
長年使っていた薬を変えるのは、少し不安なもの。「オーソライズド・ジェネリック」とは?
医療費抑制が喫緊(きっきん)の課題となる日本において、重要な柱の1つとなる、後発医薬品(ジェネリック)の普及。しかし、「安かろう悪かろう」といったイメージがいまだ残っているのも事実です。新薬の開発には多大な時間と費用がかかる一方、特許切れ後に販売されるジェネリックは開発コストを抑えられる分、薬価は安価になります。ジェネリックの基本的な仕組みから、より安心して利用できる選択肢である「オーソライズド・ジェネリック」とは何かまで、分かりやすく解説します。
先発医薬品と後発医薬品(ジェネリック)の違い
病院や薬局で処方される薬には、先発医薬品と後発医薬品の2種類があることは広く知られています。■ 先発医薬品とは
新薬は、多くの研究者や製薬会社が長年の努力と多大な費用をかけて開発されます。これらの知的財産を保護するため、「特許」という仕組みが適用されます。特許が有効な特許期間中は、特許権者(通常は、最初に見つけて研究・開発した製造販売業者)が、独占的にその薬を製造販売する権利を持ちます。これが「先発医薬品」です。
■ 後発医薬品(ジェネリック医薬品)とは
特許期間が満了すると、その薬は国民の共有財産となるため、他のメーカーも製造販売できるようになります。このようにして、最初に薬を見つけたメーカー以外が製造販売するようになった薬が「後発医薬品」です。数十年にわたる使用実績があり、「広く普及した一般的な薬」という意味合いから、「ジェネリック(医薬品)」とも呼ばれます。
先発医薬品とジェネリック医薬品の価格差・ジェネリックへの誤解
先発医薬品の薬価は、開発にかかった研究費や開発費を回収する必要があるため、比較的高めに設定されています。これらの費用が回収できない場合、その製薬会社は潰れてしまうからです。一方で、ジェネリック医薬品は、すでに有効性が認められた成分を使って製造するため、開発にかかる経費は少なく済みます。そのため、薬価は先発医薬品の約半分程度と安価になるのが一般的です。国の医療費抑制策の一環として、近年ではできるだけジェネリック医薬品を使うことが推奨されています。しかし、長年先発医薬品を使ってきた処方医や患者さんの中には、ジェネリック医薬品に変えることに抵抗を感じる方もいるでしょう。ジェネリック医薬品は、先発品と同じ有効成分を含み、同様の効果が期待できます。そして製造販売の承認を得るためには、同一性や適合性の厳しい審査に合格する必要があるため、品質に問題があるわけではありません。
しかし、製造方法や添加物などが異なるため、先発品と完全に同一とは言えません。そのため、「ジェネリックは質が悪い」というイメージを持ってしまう方もいます。
安心できる選択肢「オーソライズド・ジェネリック医薬品」とは
この誤解を解消する1つが、「オーソライズド・ジェネリック医薬品」です。これは、ジェネリック医薬品を製造販売する会社が、先発品メーカーと契約し、製造方法や添加物などの情報提供を受け、基本的に先発品と同じように製造された医薬品です。先発品メーカーの許諾(authorize)を受けて製造販売されるため、「authorized generics」と呼ばれています。オーソライズド・ジェネリック医薬品は、制度上はジェネリック医薬品の一種として扱われますが、先発医薬品とほぼ同一と考えていいものです。価格は一般的なジェネリック医薬品と比べると、若干高めに設定されることもあります。しかし先発医薬品よりは安価であり、安心感もあるため、医療機関や薬局で採用が進んでいます。これまで先発医薬品を使用していた患者さんにも勧めやすい選択肢と言えるでしょう。
身近なオーソライズド・ジェネリックの例
皆さんが気付かないうちに、ジェネリック医薬品として案内されている薬の中にも、オーソライズド・ジェネリックに該当するものが多く存在します。例として、高血圧治療薬には以下のものがあります。- カンデサルタン錠〇mg「あすか」
- バルサルタン錠〇mg「サンド」
- テラムロ配合錠AP「DSEP」
- アムロジピンOD錠〇mg「ファイザー」
などは、オーソライズド・ジェネリックです。
ご自身が服用している薬がオーソライズド・ジェネリックに該当するか知りたい場合、薬局で薬剤師に質問すれば、確認できます。ジェネリック医薬品に対するイメージが変わり、安心して利用できるようになることを願っています。
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