映画『花腐し』に出演、綾野剛さんにインタビュー!
――荒井晴彦監督作への出演は初めてだと思いますが、『花腐し』への出演の決め手は何でしょうか? 脚本を読んだ感想も教えてください。綾野剛さん(以下、綾野):脚本を読ませていただき、作家性の強さにとても刺激を受けました。筋肉質であり繊細。そのストイックな脚本は、男女の自然で残酷な一面も描いている。そういったさまざまな側面のコントラストが荒井さんや中野太さん(共同脚本)でないと紡げない世界観ですし、“映画の匂い”を強烈に感じて、出演させていただきました。
――荒井監督との仕事はいかがでしたか? 監督の演出は厳しいのでしょうか?
綾野:ただ静かにじっくりと演技を見つめていました。その緊張感と安心感の温度差は、他では感じたことのない時間でした。
生きている実感がない主人公
――綾野さんが演じた栩谷の役についてはどう解釈されていましたか?綾野:表層的に言えば、愛想もサービス精神もなく、“生”に対してぼんやりしている。そのぼんやりこそが栩谷の魅力だと僕は思っています。生きることに意味を見出せるのかという彼の問いかけと共に、それでも「生き続けてほしい」と願う言語化できない反比例が役の骨格となっていきました。
また栩谷には柄本佑くんが演じた伊関や、さとうほなみさんが演じた恋人の祥子の存在が、栩谷が生きている証明をしてくれていたと思います。やはり人は、他者と対峙することで、自分が生きていると実感できる。その事実をとても大切に描いている映画だと思います。
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