17年ぶりの利上げで短期金利もプラスの水準に浮上
政策金利は期間1年以内のお金の貸し借りで使われる短期金利の目安となるので、利上げによって短期金利も上昇した。銀行同士で毎日の資金をやり取りするときの金利である「無担保コール翌日物金利」はこれまで0%を下回っていたが、マイナス金利解除を受けて0.07%台まで浮上している。 短期金利が上昇すると、銀行に預ける預金の利率も上がってお金が増えやすくなる点がメリットだ。だが一方で、住宅ローンを借りるときの金利も上がると言われており、そうなるとローンの利息が増えて返済額が重くなるというデメリットも考えられる。ただでさえマンション価格はこのところ高くなっているのに、さらに住宅ローンの金利が上がったらマンションが買いにくくなってしまうのではないか。マンション価格はアベノミクス以来の上昇が続く
そこでまず首都圏を例に、マンション価格の現状を確認してみよう。 首都圏の新築マンション価格はいわゆる平成バブル期の1990年に平均6123万円でピークに達したあと、バブル崩壊によって下落し、1993年からの20年間は4000万円台で推移した。その後、2013年にアベノミクスと日銀による大規模な金融緩和が始まると上昇に転じ、2021年にはバブル期を超える6260万円に。さらに2023年には都心部で大型の高額物件が分譲されこともあり、一気に8101万円まで高騰した【図2】。マンション価格の高騰は原油や輸入資材の価格上昇、人手不足による工賃の高止まりなど建築コストのアップが大きな要因とされるが、金利の低下による影響も見逃せない。
返済額が同じでも住宅ローン金利が下がればより多くの額を借りられるので、住宅価格が上昇しても買う人のニーズが減らないからだ。実際、都心部などでは夫婦とも高年収の「パワーカップル」が2人で住宅ローンを借りるペアローンを組み、高額な物件を買うケースが目立つという。
しかし今回、日銀が利上げを実施したことで、マンション価格の動きにも変化が現れる可能性がある。マイナス金利が解除されたからといって、すぐに住宅ローン金利が上がるわけではない。冒頭のグラフ【図1】を見ても、住宅ローン利用者の7割が選択しているといわれる変動金利は上がっていないことがわかる。だが、景気や物価を先読みして動く傾向がある長期金利は、すでに2年ほど前から上昇傾向に転じている。
マション価格は上がり続ける可能性も
長期金利とマンション価格にはどのような関係があるのか。バブル期以前からの両者の推移を示したグラフ【図3】を見ると、バブルの崩壊から1996年くらいまでは連動していることが分かる。金利の上昇に伴って価格が上がり、金利が下がると価格も下がっていたのだ。
それが1990年代後半以降は金利が低下しても価格は下がらなくなり、2013年のアベノミクス以降は金利が下がって価格は上がるという関係に変わっていく。グラフの形はあたかもワニの口のように大きく開いている。
注目すべきなのはここ数年の動きだ。価格と金利の両方が上昇する状態に転じており、特に価格は急激な上昇となっている。バブル期と今とでは金利の水準が大きく異なるが、もしバブル期と同様の動きになるのであれば、今後は金利の上昇に伴ってマンション価格もさらに上昇することが考えられる。
長期金利は「経済の体温計」とも言われ、景気や物価が上昇すると金利も上昇するとされている。この先、日本の景気が良くなって物価が上がると金利が上昇し、マンション価格も上昇するというわけだ。
この先マンション価格が下がるタイミングは……
そうなると、この先マンション価格が下落に転じるとすれば、それは金利が再び低下に転じたときとの見方も成り立つ。これからマンションを買うのであれば、まだ金利が低い今のうちがいいのか、それとも金利が下がってマンション価格が下落に転じるのを待つのか。ただし、それがいつになるのかを予測するのは困難だ。