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思わぬ落とし穴もあります 偏差値に気をつけろ!

数字で表される偏差値はうっかりすると万能のように思えますが、その特性を知って賢く利用したいものです。

高橋 公英

執筆者:高橋 公英

学習・受験ガイド

当ガイドサイトでは偏差値関連記事やリンクは継続的に読まれているコンテンツの一つです。そこで今回は偏差値の落とし穴について説明します。

偏差値というと模擬試験や入試を思い出します。受験を経験した人には身近な数値ですが、どのように算出するかは忘れてしまっている方が大多数だと思います。

数学の統計を思い出して下さい。あるテストで受験者の得点を元に算出する統計的な数値は以下のものがあります。

平均点…全受験者の得点の合計を受験者数で割ったもの。
標準偏差…それぞれの受験者の得点のバラツキがどれくらいかを示したもの。
偏差値…各受験者がバラツキの中でどの位置にあるかを示すもの。

求め方は下の式によります。

要するに異なる試験では受験者の得点が上がったり下がったりし、平均点も変化します。これを比較できるようにするために、同じスケールに当てはめて(平均点を50点に揃え)表したらどうなるかを示す数値です。

この前提からも分かる通り、平均点が同じでもバラツキが大きいテストと小さいテストでは偏差値は異なってきます

バラツキが小さいテストでは偏差値の差が大きくても実力差はそれほどないのに対して、バラツキが大きいテストでは少しの偏差値の差が大きな実力差となります。

さらにこの考え方の前提には得点の分布が釣り鐘型の正規分布曲線であるということがあります。これは平均値を中心に高得点側も低得点側も対象に得点者の人数が並ぶ場合です。図1は正規分布を示す例です。

しかし実際は中心はどちらかへずれるものです。難しいテストでは低得点側へ、易しいテストでは高得点側へずれます。

さらに、入試でよく見られるコブが2つあるタイプの試験では偏差値と実態はかなりかけ離れてしまいます。図2はこの例です。

図1も図2も共に平均点が80点(160点満点)です。標準偏差は
標準偏差
図128
図242
となり図2の方が5割くらいバラツキが大きくなっています。

これが入試で上位15人が合格する場合に(ケースA)
偏差値得点合格人数ボーダーライン
図1偏差値64.3120点11人偏差値60.7(110点)の8人中4人合格
図2偏差値61.9130点14人偏差値59.5(120点)の10人中1人合格
となります。合否ラインは1.2ポイントですが、確実ラインは2.4ポイント差が出ます。
これが入試で上位50人が合格する場合には(ケースB)
偏差値得点合格人数ボーダーライン
図153.690点43人偏差値50(100点)の14人中7人合格
図254.8110点46人偏差値52.4(120点)の8人中4人合格
となります。こちらでは合否ラインで2.4ポイント差、確実ラインで1.2ポイント違います。しかもケースBでは図2の試験の方が図1よりも合格ラインの偏差値は下がっています。

このように平均点が同じでも、分布の違いにより合格ラインの偏差値に差が出ます。コブが一つでも入試では受験生の得点分布のピークが平均値よりどちらかにずれることは通常よくあることです。さらに2コブのパターンも難しい問題が出たり、特色のある問題が出る学校で見られます。ある大問がまるまるできたかできないかで生徒が二つに分かれるケースです。

実質倍率も合否ラインのバラツキに寄与する割合が高いことも注意が必要です。倍率が高ければ高いほど、分布の偏りの影響を受け合否ラインが振られます。実質倍率が低ければ、正規分布との差は少なくなります。

上記のシミュレーションでは合格確実ラインの偏差値の変化は2.4ポイントでした。しかし得点では、10点から20点の開きがあります。受験する側はあくまで得点を狙うことしかできません。偏差値は結果として出てくるものです。

したがって志望校選びの指針として偏差値は使い、合否の判断には過去問やそっくり模試での得点と、それまでの入試の合格最低点との比較も併用するのがベストです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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