人間関係

21歳年下の女性と「年の差婚」。50半ばで妻と“収入が逆転”、定年後“主夫”になった男性の本音(2ページ目)

48歳のときに21歳年下の女性と結婚。独身が長かったので勝手なふるまいも多く、自分のほうが稼いでいるという自負から「妻を下にみる」態度をとっていたこともあった。定年後、立場が逆転し主夫になった彼は「新たな発見」続きだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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50代後半で妻と立場逆転「僕より稼いでいた」

「50代後半で出向になって給料が減ったんです。そのころから妻はバリバリ働くようになりました。あるとき尋ねたら、僕より稼いでいた。それがわかってから、妻に逆らえなくなりました」

収入を自分の価値だと思い込んでいる男性は、妻が自分より稼いでいるとわかると急に自分の存在価値が揺らいでしまう。

「妻は月に何度か夜勤もしたいと言う。ダメだとは言えませんでした。これから子どもたちに学費もかかるわけだし。僕は結婚してから、妻にじゅうぶんな生活費を渡していたけど、僕自身もけっこう散財していて思ったほど貯金もなかった。子どもたちの学費のためと言われたら、僕が家事をするよというしかなかった」

ひとり暮らしが長かったから、実は家事もできるし、料理は嫌いではない。ただ、「稼いでいる夫が家事をする必要はない」と思い込んでいただけだ。

「特にコロナ禍では妻はまったく休めなかったので、家のことはほとんど僕がやるしかなくなった。いつの間にか立場が逆転してしまった。それで初めて、妻の気持ちがわかりました。家事は完璧にやっても誰にも褒めてもらえないし、孤独な作業も多いなと」

定年退職、主夫業で「新たな発見」が

この春、彼は定年退職を迎えた。仕事を探したが、自分の年齢で納得できる給料をもらえるところはなかった。

「もう働かなくていいわよ。私が働くからと妻が言ってくれて。申し訳なさもあって、今はせっせと主夫をしてますよ。そんな僕の姿を見て、娘がよく手伝ってくれる。おそらく娘が僕に冷たかったのは、母親を下に見ている父親が嫌だったんでしょう。この年で新たな発見ばかりしています」

横暴というほどではなかったはずだが、妻には有無を言わせないことはあったかもしれないとカズオさんは言う。

「妻は僕の親にもずいぶん気を遣ってくれていたのに、きちんとお礼を言ったこともなかった。先日、病院で亡くなった母が、最後に妻の名前を呼んでいたんです。オレは今まで何を見てきたのかと恥じ入りました」

ふと思う、自分が仕事で得たものとは?

あれほど仕事をしてきたが、今となっては仕事で得たものは何だったのかと思うことさえあるという。仕事でつながった人脈は、友だちとは違っていた。

「学生時代にまで遡らないと友だちがいないんですよ……。社会人になったら友だちなんていなくてかまわないとも思っていた。でも今になると寂しいですね」

妻は冷たいわけではないが、自立して生き生きと仕事をしてるのを見ると、自分が厄介者なのではないかとさえ感じることがあるという。

「もっとちゃんと妻と向き合って家庭を作るべきだった。今からでは遅いかもしれないけど、僕自身が少しでも変わっていければいいなと思ってはいます」

おそらく妻は「下に見られていた」ことを忘れてはいないはずだ。そんな妻のわだかまりをどう払拭できるのか、それがこれからの課題かもしれないとカズオさんは言った。

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