インフルエンサーの書き込みでは星野さんの名前こそ記されていなかかったものの、その書きぶりから明らかに星野さんに言及したものと判断される内容でした。事務所がすぐに、断固たる姿勢で名誉毀損での法的措置も辞さずと強い姿勢を明確にしたことに対して、ネット上では称賛の声が上がっていました。
新たなメディアとして、内容によってはその影響力が無視できないSNSやYouTube等の個人ネットメディアへの企業広報対応は、マスメディアとは異なる難しさがあるように思います。今回の一件を参考にしながら、その対応のあり方について考えてみます。
大きな社会的責任を負っていない“個人”
従来、新聞や雑誌などの大手メディアに対する企業広報対応は、基本は1対1のクローズドな対話で行われるのが一般的です。具体的には、誤った報道や悪評につながるような作為的な報道があった場合には、まずはその報道機関に対して直接問い合わせやクレームを入れ、訂正記事や謝罪文の掲載を求めます。
その過程を経てなお、企業側の申し入れがかなわず問題が解決を見ない場合に、最終的に法的措置を講じるという流れです。
相手は基本的に報道をなりわいとする新聞社や社会的責任を帯びた出版社等であり、クレームを申し入れる場合でも、紳士的な対応を基本として訂正や謝罪を求めるというのがあるべきやり方なのです。
しかしSNSやYouTubeは、企業がPR目的等で発信しているものを除けば、大半がいわゆるブロガー、インフルエンサー、YouTuberなどと呼ばれる、ある意味で大きな社会的責任を負っていない“個人”であり、それ故に対応には対新聞や雑誌とは異なる注意が必要になると考えます。
DMを送ること自体のリスク
ひとつは、直接ダイレクトメッセージ(DM)等でクレームを申し立てることは可能ではありますが、その行為自体にリスクがあることを意識するべきということです。最大のリスクは、ネットの世界では話題を呼んだ書き込みやつぶやき、動画は、即座にリポストやシェアなどにより拡散され、たとえそれがデマ情報であっても真偽の確認などすることもなく、多くの利用者によってあっという間に広まってしまうということです。
その意味では、今回アミューズが問題発生直後に企業としての反論メッセージを公表したという迅速な対応は、至極正しい判断であったと思います。
彼ら個人の発信者に対して、新聞社や雑誌社に対するのと同様の考え方で1対1のクローズドな対話手段であるDMを差し向けたとしても、デマ情報の拡散を止めることには無力であるといえるでしょう。
DMが発信者に全く無視されるという可能性も十分あるでしょうし、最悪のケースは企業側からの抗議文をネット上等で公開され、先方の悪意ある反論や論理のすり替えが加わることで、企業側にとってかえってマイナスイメージの拡散リスクが生じかねない、という可能性もあるのです。
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