アメリカとの攻防で見せるリアルな交渉術
――潜水艦のシーン、バトルシーンなど、これまでの日本映画やドラマにないようなスケールで驚きました。大沢:僕は、映画やドラマの制作はあらゆる可能性と方法があっていいと思っています。今回はエンターテインメント作品らしい直球勝負のスケール感でいきましたが、小さな世界観でもできるし、ドキュメンタリー的な手法でも描けるわけです。可能性は無限大。ただ、躊躇(ちゅうちょ)したり、安全策を取って置きに行ったりしては絶対にダメだと思っています。
だから本作は地上波では難しいであろうセリフもありますし、日米間の問題、比較など、突っ込んだ内容になっています。 ――確かにアメリカとの交渉など、そこまでやるのか?というスリルがありました。
大沢:原作は漫画なので、状況を細かく説明することも可能ですが、映像作品では長々と説明はできない。でもこの映画のスタッフも僕も、我々の国のあり方、対応の仕方など、劇中で起こっている問題を映像の中でちゃんと描きたいと思ったんです。
海江田が潜水艦をジャックして、政府をあざむいてまで起こしたことに対し、政府や官僚がどう腹をくくって対応するのかをエンターテインメントとして見せていくことが大事だと思いました。
政府や官僚が物分かりよく物事をバンバン解決していったら、それは嘘だろうと思いますし、本作では互いの顔色をうかがったり、アメリカに嫌われないようにしたり……。海外の人が見たら「何をいつまでもモタモタやっているんだ?」と思うような描き方をしています。でもそうするのが日本人。そういう日本らしい切り口で描いているので、これが世界へ配信されたら、どんな風に受け取られるのかと興味はありますね。
――世界中に配信されることに対して、期待と不安はどちらでしょうか?
大沢:こういうテーマの作品がどう見られていたかという前例を知らないので、未知数ですよね。ある意味、ジャッジされる立場にいるので、期待をしているけど、不安もかなりあります。
――この作品はエンターテインメントだからこそできたこともありますよね。
大沢:確かにそうですね。『沈黙の艦隊』の内容は、ドキュメンタリーでは難しいと思うんです。エンターテインメントだから突っ込んで描けたし、フィクションだからこそ、海上自衛隊も協力してくれたのではないかと思います。
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