転職のノウハウ

大企業のネームバリューは転職では無効? 「採用現場の評価軸」

大企業出身というネームバリューは、転職において有利に働くのだろうか。結論からいえば、答えは「No」である。転職市場における採用の実態を、人材コンサルタントが解説いたします。ぜひ参考にしてみてくださいね。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

転職市場において、大企業のネームバリューは関係あるの?

転職市場で、大企業のネームバリューは関係ある?

転職市場において「大企業出身」であることは有利に働く?

新卒の就活や第二新卒の転職には、大企業志向が顕著に表れる。

安定のためやブランド志向によるもの、また大企業出身であることが転職する際にも有利に働くのではないかとの考えで、ネームバリューを求めている場合もあるという。果たして転職市場においてネームバリューは関係あるのだろうか。採用現場の判断基準の実態を、人材コンサルタントが解説する。
 
<目次>
 

「大企業に就職できなかった」「子会社出向になった」 転職で不利?

業界大手は知名度が高く、売り上げやシェアも大きい。優れた商品やサービスがあることも多い。また、技術革新の面でも、競合他社よりも一歩先を行っていることもある。日本では中小企業よりも大企業の方が、待遇がいい傾向にもある。これらのことから、大手企業に就職・転職を希望する人は、特に若い世代を中心に多いのではないだろうか。

また、若い世代では、ブランド志向も強いことが多く、上記以外にも、分かりやすい会社の「ネームバリュー」を求めて大企業を志望する人も多いだろう。

ではそのように「ネームバリュー」を求めて大企業に就職したにもかかわらず、「子会社出向」になってしまったら。または、志望していた大企業に就職できず、希望よりも小さな会社でキャリアをスタートさせることになったら。大いに落胆し、すぐに転職を考える人もいるかもしれない。そのような人は、転職の際にも、子会社の肩書きよりも、親会社のネームバリューを持ってして転職に臨んだほうが有利なのではないかと不安に思うこともあるだろう。

若い世代に見られがちなブランド志向が、転職市場ではどれほどの価値を持つのか? 子会社出向になり落胆している人や、自分が志望していた大企業に就職できず、この先の転職でもそれが不利に働き続けるのではないかと不安に思っている人は、本記事を読んで転職市場での評価ポイントについて正しい理解をしてほしい。
 

新卒採用の現場では、大学の名前が参考にされる場合が多い

新卒採用の場合は、有名大学の就活生を中心に採用することを、主たる戦略に置いている大企業も多い。これは日本特有のことではなく、世界各地でその傾向がある。

なぜ有名大学に偏った採用を繰り返しているのかといえば、それはこれまで長年培った経験から、その会社の社風にマッチしやすい人物として、有名大学出身者を分析しているからである。

中長期にわたる人材育成計画を比較的確立している日本の会社では、特別に優秀、もしくはユニークで独創的な人材を集めるというよりも、チームワークを重視し、能力面や情緒面で似たような特徴を持つ人材を集めようとしている。また、入試制度の中で競争を勝ち抜いてきたような基礎知識や情報処理能力、そして協調性や、年功序列を重んじたコミュニケーション能力を備えていることも重視している。

もちろん、同じような特徴を持つ若者ばかりを採用しても事業活動にイノベーションを起こせるはずもないことは分かっているため、新卒採用ではあまり冒険した採用方針を取らなかったとしても、若い世代の中途採用においては、少し方針を変えることがある。

例えば、それまでにあまり採用してこなかったようなユニークな経歴を持つ人物で、何か特別に抜きんでた能力を持っているような人物を採用するような会社は現代では少なくない。中途採用の現場では、以前よりもかなり採用基準の多様化は進んでいる。
 

中途採用の現場では、大企業出身であることのアドバンテージは少ない

まだ仕事の経験が浅く、ブランド志向が強めで安定性重視の就職・転職をしたいと考える若い世代が一定数いることは指摘した通りだが、仕事にも慣れ、専門性を磨いてきた中堅以上の社員にとって、転職活動において大企業出身であることに、どれほどのアドバンテージがあるだろうか。

結論からいえば、大企業のネームバリューが中途採用の現場で考慮されることはあまりない。

例えば、本体が大手企業グループであっても、事業内容によっては独自の事業会社を作って独立させており、専門性の高い主要なグループ子会社として認知されている会社はたくさんある。

伊藤忠商事は総合商社大手として知名度の高い会社であるが、システムインテグレーターの世界においては、伊藤忠商事の主要な子会社である伊藤忠テクノソリューションズに突出したパフォーマンスと知名度があり、その専門性からも業界内外からの注目が集まっている。このため、同社の人材は転職市場での評価も当然高いといえる。

もちろん伊藤忠テクノソリューションズ自体が業界を代表する大手企業であるが、親会社、子会社というくくりで見れば、親会社の伊藤忠商事にシステム開発に関連したようなIT事業部が仮にあったとして、その部署で働いている人の方が、子会社の伊藤忠テクノソリューションズで働く人よりも転職市場で評価が高いなんてことはあるわけがない。

中途採用で評価されることは、あくまでも経験と実績であり、具体的にどのような専門性があるか、実務能力があるかなど、出身企業で果たした役割や人物評価も含めて、総合的に判断されるものである。

業界を代表するような大手企業出身であると、まるで自分の実力もそれに見合ってかさ上げされるかのようにとらえるのは明らかに錯覚である。もし大企業のネームバリューをアピールしようとする人物が面接を受けたら、むしろ逆効果で、本来の実力より低く評価されるかもしれないので注意が必要だ。
 

ネームバリューで勝負しない。経験と実績、専門スキルをアピール!

仕事の経験がない学生を判断する新卒採用では、学歴を参考にする場合も多いが、中途採用では名のある企業の出身者であるかよりも、実際に経験してきた仕事の中身、実績、人物像などが採用の判断基準となる(業界によって多少の違いはあろう)。

若い世代の転職希望者の中には、大企業出身であることが転職に有利に働くのではないかとの誤解もあるようだが、実際はそのような中途採用は行われていないことをしっかりと理解してほしい。もちろん大企業出身が不利ということではない。出身企業のネームバリューは有利でも不利でもないということだ。または、アピールの仕方を間違えれば、マイナス評価につながる可能性があることにも注意したい。

転職市場では、会社のネームバリューで勝負を試みることはせず、自らが経験した仕事の中身、仕事への志、自ら積み上げた実績、そしてさまざまなヒューマンスキルをアピールして、自分が希望する仕事を獲得してほしいものである。

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