『ナミビアの砂漠』主演、河合優実さんにインタビュー
――『ナミビアの砂漠』、21歳のヒロインが常識の殻を破り続ける姿が面白かったです。山中瑶子監督のデビュー作『あみこ』を見て、山中監督に「いつか監督の映画に出たいです」と手紙を書いたそうですね。『あみこ』は山中監督が19歳のときの作品ですが、この映画を見たきっかけは?河合優実さん(以下、河合):当時の私は高校生で、演技の道を目指してはいましたが、まだ本当に動き始めたばかりの頃で。『あみこ』を見たのは、出演者の大下ヒロトさんと知り合いだったことがきっかけです。大下さんに「事務所のオーディションを受けるにはどうしたらいいのか」と相談をしていたんです。その流れで大下さんが出演している『あみこ』を見ました。
――そして『あみこ』で描かれる世界が河合さんの心に刺さったのですね。
河合:当時はまだ見た映画について自分なりに咀嚼(そしゃく)する術さえ持ち合わせていなかったのでうまく表現できなかったのですが、高校生の自分に直感的に刺さったんです。「こんな世界、見たことない!」と。
なので山中監督の『ナミビアの砂漠』への主演が決まったとき、高校生のときに何も分からないまま『あみこ』を見てビビッと来た感覚と、プロになった今の自分の感覚との答え合わせをするような気持ちもありました。
――河合さんが惹かれる山中監督の感性、その魅力とはどういうところなのでしょう?
河合:『あみこ』を見たとき、描写、セリフ、音楽すべてが印象に残ったのですが、セリフが特に面白かったんです。
ミュージカル風のダンスシーンが出てくるのですが、女子高生のあみこが突然音楽を止めて「日本人はな、体が勝手に動き出したりしねえんだよ」と言ったり……。セリフの端々に反骨精神のようなものが感じられる映画でした。
山中監督とあみこの目線が同じで、自分事として描いているのが気持ち良かったし、世界に対して疑いの目を向けたり、はみ出してみたり、その感じがパンクだけどチャーミングでとてもかっこよかったんです。
カナの魂をキラキラ輝かせたかった
――パンクだけどチャーミングというのは、『ナミビアの砂漠』のカナのようですね。カナ役についてはどのように考えて撮影に入りましたか?河合:脚本に描かれているカナがとにかく面白かったです。
メチャクチャな行動に走ったり、人によって態度を変えたり。特にひとりで過ごしている時間のリアリティーがすごいと思いました。誰でも映画のカナのように、人の目を気にしないで過ごすだらしない時間ってあると思いますし、そんな無防備なカナの人間性を芝居で表現するのが楽しみで、撮影に入るのをワクワクして待ちました。
カナはいい子ではないし、悪いこともしているんですよね。人に嘘をついたり、暴れたり……。それでもカナの魂をキラキラと輝かせたいと思いました。ついカナに目がいっちゃうような、惹きつけられるような……。行動は過激だけど、魂はきれいで、いつもメラメラ燃えている。そんな輝きを持ったカナにしたいと思いながら臨みました。 ――最初はカナの言動が自由奔放すぎて「この子は大丈夫かな」と思ったりしたのですが、誰にも媚びずに生きているカナを見ているうちに、だんだんうらやましくなっていきました。
河合:「カナがうらやましい」という感想は結構多いんです。あそこまでさらけ出し、相手にぶつかっていけるのはうらやましいと。現実の社会で暴力は肯定できないけど、自由な精神がやっぱり輝いて見えたならうれしいです。
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