急増する「トコジラミ」による被害。噛まれた場合の症状と駆除法は?
以前は日本でも一般的だったトコジラミ。殺虫剤の普及により1970年代には減少しましたが、現在、国内でも拡大傾向にあります。原因としては、一般的な殺虫剤である「ピレスロイド系殺虫剤」が効かない個体が増えたことと、インバウンドにより海外からの入国者が増えたことが影響しているようです。トコジラミの特徴と、刺された時の症状、効果的な予防法・駆除方法について、わかりやすく解説します。
【画像あり】トコジラミとは……特徴・主な生息場所
トコジラミ。5~8mmほどの大きさで、茶褐色をしています(「日本環境衛生センター」提供)
トコジラミは、以前は「南京虫」「床虫(とこむし)」とも呼ばれていた吸血性の寄生昆虫です。体長は5~8mmと小さく、茶褐色をしています。名前に「シラミ」とつきますが、シラミ目ではなくカメムシ目に属す、カメムシの1種です。卵と幼虫は白く粘着性があり、オスメスに関係なく、幼虫から成虫まで吸血します。
トコジラミの幼虫から成虫まで。中央左が雄・中央右が雌(「日本環境衛生センター」提供)
普段は平べったいのですが、15~30分ぐらいの時間をかけて吸血すると濃赤色になり、丸く膨れます。人が夜眠っているときにベッドの周辺などから出てきて吸血し、吸い終わると見えにくい生息場所に戻っていくので、トコジラミの存在に気づかないまま、刺されてしまうことが多くあります。名前の通り、寝具周辺で多く見られますが、家具やカーペット、床や壁の継ぎ目、畳のへり、本の間、カーテンやブラインド、衣類など、どこにでも潜り込みます。
卵や幼虫は様々なものに付着しやすいので、衣類やかばんなどについたまま移動することで、生息場所を広げていきます。吸血していなくても半年以上生きることがあります。
【症例画像あり】トコジラミに刺されたときの症状は、かゆみや腫れ
トコジラミに刺された跡の症例画像(「日本環境衛生センター」提供)
トコジラミが吸血すると、蚊と同様に吸血中に血が固まらないような成分を持つ唾液を注入してくるため、刺された後はかゆみが起きたり、皮膚が赤くなったりします。
かゆみの程度には個人差がありますが、眠れないほど強いかゆみを伴うこともあります。蚊と同じく肌が露出している部分ほど刺されやすいため、手足や首に症状が出ることが多いです。トコジラミに刺されるリスクは1年中ありますが、特に夏に多く被害が見られます。
トコジラミの予防法・駆除する方法
トコジラミは一度繁殖してしまうと、防除することが難しい虫です。成虫は1日3~6個、一生で約200~500個の卵を産みます。卵が孵化すると1か月ほどで成虫になりまた卵を産み始めるため、驚異的なスピードで増え、生息場所を広げていきます。万一室内に持ち込んでしまった場合に駆除するポイントは、こまめにしっかりと掃除をすることです。すでにトコジラミに刺されたような症状が出た場合は、室内のどこにトコジラミがいるのか、生息場所をはっきりさせる必要があります。室内、特にベッド周りを中心に、「血糞」と呼ばれる黒い小さな糞がないかを探してみましょう。もし血糞が多く見つかれば、そこがトコジラミの生息場所の入口付近である可能性があります。
トコジラミを発見したら、以下のような駆除方法が有効と言われています。
- 掃除機でしっかりと吸い取る
- ガムテープに貼り付けて捕る
- トコジラミに有効な殺虫剤を使用する
- 洗濯やスチームなどで熱処理をする
- 被害がひどい家具がある場合は丸ごと処分する
すでにトコジラミが大量に繁殖してしまい、自力での駆除が難しい場合は、専門業者などに駆除を依頼するのがよいでしょう。
■参考
- トコジラミとその効果的な防除法(PDF) (平成27年2月6日 平成26年度生活衛生関係技術担当者研修会 資料 (一財)日本環境衛生センター 環境生物部 部長 武藤敦彦)