セリフは脚本通りだけど動きはアドリブも
――2番目の彼氏のハヤシ(金子大地)との喧嘩シーンは迫力がありました。あそこまで取っ組み合って喧嘩したら、もう恋人関係解消かなと思いましたが、次第にあの喧嘩が愛情表現なのかもしれないと思うようになってくるところも面白かったです。河合:そうですね、ふたりとも喧嘩してもまだ一緒にいたいんだと思います。
――取っ組み合いのシーンは投げ飛ばされたりしていましたが、どうやって撮影したんですか? アクション指導者はいたのでしょうか?
河合:はい。アクション部のスタッフの方が決めてくださった動きで演じました。演技中もちゃんと見ていてくださったので、けがはしていないのですが、ちょっとしたアザはできました。でも山中監督は「カナは前日、ハヤシと喧嘩してアザを作っているかもしれないから、アザを消さずにそのまま生かしましょう」と。
――その場で起こったことなど、現実を生かす演出をされていたんですね。
河合:セリフは脚本通りでアドリブは全然ないんです。でも脚本に描かれていない動き、仕草など、撮影スタッフも含めて現場でアイデアを作品に取り入れていきました。ライブのような感じで撮影は本当に楽しかったです。
面白いものを追求して貫いた『ナミビアの砂漠』の撮影現場
――憧れていた山中監督とのお仕事ですが、充実されていたんですね。河合:そうですね、想像していた以上の楽しさでした。映画作りはビジネスの側面もあるし、集団で仕事をしているので、どこかで折り合いをつけなくてはならないことはあると思います。
でも、『ナミビアの砂漠』の撮影では、スタッフ、キャスト共にとにかく面白いものを追い求めていた感じが強くあって、その気持ちを貫くことができた。純粋に面白いものを作ろうと思えばできるんだというシンプルなことを教えられた現場でもあり、私にとってぜいたくな時間でした。 ――完成した映画を見た感想を教えてください。
河合:毎シーン撮影するたびに「いいシーンになったぞ」と思っていたので、自分の中のハードルが上がってしまい、試写のときはすごくドキドキしました。現場はすごく豊かだったけど、作品としてどうなっているかな……と。
正直、まだ適切な距離で見ることができないのですが、やっぱり山中監督らしい、かっこいい映画になっていると思いました。
特に、最初の恋人・ホンダ(寛一郎)と2番目の恋人・ハヤシのシーンは、撮影で抱いた印象よりも魅力的でした。どんな行動をしてもどこか笑えてちゃんと愛されるキャラクターになっているのが良かったです。
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