作品のすべてに関わる映画監督にはなれません!
――先ほど、「ご自身の経験を映画化した葛監督がうらやましい」というお話がありましたが、宮沢さんは、監督に興味はありませんか?宮沢:ないですね。実は以前、「僕だったらどういう風に撮影するかな」など、監督に興味を持って考えていたことはあるのですが、いろいろな監督さんと仕事をさせていただき、やはり自分には無理だという結論に至りました。
自分の役を理解するだけでも時間がかかるし、体力も消耗するのに、監督や脚本を手がけるということは、作品のすべてに関わらないといけない。登場人物全員を理解して、俳優さんに演出をつけるなんて、僕には到底できないと思ったんです。「この役はどういう感情ですか」とか「どう演じたらいいでしょうか?」と聞かれても「わかりません」と言ってしまいそうで(笑)。
だから僕はプレイヤーとして映画に関わっていきたいです。
映画『レインマン』と『はざまに生きる、春』の共通点
――今回、屋内透を演じるにあたって参考にした映画などはありますか?宮沢:『レインマン』(1988)ですね。発達障害のある主人公(ダスティン・ホフマン)と弟(トム・クルーズ)の関係性が変化していくプロセスを描いた作品です。この映画を見て、人は障害のあるなし関係なく、ひとりでは生きていないんだと思いました。
『はざまに生きる、春』の透くんは春ちゃんと出会って、いい化学反応が生まれて、より豊かな時間を過ごせるようになります。やはり人間は、助け合いながらお互いを高め合ってこそ、素晴らしい毎日を過ごせるようになるのではないかと。『レインマン』を見て改めて「やっぱりそうだよね!」という、ひとつの正解を得たというか、確信を持てるようになりました。 ――宮沢さんは透のことを、透くんといつも敬称をつけるのですね。
宮沢:葛監督が、ずっとそう呼んでいたんです。僕のことは「透くん」、桜子ちゃんのことは「春ちゃん」。それに慣れてしまって(笑)。でも自分でも屋内透は「透」でも「透さん」でもない。「透くん」が一番しっくりきます。
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