「緊張でガチガチになる」という言葉の通り、人は緊張すると体だけでなく顔もこわばり、呼吸が浅くなって本来のパフォーマンスができなくなってしまいます。
そんな時こそあえて笑顔をつくりましょう。
「緊張でガチガチ」な時こそ、笑顔をつくる理由
表情は心に影響するといいますが、顔の動き(外面)が心(内面)を動かすことも、また真実だからです。「表情フィードバック仮説」をご存じでしょうか。感情を受けて体が反応するのではなく、まずは体の生理反応が起こり、その結果が感情を引き起こすという仮説です。
つまり「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しくなる」、「楽しいから笑う」のではなく「笑うから楽しくなる」。緊張したときにこそ笑顔になることで「できそう」「やる気が出てきた」などポジティブな感情が引き起こされて、心にゆとりが生まれてきます。
とはいえ、とりあえず笑顔を……と言われても、「どんなふうに笑えばいいかわからない」「こわばった顔で無理に笑顔をつくっても不自然な表情になるだけでは?」「一瞬なら笑顔を作れても、スピーチなどでは笑顔で話し続けるなんて無理」と思う人もいるでしょう。
これは確かにその通りです。だからこそ表情筋のトレーニングが必要なのです。
「体」と同じように「顔」にも筋トレが必要
体を鍛えるトレーニング、いわゆる「筋トレ」は、いまや一般にかなり浸透しています。毎日ジムに通ったり、ランニングをしたりしている人はたくさんいますが、顔の筋トレが習慣化している人はどれだけいるでしょうか。
顔は約50個の表情筋で構成されています。顔も体と同じ筋肉でできているのに、首から上となるととたんに“立ち入り禁止ゾーン”にされてしまうのは、おかしいですよね。
体のトレーニングをしていると「上腕二頭筋と大臀筋をもう少し鍛えたい」など、個々の筋肉に対して敏感になっていきます。顔も同じで、トレーニングを重ねるうちに個々の表情筋への意識が明確になり、使い方がわかるようになっていきます。
「どんなふうに笑えばいいのかわからない」「緊張した場面で不自然な表情になってしまう」のは、表情筋の使い方を知らないだけ。
知らない・わからないことは不安やストレスの原因となり、さらなる緊張を呼んでしまいます。
元メジャーリーガーのイチローさんは、ホームランやヒットを「なぜ打てたのか」、明確に説明できたそうです。
「バットを振ったら打てちゃった」という”なんとなく“の感覚ではなく、体の動きを細かいところまで分析し、理解して練習できているので「打とうとして打つ」ことができるというわけです。これは「笑顔」も同じです。
「大頬骨筋を鍛えれば頬が上がる」「口角挙筋を鍛えれば口角が上がる」と、使い方が明確になれば迷いが消えて自信が持てます。自分を客観的に見て笑顔をコントロールできる状態になれば、どんなに緊張する場面でも余裕が生まれるはず。
この状態にたどり着くために必要なのが、習慣的な顔のトレーニングなのです。
話している時にも自然に口角が上がる
緊張していても自然な笑顔が出せるようにするためには、「フィンガーインスマイル」で口角挙筋を鍛えましょう。ポイントは、指をくわえたときに下の歯が見えないようにすること。
あごの力を抜いたまま、口角の先が釣り糸で上に引っ張られるようなイメージで、縦方向に口角を引き上げます。
【実践編:フィンガーインスマイル 2ステップ】
ステップ1. 人差し指を軽くくわえ、あごの力を抜いて顔全体をゆるめる。 ステップ2. 上の歯が8本見えるように頬と口角を持ち上げて、5秒キープ。 この2ステップを5~10回繰り返すだけ。慣れてきたら、指をくわえながら「ありがとう」「おはようございます」など大きな声で言葉を発してみましょう。
練習を重ねたダンサーが、極限の状態でも音楽がかかると自然に体が動いて踊り出すように、このトレーニングを続けていくと、会話中や緊張している場面でも無意識に口角が上がって、素敵な笑顔がつくれるようになりますよ。