飲み会や旅行、新幹線の座席回転も解禁で……久しぶりにマナーの悪さが目につく!
新幹線ではコロナ禍で禁止だった座席の回転が解禁に、その他電車などの公共交通機関もマスクなしで乗車する人も多くなりました。
久しぶりの旅行に浮き足立つのか、はたまた夏休みシーズンは気が緩みがちなのか、公共交通機関の車内も普段より賑やかになっているようです。コロナ禍で見えなくなっていたマナーの悪さを再発見し、モヤモヤしてしまう人も増えているのではないでしょうか。
できるだけ気にしないようにするための考え方はあるか。もし直接迷惑を被った場合など、どうしても指摘しなければいけないときには、どのように伝えればいいのか。なるべく相手の感情を刺激しない対処法について考えてみましょう。
タイプ別! できるだけ心穏やかにやり過ごすための対処法
不快に感じるマナー問題を、大きく分けると以下の2つに集約できます。(1)新型コロナウイルスに関連したマナー
「電車内で会話をするときや、混雑時にはマスクをつけてほしい」「咳が出るときにはマスクをしてほしい」「混雑している飲食店では会話を控えてほしい」など
(2)新型コロナウイルス登場前からあったマナー
「電車内での大声での会話はやめてほしい」「居酒屋などで大声で騒ぐのは迷惑」「路上に集まって座り込むのはNG」など
(1)と(2)の両方に共通するのは、その場所で快適に過ごす権利があると、騒ぐ人・迷惑だと思う人の両者が思っていることです。特に(1)の場合には「マスクは必要だ」「マスクなんて意味がない」といった正反対の信念を持っていることが想定されるので、自分の信じることを主張するよりは、黙って席を移動するといった選択をする方がいいでしょう。
このとき「相手が移動するべきで、自分が移動しなければならないのはおかしい!」と考えてしまうと腹が立ちます。それよりも「より快適な空間で過ごす」「トラブルを避けて快適さを手に入れる」という結果を優先するのだと考えてみてください。自分が移動するのは、主張を曲げることでも、間違っている人に譲ってあげることでもなく、今より好ましい環境をトラブルなしで手に入れる手段です。言い争って怒りの感情を増大させることや、時間を無駄にすることより、よっぽどマシだと考えましょう。
(2)の場合には想像力を駆使しながら移動するのがおすすめです。例えば飲食店で大騒ぎしている人たちに怒りを感じたときには、自分が友達と盛り上がっているときの気持ちを想像しながら、別の席に移動してみてください。
この場合も「あの人たちが移動するべきだ」と考えると腹が立ってしまいます。「興奮し過ぎて周りが見えなくなっている残念な人」と捉え、自分もやったことがあるなと振り返りつつ、今は冷静に判断できる自分が譲ってあげると考えてみてはどうでしょう。
興奮状態の人を正論で説得しようとしても、心理的反発を誘発してしまうため、相手は自分たちの権利を主張してくる可能性が高いです。興奮状態の人との小競り合いに貴重な時間を費やし、気分を悪くする価値はありません。自分がそっと席を移動するというのは、負けではなく戦略的選択なのです。
新型コロナウイルスに関連するマナーの場合
そうは言っても、席を移動できない場合など、相手の行動を指摘し対処を要求しなければならない場面もあるかもしれません。そんな場合に、できるだけトラブルを少なくして、こちらの思う行動をしてもらうためには、どのような点に注意して伝えればいいのでしょうか。具体例を見て、勘所を押さえておきましょう。新型コロナウイルスに関連した(1)のタイプでは、お互いが正しいと信じていることが正反対だという前提で伝え方を考えるのが大事です。
例えば、「マスクは無意味で、することで健康を損ねる」という信念の人が混み合った車内で会話をしていたとします。そのときに「マスクが新型コロナウイルス拡散を防ぐための有効な手段であり、マナーである」という信念の人が相手の行為を非難しても、納得してもらうことはできません。お互いに自分の考えているマナーが正しく、相手は間違っているという強い信念を持っているので、行動を改めてもらうのはそもそも難しいもの。トラブルになりやすい状況ですので、伝え方をよく考えてから声を掛けましょう。
どうしてもスルーできない状況で問題行動を控えてほしい場合、以下の3つの伝え方がポイントになります。
(1)相手の信念には触れない伝え方をする
理由には触れず、変えてほしい行為のみにフォーカスして伝えます。
例)
×「マスクをしていないのに会話をするのは非常識です。会話をするならマスクをしてください」
〇「すみません、できれば少し会話を控えていただけますでしょうか」
(2)非難のニュアンスを隠して伝える
非難されていると感じてしまうと「間違っているのはお前だ」といった思考になりがちで、行動を変えてもらうのがより困難になります。できるだけ声や表情に気をつけて、戦略的に穏やかな伝え方を選択してください。
例)
×「マスクをしないでいつまで会話してるんですか」
〇(声のトーンや表情に気をつけながら)「すみません、できれば少し会話を控えていただけますでしょうか」
(3)依頼形式で伝える
「あなたはこうするべきだ」という言い方だと心理的反発が起きますので、あくまでお願いしているというニュアンスで伝えます。おすすめのフレーズは「可能であれば」です。
例)
×「会話をするならマスクをしてください」
〇「すみません、可能であれば会話を少し控えていただくわけにはいかないでしょうか」
このように細心の注意をはらって伝えても「マスク警察め!」といった思考になってしまう人もいます。ダメ押しをするのであれば、すでに了承してもらったかのようなフレーズをプラスするのもおすすめです。
例)
「すみません、可能であれば会話を少し控えていただくわけにはいかないでしょうか。……本当にすみません、ありがとうございます」
こちらがお願いするのはおかしいと不満に思うかもしれませんが、安心して静かに乗車する権利を主張してしまうと、相手も乗車中に会話する権利を主張したくなります。どんな結果が欲しいのかにフォーカスして伝えましょう。
新型コロナウイルスに関連しないマナーの場合
飲み会が解禁になり、つい大声を出してしまっている人たちにモヤモヤすることも
なぜマナー違反になってしまったか、理由は大きく分けると2つあります。
- つい盛り上がり過ぎてマナー違反になってしまっている
- 周りがうるさいと思っていたとしても、自分たちも客であり快適に過ごす権利があると思っている
1. のケースであれば、穏やかに「お楽しみ中のところすみません、少し声の大きさを控えていただけませんでしょうか」とお願いしてみるのもいいでしょう。気がつかずに騒いでしまっていたケースでは、態度を改めてもらえる可能性が高いといえます。
2. のケースだと注意をしても、態度を改めてもらえず、最悪の場合トラブルになってしまう可能性があります。静かにしてほしいと考える人たちと同じ料金を払っているのだから、盛り上がりたい自分たちも尊重されるべきだと考えがちだからです。2. のケースの場合、席の移動をするなどの対応で乗り切るか、お店の人に注意してもらうかの2択で考えましょう。
お店の人に声掛けをお願いする場合には「すみません、他のお客様の迷惑になりますので少しだけ声を小さくてもらっていいでしょうか」といった丁寧な声掛けから始めてもらうのも大切です。「店の人にクレームを入れたのにキツく言ってもらえなかった」と怒る人もいますが、ファーストコンタクトは丁寧にするのがセオリーです。非難のニュアンスはできるだけ少ない方が意地になって権利を主張されるリスクを抑えられます。
店側から注意してもらうと、周りにいる人も同じ立場の客であり、それぞれに快適に過ごしたいと思っていることを理解してもらいやすいというメリットがあります。「自分たちも同じ料金を払っている客なのだから」といった主張をしがちな人たちを抑止する効果が期待できますので覚えておきましょう。
正しさよりも結果にフォーカスした伝え方を選択しよう
自分は悪くないのに、なぜこちらが気を使った声掛けをしなければならないのか。そう考える人もいると思います。たしかに、マナー違反の人に注意をするという行為は正しいことなのかもしれません。しかし、非難されたように感じると「自分は正しい」と主張したくなるのが私たち人間の心理です。こうなってしまうと「こっちだって金を払っている」「道路は誰のものでもない」など、さまざまな主張で正しさを認めさせようとする可能性が高くなります。皆さんが求めているのは、小競り合いをすることでも相手を論破することでもないはずです。正しさにこだわらず、「もう少し静かに過ごしたい」などの自分が欲しい結果にフォーカスして、自らの快適さを手に入れてください。