年金の平均月額と、65歳以上の一人暮らしの平均的な生活費の内訳
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和3年度)」によると、老齢厚生年金の平均月額は14万3965円です。しかし、1カ月あたりに受け取る年金は平均よりも少ない人もいます。年金からは、国民健康保険料・介護保険料・住民税などが天引きされることもあり、もしかしたら手取りが10万円ぐらいになってしまう人がいるかもしれません。そう考えると、1カ月の支出を10万円に抑えるコツを知っておいた方がいいでしょう。
その前に、総務省「家計調査報告(家計収支編)2022年」のデータで、65歳以上単身世帯の方の生活費がどうなっているのか説明します。 このデータの「65歳以上の単身世帯」の基本情報は、平均年齢が77.2歳。有業者比率が0%であるため、年金や貯金で生計を立てています。また、持家率は84.5%となっているため、住居費の支出額は少なくなっています。もし、賃貸にお住まいの場合は、家賃分を上乗せして考える必要があります。
65歳以上の単身世帯の1カ月間の支出の内訳は、表のとおりです。
65歳以上の単身無職世帯の生活費内訳
一人暮らしに毎月かかる費用の平均額は、15万5495円。もし、年金収入が10万円だとしたら、貯蓄から毎月約6万円を補填することになります。
そうなれば、1年間で72万円、5年で360万円、10年で720万円と、貯蓄からどんどんお金が減ってしまいます。
人生100年時代といわれ、リタイア後の生活は延びる傾向にあります。そのような状況の中、貯金から年金の不足分を補填し続けるのは、考えただけでも憂鬱です。
さらに、病気や要介護状態になれば、支出はもっと増えるかもしれません。
せっかくの老後を、貯金が目減りする不安を抱えながら過ごすのは、楽しい日々とはいえません。そうならないためにも、収入に見合った生活にチェンジする方が、気持ちが前向きになるのではないでしょうか。
もし、うまくいけば、不安から解放され、ゆとりが生まれます。あまり気負わず「10万円以内の生活になったらしめたもの、ものは試しに、トライしてみよう」ぐらいの気持ちで取り組みましょう。
その際、「買ってはダメ、ダメ」と財布の紐を固くし過ぎると、余計なものでも欲しくなってしまうもの。「価値を感じるものであれば買おう!」と心に余裕を持っておく方がうまくいきます。
では、1カ月の支出を10万円に抑えるにはどうしたらよいのでしょうか。次は、そのコツを紹介します。
1カ月の支出を10万円に抑えるコツ(1)お金の使い方の枠組みを決める
1カ月の支出が15万円ほどの場合、そこには目立つ浪費、ムダ遣いは、ほぼ見当たりません。そんな状況から、約30%減の10万円に支出を絞るときは、細かにレシートを確認するよりも、予算をいったん30%カットで枠組みしてしまう方がよいでしょう。
その際、食費、水道光熱費、通信費、医療費などは、生活するうえで優先度が高めの支出ですが、交際費、娯楽費などは、なくても生活に支障をきたすわけではありません。1カ月だけ使わないと決めてみるのもよいでしょう。
まずは、月10万円で生活すると決意しましょう。その後は、お金を使ったら、その都度メモをして残しておく、エクセルで一覧表を付けるなど、自分が何にお金を使ったか記録しましょう。
習慣化すれば、細かな支払いに注意が向きます。お金の使い方が意識的になっていくので、ムダ遣いは確実に減り、家計がどんどん健全になっていくでしょう。
1カ月の支出を10万円に抑えるコツ(2)家の中の不要なものを整理する
現役時代は、仕事と家事で忙しく、家の中が片付いていない方も多くいます。しかし、仕事をリタイアした後は、時間がたっぷりあります。この機会に、家の中をすっきりさせてみてはどうでしょう。家の中を一気に整理するのは難しいかもしれないため、1日に1部屋ずつ整理していくとよいでしょう。1年以上使っていないもの、買ってから一度も使っていないものなど、捨てるときのルールを決め、淡々と整理していけば、スムーズに片付きます。
実際、捨てるものがあまりに多く「ムダ遣いし過ぎたな……」と悔やまれるかもしれません。しかし、そうすることで「捨てるくらいなら、余計な買い物はやめよう」と気持ちが切り替わる場合もあります。
1カ月の支出を10万円に抑えるコツ(3)無料・安価なサービスを利用する
仕事をリタイアした後は、趣味・娯楽が必要不可欠です。しかし、10万円以内で生活するとなると、あまりお金をかけていられません。そのためには、お金をかけない、かからない楽しみを見つけることが大事です。まずは、自治体の無料で利用できるサービスをうまく活用してみましょう。
代表的なものには、図書館や自治体主催のスポーツクラブなどがあります。図書館では、無料で多ジャンルの本、雑誌を読むことができます。自治体主催の教養講座、スポーツクラブは、割安な料金で楽しめます。
また、地域ボランティアにチャレンジしてみれば、イベントのお手伝いを通して、多世代の人々と交流できるかもしれません。
老後は、遠くの友人とはネットを通して交流を深めつつ、現役時代にあまり面識のなかった地域の人々とも交わるようにすれば、バランスよく人間関係の輪が広がるでしょう。
1カ月の支出を10万円に抑えられなかったら
最近の物価高騰の影響もあり、いろいろ工夫してみても、1カ月の支出を10万円に抑えられなかったという場合もあるでしょう。その場合は、身体が元気であれば、手持ちの貯金から不足分を補填するのではなく、働いて収入を得るようにしましょう。
たとえば、徒歩圏内にあるお店などで働いてみてはどうでしょう。時給850~1000円ほどで週に3日、約3時間働けば、3万600円~3万6000円が得られます。
気軽に始められますし、規則正しい生活、適度に身体を動かすことが、健康維持につながります。無理のない範囲でトライしてみるとよいでしょう。