土屋太鳳さんはヒロインの輪花を熱演しています。そんな土屋さんに映画の裏側、役作り、そして俳優としての人生についてお話を聞きました。
土屋太鳳さんにインタビュー
――本作のオファーがあったとき、率直にどう感じましたか︖土屋太鳳さん(以下、土屋):映画『ミッドナイトスワン』(2020)を拝見していたので、内田英治監督とはずっとご一緒したいと思っていましたし、佐久間大介さんは18歳のときに舞台を拝見してすごく感動して以来、ずっとご活躍を見てきたので、お話をいただいたときは「ぜひ!」とすぐお答えしました。
ただ内容的にはすごく難しいなと感じました。
マッチングアプリを開発したり、利用したりしている方々は、誠実に向き合っていらっしゃるので、マッチングアプリのどんな面に焦点を当ててサスペンスにするのか、それをちゃんと理解して演じないと偏見のような内容になってしまう気がして。その解釈は丁寧にしたいなと思いました。
――完成した作品はいかかでしたか?
土屋:すごく印象的だったのは、台本を読んだときの印象と自分が演じたときの印象、そして、完成した映画を見たときの印象がどれも違っていたことです。すごく不思議でしたけど、映像として見たときの印象が一番シンプルでした。
でも、だからこそリアルというか……。変な例えかもしれないのですが、親戚の外科医から、手術などで見る本物の心臓は想像しているよりもグロテスクに感じないことがあると聞いたことがあって、その感覚に近いのかもしれません。でもやっぱりつらすぎて、人は人を大切にするべきだと思いました。
輪花の苦しみを共有しすぎて憔悴してしまった……
――輪花の役作りについて、監督とはどんなお話をしましたか︖土屋:監督は「俺は音楽のライブを見ると、“本番には本番の強さがある”“一回しかできないことがあるんだな”とすごく影響を受けるんだ。太鳳ちゃんもダンスをやっている人ならではの爆発力があるはずだから、そんな感じで一緒にやっていけたらいいな」というお話をしてくださいました。
撮影が始まったころは、いろいろ試してくださっていたと思います。ある場面で監督が「ダンスだと思ってやってみて」とおっしゃって、できるだけ身体を使って表現みようと思ってやってみたところ「あ、やっぱりこっちかな」と、別の表現を探してくださったり。監督は一緒に試行錯誤してくださいました。
演出としては、リハーサルのときから「もっと力を抜いて、もっと声が小さくていい」と声をかけてくださいました。実は現場で佐久間さんの声も聞こえないほど小さかったのですが、映像でみるとちゃんと成り立っていて「さすが」と思いました。
――泣きの演技、絶叫する演技が印象的でしたが、演じていて⼤変だった部分はありましたか︖ 土屋:大変というか、本当につらかったです。つらすぎて自分が消えてしまいそうでしたし、家に帰っても輪花が全然抜けなくて、家族も心配するくらい憔悴してしまいました。
「スカイダイビングをしたら人生観が変わる」という話を聞いて、輪花と一緒に人生観を変えようと仕事の移動中にスカイダイビングを検索したら、あまりにも費用が高かったのでやめたんです。けど、それくらいつらかったです。
現場で、佐久間さんと金子ノブアキさんが少年のように明るくて、その様子に心を救われていました。
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