デジタルカメラ

ポートレートの撮影に「望遠レンズ」が使われる理由は? 【プロカメラマンが解説】

ポートレート写真の撮影には「望遠レンズ」が使われることがよくあります。標準レンズや広角レンズではなく「望遠レンズ」が選ばれがちな理由を、分かりやすく解説します。

瀬川 陣市

執筆者:瀬川 陣市

写真撮影ガイド

一般的に、ポートレート写真を撮影するときには「望遠レンズ」(ここでは「100ミリ程度以上の焦点距離のレンズ域」を指します)を使うといいといわれています。カメラレンズには標準や広角もありますが、なぜ「望遠」がいいといわれているのでしょうか。分かりやすく解説していきます。
 

望遠の特徴1. “歪み”が少ない

望遠レンズのメリットを理解するには、カメラレンズの特性を知っておく必要があります。ここでは、焦点距離を変更できる「ズームレンズ」を例に説明しましょう。

一眼カメラのエントリーモデルには、ズームレンズがセットになっています。遠くにある被写体も拡大して写すことができる便利なレンズですが、実は使い方によって被写体の形が違って見えることがあります。次の写真を見てみてください。
左がボックスを広角で撮影した例。右は望遠で撮影した例

左がボックスを広角で撮影した例。右は望遠で撮影した例

写っているのは同じボックスですが、よく見ると形に違いがあるのがお分かりでしょうか。左の写真のボックスは歪んで写っている一方、右側のボックスは見た目にほぼ近い形で写っています。同じボックスを写したのに、なぜ違いが生まれるのでしょうか。

答えは、ズームレンズの広角と望遠の写り方の違いにあります。

カメラのレンズは中央部分から端に行くにつれ厚みが薄くなっており、その厚みの差によって光の屈折が起きるため、被写体の形に歪みが出ます。レンズ全域を使う広角で撮影すると歪みがより顕著になりますが、望遠で撮影すると歪みは少なくなるのです。
 

望遠の特徴2. 写り込む背景が狭い分、被写体の存在感が出る

広角と望遠の違いは、写り込む背景にも表れます。
広角と望遠の画角の違い。広角では写る範囲が広い一方、望遠では写る範囲が狭い

広角と望遠の画角の違い。広角では写る範囲が広い一方、望遠では写る範囲が狭い

図のように広角は写せる範囲が広く、背景の広い範囲が写り込みます。一方、望遠側では写せる範囲が狭いため、背景も狭い範囲でしか映り込みません。その分、被写体の存在感がより強く感じられるのです。
 

望遠の特徴3. 背景ボケの効果を作りやすい

望遠ならではのメリットもあります。それは「被写界深度」(=ピントが合う範囲)を浅くして「背景ボケ」の効果を作りやすいということです。

背景ボケを使うと被写体の存在感がより強まり、浮かび上がるようなイメージにすることができます。特定の被写体を強調して撮影するときによく使われる撮影テクニックです。

花を広角と望遠で撮影した例で比較してみましょう。
左は24ミリの広角で撮影。右は135ミリの望遠、F2.8で撮影

左は24ミリの広角で撮影。右は135ミリの望遠、F2.8で撮影

左は24ミリの広角で撮影。右は135ミリの望遠、F2.8で撮影

左は24ミリの広角で撮影。右は135ミリの望遠、F2.8で撮影

 

まとめ

以上のことから、望遠レンズを使うメリットは(1)「被写体の歪みを抑えられる」(2)「背景を狭くできる」(3)「背景ボケの効果を作りやすい」の3点が挙げられます。このメリットを生かせば被写体を際立たせたポートレートを撮影できることから、ポートレート系の撮影には望遠が使われやすいのだと考えられます。

補足ですが、ポートレートは望遠レンズでしか撮れないわけではありません。広角レンズや標準レンズを使ってポートレートを撮ることもあります。
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