かえって炎上する危険も
今回のように当該企業が自社のホームページ等で反論メッセージを出す場合にも、業種によっては注意が必要になるでしょう。当事者がアミューズのような芸能プロダクションや、BtoB企業で直接消費者イメージを気にする必要のない企業の場合には、かなり強めの物言いでコメントを出しても問題になるケースは少ないでしょう。しかし、食品や消費材を扱う企業や一般消費者向けのサービス業などの場合には、強すぎる表現をすることで「横暴な企業」「荒っぽい企業」とも受け取られかねず、それが元でかえって炎上して「買い控え」などの消費者行動につながることもあるので、注意が必要です。
今回出されたアミューズのコメントで申し上げれば、「名誉毀損などの違法行為については、当社あるいは当該アーティストにて、法的措置を含む対応を検討いたします」などは、至極まっとうな物言いではあります。
しかし、受け取り様によっては誹謗中傷に対して受けて立つというケンカ腰の姿勢にも受け取られかねず、消費者向け企業の場合には炎上回避の観点から、表現は少し丸みを持たせる必要があるように思われます。
また同社は本件に関して、名誉毀損投稿のリツイート(現在のリポスト)についても法的責任が生じることがあると言及したこと、さらにはSNSへの書き込みやDMで誹謗中傷を繰り返す行為が「つきまとい行為」に該当する場合もあるとの、第2弾コメントを掲出しています。
これは、迷惑行為と受け取られる書き込みをした本人以外の不特定多数に対して、敵対的とも受け取られかねない発言でもあるのです。筆者は、消費者向け企業の場合には、ここまで言及するのは少し強すぎるのではないかと考えます。
新聞、雑誌にどのような迷惑記事を書かれようとも、読み手はあくまで読み手であり、それ以上の何者でもありませんでした。
しかし、ネットで情報が次々共有される今の時代は、読み手は必ずしも読み手で終わることなく、時には情報を拡散する役割を担ったり、また時には企業側のコメントに対して反論や非難を発信する可能性も秘めてもいます。
その観点から未然防止を考えた抑止力として、アミューズのような強いコメントも必要な場面はあると思います。
しかし企業によっては、強すぎるコメントや姿勢を示すことがかえって多数の消費者を敵に回すリスクが生じるので、対応には常にネットでの反応を先読みする慎重さが求められるということも忘れてはならないでしょう。
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