年末調整/2023年・令和5年の年末調整の書類の記入方法

【2023年・令和5年】年末調整・給与所得者の保険料控除申告書の書き方

給与所得者の方が会社から提出を求められる年末調整書類の1つに「給与所得者の保険料控除申告書」があるかと思います。これはご自身で加入している生命保険や地震保険、天引き以外で支払った社会保険料などを申告し、税金の還付を受けるためのものです。今回は「給与所得者の保険料控除申告書」の書き方について解説します。

川手 康義

執筆者:川手 康義

ファイナンシャルプランナー / サラリーマン家庭を守るお金術ガイド

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<目次>
給与所得者の方が会社から提出を求められる年末調整書類の1つに「給与所得者の保険料控除申告書」があるかと思います。これはご自身で加入している生命保険や地震保険、天引き以外で支払った社会保険料などを申告し、税金の還付を受けるためのものです。

今回は「給与所得者の保険料控除申告書」の書き方について解説します。

給与所得者の保険料控除申告書とは

給与所得者の保険料控除申告書とは、給与所得者が年末調整で生命保険料、地震保険料などの保険料控除を受けるために提出する書類のことをいいます。用紙は大きく4項目に分けられており、「生命保険料」「地震保険料」「社会保険料」「小規模企業共済等掛金」について記入する様式となっています。
給与所得者,保険料控除申告書

給与所得者の保険料控除申告書は大きく4項目に分かれています(出典:国税庁/筆者作成)

生命保険料控除欄と保険料控除証明書

生命保険料控除は「一般の生命保険料」「介護・医療保険料」「個人年金保険料」の3種類に分かれており、合計で最大12万円の控除を受けることができます。

加入している保険がどの種類に該当するのか、年間に払い込んだ(払い込む予定の)保険料がいくらなのかは生命保険会社から送られてくる「保険料控除証明書」に記載されていますので、それを転記します。

なお証明書には年間払い込み見込み額が記入されていますので、年末まで加入するのであれば記入にはその見込み額を使用します。
生命保険料控除証明書

生命保険料控除証明書の内容をそれぞれの項目に転記します

生命保険料控除は「一般」「介護・医療」「個人年金」合計で最大12万円ですが、それぞれで上限額は決まっています。例えば「一般」しか加入していない方が、それのみで12万円まで受けられるわけではありません。

また「一般」「個人年金」では加入した時期により旧契約(平成23年までに契約)と新契約(平成24年以降に契約)に分かれており、各契約時期による上限額と、合算する場合にはそれぞれの区分による上限額があるので注意が必要です。
生命保険料控除,上限額

生命保険料の控除には上限額があります

一般の生命保険料控除の記入例

ここからは実際の記入方法を申請書にそって解説していきます。

まずは、一般の生命保険料控除の記入方法です。国税庁のホームページにはモデルケースの記載例があり、山川太郎さんは次の2つの生命保険に加入しています。

1:●●生命/養老保険/期間10年/契約者:山川太郎、保険金受取人:妻・山川明子/区分は新契約/年間支払い保険料25000円

2:××生命/養老保険/期間10年/契約者:山川太郎、保険金受取人:妻・山川明子/区分は旧契約/年間支払い保険料80000円


生命保険会社からの「保険料控除証明書」をもとに上記情報を転記します。次に新契約に該当する保険料の合計額を(A)欄に、旧契約に該当する保険料の合計額を(B)欄に記入します。

モデルケースでは新契約保険、旧契約保険は各1つですので各年間保険料をそのまま(A)欄に25000円、(B)欄に80000円と記入します。
生命保険料控除証明書,一般,新契約,旧契約

生命保険料控除証明書をもとに一般の生命保険料を新・旧に分けて記入します

次に新契約保険料合計額(A)欄、旧契約保険料合計額(B)欄からそれぞれの控除額を計算します。計算には申告書下部にある計算式を使いますが、新契約には「計算式I(新保険料等用)」を、旧契約には「計算式II(旧保険料等用)」を使いますので間違わないようにしてください。それぞれの控除額は以下となります。

新契約控除額:25000×1/2+10000=22500円
旧契約控除額:80000×1/4+25000=45000円
生命保険料控除,新契約,旧契約

新契約と旧契約それぞれで控除額を計算します

控除額を計算したら新契約については(1)欄に、旧契約については(2)欄に記入したうえで(1)欄と(2)欄の合計額を(3)欄に記入しますが、合計する際の控除額上限は4万円ですので注意してください。

つまりこのケースでは(1)欄22500円、(2)欄45000円であり合計は67500円ですが、上限額が4万円なので(3)欄は40000円となります。最後に(2)欄と(3)欄を比べて大きい額を「イ欄」に記入します。モデルケースでは(2)欄が大きいので(イ)欄は45000円となり、最終的にこの額が一般の生命保険で受けられる控除額となります。

ちなみに今回のケースでは、新契約と旧契約の合計で控除を受けるより、旧契約のみで控除を受けた方が控除額は大きくなり税負担が少なくなります。申告書を手順に沿って記載していけば納税者に有利になるよう作られていますので、新旧契約を合わせるかどうか悩む必要はありません。

介護・医療保険控除の記入例

つぎに、介護・医療保険控除の記入方法です。モデルケースの山川太郎さんは以下の介護保険に加入しています。

1:●●生命/介護保険/期間10年/契約者:山川太郎、保険金受取人:妻・山川明子/年間支払い保険料80000円

先ほどと同様「保険料控除証明書」の情報をもとに年間保険料を(C)欄に記入します。なお介護・医療保険が複数ある場合は、年間保険料の合計額を記入します。

その後(C)欄の金額をもとに申告書下部の「計算式Ⅰ(新保険料等用)」を用い、控除額を計算します。

介護・医療保険控除額:80000×1/4+20000=40000円

(ロ)欄には40000円と記入し、これが介護・医療保険で受けられる控除額となります。
介護保険,保険料控除証明書

保険料控除証明書をもとに介護・医療保険料から控除額を計算します

個人年金保険料控除の記入例

個人年金保険料控除の記入方法を解説します。モデルケースの山川太郎さんは、次の2つの個人年金保険に加入しているとします。

1:●●生命/○○年金/期間30年/契約者:山川太郎、保険金受取人:山川太郎/区分は新契約/年間支払い保険料90000円

2:××生命/○○年金/期間30年/契約者:山川太郎、保険金受取人:山川太郎/区分は旧契約/年間支払い保険料30000円


手順は一般の生命保険料控除の際と同じです。まずは「保険料控除証明書」に書かれている内容を転記します。そののち新契約に該当する個人年金保険料の合計額を(D)欄に、旧契約に該当する個人年金保険料の合計額を(E)欄に記入します。

モデルケースでは新契約保険、旧契約保険は各1つですので、各々の年間保険料をそれぞれの合計額として(D)欄に90000円、(E)欄に30000円と記入します。
生命保険料控除,個人年金

生命保険料控除証明書をもとに個人年金保険も転記します

次に、新契約には「計算式Ⅰ(新保険料等用)」を用いて、旧契約には「計算式Ⅱ(旧保険料等用)」を用いてそれぞれ控除額の計算をします。そののち新契約の控除額は(4)欄に、旧契約の控除額は(5)欄に記入します。

新契約控除額:90000(80001円以上は一律40000円)=40000円
旧契約控除額:30000×1/2+12500=27500円


次に(4)欄と(5)欄の合計額を(6)欄に記入します。(6)欄記入の際には、新契約と旧契約を合計する場合の控除額上限が4万円であることに注意してください。
新契約,旧契約,個人年金

新契約と旧契約ではそれぞれの計算表を用いて計算を行います

モデルケースでは新契約控除額(4)欄は40000円、旧契約控除額(5)欄は27500円であり合計額は67500円になりますが、上限額は4万円なので(6)欄には40000円と記入します。

最後に(5)欄と(6)欄を比べて大きい額を(ハ)欄に記入します。モデルケースでは(5)欄が大きいため(ハ)欄には40000円と記入し、この額が個人年金保険で受けられる控除額となります。

最終的な生命保険料控除額はいくら?

これまで「一般」「介護・医療」「個人年金」それぞれの種類ごとの控除額を計算してきましたが、最終的な生命保険料控除はその合計額になります。ただし前述したように生命保険料控除額の上限は12万円でありそれ以上は控除を受けられません。

モデルケースでは「一般(イ)欄」45000円+「介護・医療(ロ)欄」40000円+「個人年金(ハ)欄」40000円の合計額は125000円ですが、限度額が12万円ですので、このケースでは最終的に受けられる生命保険料控除額は120000円となります。
一般の生命保険,介護医療保険,個人年金保険

一般の生命保険、介護・医療保険、個人年金保険の控除額を合算します(最高12万円)

地震保険料控除の記入例

地震保険に加入している場合も控除が受けられます。なお以前は損害保険料も控除を受けることができましたが、平成19年分から廃止されており、経過措置として以下の要件を満たす長期損害保険契約等に係る損害保険料についてのみ、地震保険料控除の対象にすることができます。
 
  • 平成18年12月31日までに締結した契約(保険の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)
  • 満期返戻金等のあるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約
  • 平成19年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの
 
モデルケースでは、山川太郎さんは以下の地震保険と長期損害保険に加入しています。

1:××火災/地震保険/期間5年/契約者:山川太郎/区分は地震保険/年間支払い保険料42000円

2:▲▲火災/積立傷害保険/期間20年/契約者:山川太郎/区分は旧長期損害保険/年間支払い保険料14800円


保険会社からの「保険料控除証明書」をもとに上記情報を(A)欄に転記します。その後(A)欄の中で地震保険に該当する保険料の合計額は(B)欄に、旧長期損害保険に該当する保険料の合計額は(C)欄に記入します。
地震保険,旧長期損害保険

保険料控除証明書をもとに地震保険料を記入します

最終的な地震保険料控除額はいくら?

地震保険料と旧長期損害保険料の合計が最終的な地震保険料控除額になりますが、旧長期損害保険料については10000円を超える場合、(C)×1/2+5000円で計算した額になります。

旧長期損害保険:(C)14800円×1/2+5000円=12400円
地震保険料,旧長期損害保険料

地震保険料と旧長期損害保険料を合計します

なお地震保険料控除額の上限は5万円ですので、地震保険料42000円と旧長期保険料12400円の合計額は54400円ですが、最終的な地震保険料控除額は50000円となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。一見すると難しく見える保険料控除申告書ですが、保険会社から送られてきた保険料控除証明書をもとに順を追って記入していけば、それほど難しいものではありません。

なお「保険料控除証明書」は10月頃に加入している各保険会社から順次郵送されるかと思いますので、年末調整までなくさないようにしてください。

〈参考〉国税庁 令和5年分給与所得者の保険料控除申告書

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