻疹ワクチン、MRワクチンのように安定供給することは困難なケースが見られます。
また、新型インフルエンザが流行した場合は、短期間で不活化ワクチンを大量に製造する必要があるため、チメロサールを含むワクチンがメインになります。
個人の考えや予算にあわせて、チメロサールフリーのワクチンを選択するのは構いませんが、チメロサールフリーにこだわり過ぎて、接種のタイミングを逃して病気にかかってしまっては本末転倒です。冷静にメリット・デメリットのバランスを考えて判断されることを、おすすめします。
さらに詳しく知りたい方は、「水銀なしの『チメロサールフリーワクチン』のメリット・デメリット」「インフルエンザワクチンの水銀・チメロサールの影響」をあわせてご覧ください。