Q.「合不合判定」で偏差値が急落した小6夏。夏休みにリベンジするには?
さて、四谷大塚の「第2回 合不合判定」の結果が出始めてきました。SNS上でも、結果に対する投稿が目立ち始めています。どうしても「偏差値が上がりました!」といった投稿が目を引きますが、成績が上がる子もいれば落ちる子もいるわけですから、目に見えないところで悩みを抱えてらっしゃる方は多いはず。Q. 中学受験を控える小6息子の母です。7月に受けた「合不合判定」の結果が散々となり、親子ともにとても落ち込んでいます。同じ志望校を目指す学校の友だちは偏差値70以上を取ったと聞いて、息子はすっかり自信をなくしてしまい……。
4月から7月にかけてのこれまでの偏差値は、算数が60後半から50後半に、国語は50後半から50前半へ、そして理科は60前半から40台へと急落、社会は50前半から50後半に微増となりました。4教科総合では、60半ばから50半ばへ。第一志望の合否判定は、55%から20%に落ち込んでしまい、志望校を変更すべきなのか悩んでいます。
夏休みに何とか立て直したいのですが、今後どうしたらいいでしょうか?
大切なことは、他人と自分の子を比べないこと。模試の結果に一喜一憂しないことです。周りの友だちやSNSの動向も気になるでしょうが、「最後に笑うのは自分だ!」というくらいの気持ちでやり過ごしましょう。
合不合判定と首都圏模試では偏差値の値が全然違う
まず、友だちの成績について言及しておきますと、その偏差値が「合不合判定」のものなのか、同時期に行われた首都圏模試センターの「合判模試」(以下、首都圏模試)の結果なのかで受け止め方が変わってきます。おおよその数値となりますが、合不合判定にくらべて首都圏模試は、偏差値の出方が10~15ポイントほど高めに出ます。
ですから、もし友だちの偏差値が首都圏模試で72だったとしたら、合不合判定を受けた場合、60くらいになる可能性があります。仮に合不合判定で偏差値72だとすると、それはもう御三家レベルを受験するお子さんということになりますから、ライバルは他にいると考えた方がいいでしょう。
模試は「苦手な単元」のあぶり出しにとても有効
模試は、年間を通して全ての単元を網羅するように作られています。例えば理科には、物理、化学、生物、地学の4つの分野があります。さらにその中の地学分野なら、地震火山、地層岩石、月の満ち欠け、星の動き、太陽の動き、気象などの単元に分かれています。これらの単元がダブらないよう各回に割り振るわけです。実際、2023年度4月9日実施の第1回合不合判定では、「太さが一様でないてこ」「化学反応と熱量変化」「消化と吸収」「月の満ち欠け」が、7月9日実施の第2回では、「豆電球と回路」「気体の発生」「血液循環」「天気の変化」が出題されました。
このように各回出題内容が異なるため、実は「前回に比べて成績が上がった、下がった」と受け止めるのは、あまり意味がないともいえるのです。「たまたま苦手な単元が出題されたから、成績が下がっただけ」と捉えていただくのがいいでしょう。
むしろ、苦手な単元があぶり出せたということで、夏期の学習計画が立てやすくなったのではないでしょうか。
模試の結果は、偏差値がいくつからいくつに下がったと見るのではなく、「全体の正答率」と「本人の正誤」を比較して弱点の把握をしてみてください。全体の正答率が80%もあるのにお子さんが間違えている問題があったら、早急に復習してできるようにしておく必要があります。そうして苦手単元を一つずつつぶしていけば、偏差値もおのずから上がっていくと思いますよ。
注意! 国語の偏差値推移には気を配って
ただし、偏差値の推移を意識していただきたい科目が一つだけあります。それは「国語」です。もちろん国語にも、課題文が合う、合わないという乱高下する要素はあるのですが、問題を解くのに必要な能力は大体決まっていて、模試ごとに異なるということはほぼありません。そのため国語の偏差値は、「集団の中の位置」を割と正確に表していることになるのです。ご質問者のお子さんの場合、国語の偏差値が50後半から50前半になったということですが、これくらいの変化は誤差の範囲です。しかし、これが50後半から40前半のように急落している場合には、注意が必要です。
お腹が痛かったとか、眠かったといった明らかな原因が考えられない場合には、同一年度の受験生たちと同じペースで成長できていない、より具体的には「読解力を伸ばせていない」「記述力を鍛えられていない」といった恐れがあります。国語の学習がおろそかになっていないか、学習法が間違っていないか、いま一度見直してみてくださいね。
※国語の学習についてはこちらの記事をご参照ください。
「国語のできる子に育てるために、保護者がやっておきたい学習法」
「みんなが誤解している中学受験の学習法 国語編」
「中学受験の国語に効く参考書・問題集 プロ塾講師おすすめはコレ!」
模試は“志望校の難易度”によって何を受ければいいのかが変わる
最後に、外部模試の受け方についてお伝えします。外部模試の中でも、俗に「三大模試」といわれるのが、四谷大塚の「合不合判定テスト」、日能研の「全国公開模試」、首都圏模試センターの「合判模試」です。SAPIXの「サピックスオープン」を含め「四大模試」ということもあります。これらは母集団の違いから、偏差値の出方も異なっています。おおよそ四谷大塚と日能研の模試は、首都圏模試のマイナス10~15ポイント、SAPIXは首都圏模試のマイナス20~25ポイントとなります。つまり首都圏模試は、難易度が低めということです。
模試はこれらの中から、お子さんの実力と志望校に合わせて選ぶといいでしょう。具体的には、首都圏模試の偏差値表で60以上の学校を受験する場合には四谷大塚の合不合判定を、70以上の学校を受験する場合には、サピックスオープンを受験されるといいと思います。
ときどき合不合判定と首都圏模試の両方を受験するお子さんを見かけます。しかし9月以降は、より実践的な練習として「過去問」をやり込む必要があるため、模試をダブルで受験することは、効果的な時間の使い方といえません。志望校や本人の実力に合わせて、どちらか一つを受験してください。どちらの模試も、9~12月で毎月一回ずつ行われますが、受験頻度としてもそれが最適だと思います。
ただし、一部のトップ校を志望している場合には、SAPIXの「学校別サピックスオープン」、早稲田アカデミーの「NN志望校別オープン模試」、四谷大塚の「学校別判定テスト」のいずれか、もしくはそのすべてを受験してください。各塾が威信をかけて本番に似せた模試を作成し、ライバルたちはこぞってこれらの学校別模試を受けにきます。そのためより正確に合格可能性を判断できるとともに、ライバルたちの中での自分の現在位置を把握することが可能です。
なお5年生以下のお子さんについては、カリキュラムがすべて終了していないため、未習事項が出題されることも多々あります、受験する場合には、あくまでも参考程度にとどめておくといいでしょう。
いずれにせよ、模試とは「弱点単元をあぶりだすためのもの」であり、結果に一喜一憂して、SNSで公表するためのものではありません。物事の本質を見誤らず、他者のことなど気に留めず、寄り道をしないでまっすぐに志望校合格を目指してください。