ボーナスは堂々ともらって辞めて良い!
毎年4月から6月にかけて転職市場は活況になるが、ボーナスをもらう前に辞めるか、もらってから辞めるか、そこには人の数だけ個別事情がある。もらえるものはもらうに限るという考えの人も多いだろうが、もらわずやめる選択が吉の場合もある。ボーナスの取り扱いは「総合的な損得勘定」で判断する必要があるのだ。
自分が納得する会社の辞め方をしたい人へ、ボーナスのもらい方と放棄する場合の損得勘定について、人材コンサルタントが解説する。
「ボーナスをもらって辞めること」が批判されたケース
最初に、「ボーナスをもらって辞める」という表現が与えかねない誤解について指摘しておきたい。前述した公的なポストにいた人物の辞職のケースでは、退職日をボーナス基準日に決めたこと、組織の規定を利用してボーナスをもらえるようにして辞めようとしたことが批判されたわけだが、それは本来批判されるようなことなのだろうか。翔太郎氏の場合は、ポストに就いた経緯が縁故採用であり、また任命権者である父親が適材適所の任命であると強弁を繰り返したことや、本人の経験不足にもかかわらずポストを与えて箔をつけようとしたことへの強い批判があった。さらに、着任後にとった本人のいくつかの行動が、公的なポストを担うには不適切であったことも批判を増幅させた。退職時に「ボーナスをもらってから辞める」ことが批判されたのは、それまでの経緯から本人に対する人物評価が低かったことに起因している。
ボーナスをもらって辞めるのは「正当な権利」
ここで日本では一般的である年2回支払われるボーナスの仕組みについて、簡単に説明しておく。その日まで会社に在籍していないとボーナスがもらえないと会社が規定した日のことを「ボーナス基準日(賞与基準日)」と言う。ちなみに、国家公務員のボーナス基準日は「人事院規則九―四〇(期末手当及び勤勉手当)」により定められており、夏は6月1日(支給日は6月30日)、冬は12月1日(支給日は12月10日)となっている。
ボーナスを支給する対象となる期間のことを一般にボーナス査定期間と言うが、多くの会社では6月のボーナスの査定期間は前年度の11月から4月であることが多い。この間の仕事ぶりを評価する。ボーナスの評価や計算をするのに一定の労力をかけるため、査定期間と実際の支給日の間には数カ月の時間差がある。
例えば6月1日のボーナス基準日に在籍し、その日に退職届を会社に提出、就労規則が定めるところの退職までの1カ月の告知期間を経て6月30日のボーナス支給日にボーナスを受け取るのと同時に会社を辞めるという人がいたとする。本人の受け取るボーナスは前年度の11月から翌年4月までの評価に基づく報酬だから、そのお金は支払いが前から予定されていたお金であるわけで、会社を辞める日にボーナスをもらうことに何も後ろめたい気持ちを抱く必要はない。
もちろん「ボーナスを支払ったので、社員の皆さん、ぜひモチベーションを上げて、ますますこれからも頑張って会社に貢献してほしい」という会社からのプレッシャーを感じる人や、自分のパフォーマンス(会社への貢献度など)にあまり自信がなく、給料分自分は働いていなかったと引け目を感じる人もいるかもしれない。
しかし、少なくともボーナスをもらって辞めることが社員の正当な権利であることは押さえておいてほしい。間違っても、辞める会社の上司や同僚から文句を言われる筋合いはない。誰しも辞める社員(もう一緒に働く仲間ではない人)に対しては厳しくなるものだから、多少の嫌味を言われるくらいは普通のことだと思っておくのがいいだろう。特に、社員の満足度の低い職場であればあるほど、転職で新しい一歩を踏み出す人には厳しく当たるものだ。
>次ページ:ボーナスをもらう前に辞めたほうがいい場合とは?