友人の山下良雄(浜野謙太)と悟の三人のシーンは、居酒屋などでのトーク場面が多く、他愛のないおしゃべりをしているうちに、悟のみゆきへの想いに気付き、二人の恋を応援していくのです。かわいくて清らかなこの純愛物語の中で、桐谷さんはテンポよく会話を回して作品を盛り上げています。
そんな桐谷さんに映画『アナログ』の撮影の裏話からご自身のキャリアについてお話を伺いました。
二宮さん、浜野さんとの友情シーンは長回し
――『アナログ』の出演依頼があったときのことを教えてください。桐谷健太さん(以下、桐谷):ビートたけしさんの原作は先に読んでいたのですが、原作の高木は、下ネタも言うし、結構ヤンチャなヤツだったんです。それに比べると映画の高木はだいぶマイルドになっていました。原作の持つ純粋な部分を前面に押し出した脚本という印象でしたね。
この清らかな恋愛映画の中で、僕が演じる高木と浜野さんが演じる山下は作品の友情部門。どうやって演じていこうかと考えました。 ――桐谷さんと浜野さんと二宮さんのシーンは見ていて楽しかったです。お二人とは芝居について話したりしたんですか?
桐谷:タカハタ秀太監督は、僕たちのシーンは脚本の部分が終わってもカットをかけず撮影していたんです。三人のシーンは1分の場面でも15分くらい撮影していましたね。だから台本より、その後、自分たちが生み出した会話の時間の方が毎回多いくらいでした。
でも監督が長回ししてくれたおかげで、僕らは、悟、高木、山下の関係性、友情のあり方など、芝居をしながら構築していけたと思いますし、三人の醸し出す友達としての空気感を表現できたと思います。
高木と山下の“アクの強さ”はカットされた?
――悟は恋愛に不器用な印象がありました。でも、そんな悟がみゆきに恋する姿は親友の目にどう映っていたのでしょうか?桐谷:悟のスローテンポの恋は、自分の恋愛の進め方とは違い、ありえないと思いつつ、うらやましい一面もあったと思います。そしてなんだかんだ悟のことを大好きな高木は、親友の恋がうまくいってほしいと応援していたんでしょう。
撮影では、台本に書かれていない芝居の部分で、原作のキャラクターに寄せた言動や下ネタも言ったりしていたんですが、完成した映画を見たらカットされていました(笑)。
――撮影した中からピュアな部分を監督はすくい取ったんですね。
桐谷:はい、高木と山下のちょっとした“アク”みたいな部分はなくなっていました(笑)。僕はその“アク”が好きだったりするんですが、監督には、自分の描きたい悟とみゆきの恋がありますから。
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