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公的年金の充実より自助努力を選択
公益財団法人生命保険文化センターが2022年10月に公表した「2022年度生活保障に関する調査《速報版》」(調査期間2022年4~6月、対象:18~79歳の男女、回答4844人)によると、8割以上の人が老後生活に対し不安を持っています。不安のトップ3(複数回答)は、「公的年金だけでは不十分」79.4%、「日常生活に支障が出る」57.3%、「自助努力による準備が不足する」36.3%です。「退職金や企業年金だけでは不十分」も31.4%で続いています。
老後の備えに対しては、「今より高い保険料や税金を払ってでも公的年金を充実してもらいたい」に近い考えは38.3%、一方「公的年金のために今よりも高い保険料や税金を払うよりは、自助努力で準備していきたい」に近い考えが55.3%。これは公的年金への不信感の表れでしょうか。
老後資金は自分で準備する?
●老後の経済的生活水準は?
- つつましい生活……63.9%
- 同じ程度の生活……26.5%
- 経済的に豊かな生活……2.3%
- 20万~25万円未満……27.5%
- 30万~40万円未満……18.8%
- 25万~30万円未満……14.4%
- 10~15万円未満……31.4%
- わからない……19.8%
- 10万円未満……19.3%
- わからない……22.5%
- 30~35万円未満……20.5%
- 50万円以上……18.0%
●公的年金で老後の日常生活費はまかなえると思う?(トップ3)
- あまりそうは思わない……39.5%
- まったくそうは思わない……34.5%
- まあそう思う……18.9%
●老後の生活資金をまかなう手段は?(複数回答・トップ3)
- 公的年金……87.0%
- 預貯金……71.8%
- 企業年金・退職金……37.0%
●何らかの経済的準備は?(複数回答)
- している……66.5%
- していない……31.4%
- わからない……2.1%
出所:「2022年度生活保障に関する調査」(公益財団法人生命保険文化センター)
このように夫婦2人の老後の最低日常生活費の月額を「20万~30万円未満」と予測する人は約42%です。では、現状はどうなのか、総務省「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」を見てみましょう。
老後に必要な生活資金、高齢夫婦無職世帯は約1443万円
総務省「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」によると、夫婦高齢者無職世帯(65歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1カ月の収入は約24.6万円、支出は約26.9万円、毎月約2.2万円の赤字です。- 収入:24万6237円(うち社会保障給付は22万418円)
- 消費支出:23万6696円
- 非消費支出:3万1812円
- 収入-支出=▲2万2271円
では単身世帯を見ていきましょう。
老後に必要な生活資金、高齢単身世帯は約1020万円
高齢単身世帯(65歳以上の単身無職世帯)の1カ月の収入は約13.5万円、支出は約15.5万円、毎月約2万円の赤字です。- 収入:13万4915円(うち社会保障給付は12万1496円)
- 消費支出:14万3139円
- 非消費支出:1万2356円
- 収入-支出=▲2万580円
出所:総務省「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」
老後資金3000万円で安心な老後を確保できる!
老後資金は、生活資金とは別に予備資金(=住宅のリフォームや医療・介護費用、子どもへの援助費用、葬儀費用など)として1000万~2000万円程度は準備したいので、65歳リタイア時に貯めておきたい老後資金は、夫婦世帯は2500万~3500万円、単身世帯は2000万~3000万円程度と考えられます。一般に言われている「老後資金3000万円」は、65歳リタイアの夫婦世帯が、生活環境を整え医療や介護への費用など老後に必要となるであろう費用を含む金額と考えられます。
では、老後資金の準備ができているかどうか、65歳以上の世帯の貯蓄額を見てみましょう。
65歳以上の無職世帯の平均貯蓄額は2414万円
「家計調査報告(貯蓄・負債編)2022年(令和4年)平均結果」によると、世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高の平均は2414万円です。少し詳しく見てみましょう。世帯主が65歳以上の世帯の平均貯蓄額はいくら?
貯蓄現在高2500万円以上は34.2%、うち3000万円以上は27.9%で、予備資金まで準備できている世帯は3割弱です。貯蓄3000万円の達成は現実には難しいというのがわかります。
老後資金の一つの柱「公的年金」では納得の老後生活をまかなうのは厳しく、もう一つの柱の「退職金」も減額傾向にあります。老後資金は自助努力の時代に入りました。65歳以降も働く、スキルを磨いて収入をアップ、支出の見直し、身の丈に合った資産形成の方法、などを検討する必要があります。
出所:総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)2022年(令和4年)平均結果(2人以上の世帯)」
世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2022_gai4.pdf
【参考記事】
めざせ1000万円!賢い老後貯蓄とは