亀山早苗の恋愛コラム

妹からのストレートな質問に「涙がこぼれた」。男性として生きる“中途半端な自分”に思うこと

トランスジェンダーを巡ってはさまざまな局面で厳しい意見が交わされている。性自認と恋愛指向がますます複雑になる中で当事者たちは……。「心は女性寄り」だという当事者に話を聞いた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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人間は「男と女しかいない」というのは、もはや通用しない世の中になってきた。男と女の狭間に、さまざまな性自認があり、さらにその男女の枠を包み込むようにさまざまな恋愛指向が存在する。

例えば、ある知人に話を聞くと、性自認は「男でも女でもない」し、恋愛対象は「誰でもOK」である。また別の知人は、「体は男だが心は女性寄りで、そもそも恋愛感情を持っていないため恋愛対象はナシ」という。
高校時代、女子と一緒に「私もダンスをやりたいと先生に直訴した」というカオルさん

高校時代、女子と一緒に「私もダンスをやりたいと先生に直訴した」というカオルさん

トランスジェンダーを巡っては厳しい意見も飛び交っているが、トランスジェンダーと一括りにするよりは、「その人個人」と相対するしかないのかもしれない。それは相手がトランスジェンダーであろうと、男性、女性を自認する人であろうと同じではないだろうか。
 

「心は女性寄り」カオルさんの場合

カオルさん(38歳)は、戸籍上は男性だが心は女性寄りだという。

「姉と妹に挟まれた長男なんですが、両親が離婚していて父親の記憶があまりない。気づいたときは母と祖母と叔母に囲まれて、家族6人のうち自分だけ男だったんです」

言葉遣いが女性っぽかったので、子どもの頃からからかわれた。友だちは女の子が多かったし、荒っぽいことは苦手だった。

「高校のとき、男子は剣道か柔道をやらなければいけなくて、どちらも苦痛でした。女子はダンスだったんですよ。私もダンスをやりたいと先生に直訴したけど許可されなかった。周りの男子からは情けないヤツと言われたけど、なぜか庇ってくれる女子もいた」
 

妹からのストレートな質問に涙がこぼれた

悩みながらも、男として生きていくほうが周囲と齟齬(そご)がないだろうと判断するしかなくなっていった。

「大学は芸術系の学部に行ったので、周りも変わった子が多かったし、気は楽でした。それでも男子とつきあうより、女子と一緒にいるほうが安心するんですよね。だけど相手は私を男として見ているわけで……。相手に恋愛感情が見えると、すっと逃げていくようになりました。私は男として相手を見ているわけじゃないので、このまま進むと面倒なことになるのがわかっていたから」

あるとき、妹が「おにいちゃん、本当は女の子になりたいんじゃないの?」とストレートに尋ねてきた。誰にも言えずにいたカオルさんは、その言葉に心が溶けるような気がして、自然と涙がこぼれてきたという。

「と同時に、私はどうしても女の子になりたい、女の子の体がほしいと切望しているわけではないことにも気づいた。中途半端だったんです」

女の子的ではあるが、女の子になって男の子と恋愛したいわけではない。そもそも「恋愛」にあまり興味はなかった。女の子として女の子と仲良くしたい、友情以上恋人未満のような関係で満足だ。それがようやくわかっていった。

>自分で自分を把握しづらいつらさについて
 
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