「お母さんだって、いろいろキャンセルしてる」
24歳の娘と同居しているアイコさん(50歳)も、娘の「あまりきれいとは言えない生活ぶり」に手を焼いている。「娘が4歳のときに離婚して、私の母と女3人で暮らしてきました。母はパートをしながら家事育児をしてくれた。私はひたすら外で働いてきました。娘も昨年から社会人になり、ようやくホッとしたところなんですが」
これからはみんな自分のことは自分でやろうと決めたのだが、娘の部屋に洗濯物が山のようになっているのを見て、アイコさんの母は我慢できずに洗濯してしまった。以来、娘の分の洗濯物はアイコさんの母がそれまで通りやっている。
「母は孫が心配だから、いろいろやってしまうんです。私が外で働いてばかりいたから、娘はまったく家事をしつけられてこなかった。せめてトイレや風呂掃除くらいしてよ、休日にはリビングの片づけくらいしてよと言っても娘は逃げてしまう」
そしてやはり、娘はめったに風呂に入らない。週に2度ほど会社近くの美容院でシャンプードライをしてもらっているから大丈夫、体ふきシートもあるからと、アイコさんの「風呂入れ攻撃」をかわしている。
娘に反撃された母「心が痛みます」
「春先、母がケガをして2カ月近く入院していたんです。私が早く帰れるときは帰って、食事の支度をしていたんですが、娘はコンビニで適当なものを買って帰ってきて部屋にこもってしまう。たまには一緒に食事しようと誘って食卓を囲んだら、『やっぱりお母さんの料理はおいしくない』と言われてしまいました。確かに慣れてないから、自分でもおいしいとは思わなかった。『お母さんは料理キャンセル界隈だね』と娘に笑われて、私は自らキャンセルしたわけじゃないとムッとしました」思わず、あなたを育てるために仕事を掛け持ちしたりして大変だったんだからと言ってしまった。恩を着せるつもりはなかったのだが、娘はさらりと「私が産んでくれって言ったわけじゃないよ。離婚してほしいとも思ってなかったよ」とつぶやいた。
「それまで親の離婚に一言も文句を言わなかった娘の、あれが本音なのかもしれないと心が痛みました。あれからずっと娘との距離のとり方がわからなくなっています」
風呂キャンセル界隈という軽めの話から思わぬ方向に飛んでしまったが、日常生活、ちょっと面倒だなと思うことは多々ある。家事も含め、「丁寧にきれいに暮らす」ことは理想だが、人間、なかなかそうはいかないものかもしれない。