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入試によく出る クマ歩きの秘密

国立大学付属小学校入試の運動テストでよく見られる「クマ歩き」について、前々から「なぜクマ歩きなの?」という疑問を抱いていました。その疑問がやっと解けましたのでご紹介します。

高橋 公英

執筆者:高橋 公英

学習・受験ガイド

国立大学付属小学校入試の運動テストでよく見られる「クマ歩き」について、前々から「なぜクマ歩きなの?」という疑問を抱いていました。その疑問がやっと解けましたのでご紹介します。

皆さんは「運動保育援助プログラム」あるいは「柳沢プログラム」をご存じですか?松本短期大学柳沢秋孝教授、信州大学寺沢宏次助教授、諏訪東京理科大学助教授篠原菊記助教授らによる共同研究の成果に基づく子供向け運動プログラムです。

その研究から分かったことは
1.1969年のデータと1999年のデータで比べると、子供達の行動を抑制する能力がかなり落ちている。

2.また我慢できない年齢のピークが小学校2、3年から小6、中1へシフトしている。これは1979から1999年の間に起こっている。
ということです。具体的な実験方法は省きますが、GO/NO-GO課題という心理学では確立された実験に基づいた研究から導かれた結論です。

柳沢先生はその原因を子供達の遊びの変化によるものと考えています。自動車およびテレビの普及率が高まり、それと共に先の実験結果も引き起こされていると。

さらに子供の高脂血症増加のデータとも比較して、運動不足によるものと結論づけています。様々な外遊びをしなくなったために、運動量が減り高脂血症になっている。さらに身体を使った遊びを通しての心を育てる機会が減って、我慢する力も衰えているということです。

さて、それを検証するために「運動保育援助プログラム」というものを実施した群とそうでない群を比較しています。かつての子供達が遊びの中で行っていたような運動を取り入れて保育した子供達とそうでない子供達で先のGO/NO-GO実験を実施比較すると、運動した子供達の方が抑制力の向上が見られました。また幼稚園の先生から見て落ち着きが改善されたかどうかのアンケートでも有意な効果が見られています。

柳沢先生は知育でない運動でこのような効果があるのは、これらの運動が脳の管理統制能力を育てるからではないかと推測しています。現代の子供達は頭はよいけれども「身体的知性」「社会的知性」「感情的知性」が育てにくい環境にあると述べています。

運動学の観点から運動行動の階層構造は次のようになります。
・反射運動
つかむ
・基本運動
手を伸ばす、つかむ、離す
・協応運動
つかむ、投げる
・熟練運動
でんぐり返し、逆上がりなど
以上の4段階です。この中で反射運動・基本運動は日常生活で自然に身に付くものですが、それ以後は意識しないと身に付きません。協応運動ができないと熟練運動にたどり着けないのです。

そこで冒頭の「クマ歩き」ですが、これはその協応運動の例と考えられます。従って「クマ歩き」ができる子供は、その先のマット運動や跳び箱など熟練運動の前段階がマスターできているということになります。それは知的能力にも期待できるということです。

このように「クマ歩き」は十分に身体を使った遊びをしているかを、入試でみるために取り入れているのではないでしょうか。入試を実施する学校は経験的にその効用を知っていたことになります。

余談になりますが1982年のファミコン発売は、外での遊びから家の中の遊びへと子供の遊びの質を変える決定的な役割を果たしたことは間違いないと言えます。

【参考文献】

『からだ力がつく運動遊び―「できた!」体験が子どもを伸ばす』 柳沢 秋孝 (著)

『「生きる力」を育む幼児のための柳沢運動プログラム 基本編』 柳沢 秋孝 (著)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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