ゲームにハマるのは「正の強化」による心理のからくり
心理学では、「正の強化」という現象があります。これは、ある行動をしたらその子にとって嬉しいことが起こったので、それ以降、その行動の頻度が上がるようになるという心理のからくりです。ゲームに夢中になる心理というのは、この「正の強化」という行動の原理で説明ができます。高揚感や達成感が得られたり、純粋に楽しいと感じるために、さらにのめり込んでしまうということです。とくに小さいうちは、完全にゲームの世界に入り込んでしまったのではというくらいハマり、なかなかやめられないという子もいるでしょう。
そもそもゲームは勝ったり何かを得るという体質なので、本来の期待とは逆に上手くいかなければ、どうしても感情が乱れることになるものです。特に、ゲーム以外でも癇癪を起こしやすい小さい子ほど、自分の感情をコントロールするのは苦手です。それを踏まえると、幼児や小学校低学年くらいの子であればあるほど、上手くセルフコントロールしながらゲームをやり続けられるかといったら、そう簡単ではないことは想像に難しくないでしょう。
ゲームを通して「セルフコントロール」の経験を積む
このようなゲームが要因の癇癪には、当たり前なようで難しいのですが「決めた時間でスイッチを切る」という経験を積むことが有効です。まず、そもそも結果的にゲーム時間を短くすることは、上手くいかない場面に遭遇し癇癪にたどり着く数を減らせます。時間で区切ることが難しいタイプのゲームの場合は、回数などで決めるのがよいでしょう。「いやいや、スイッチを切ること自体が癇癪の要因だから」とおっしゃる方もいるでしょうが、実はここも同様のセルフコントロールが求められます。もっとやりたいけれどスイッチを切るのも、ゲーム中の感情の揺れをほどほどにするのもセルフコントロール力なのです。
「1日〇分」と決めて時間になったらスイッチを切れば、1回セルフコントロールを経験したことになります。1週間で×7回です。
自分の気持ちを抑えたり切り替えたりする力は、“場数”がとても大切です。そう考えると、スイッチを切るということを通して、ゲーム以外にも必要なセルフコントロール力を高める訓練になるという発想もできるわけです。セルフコントロール力は、年齢を重ねれば自然と身につく力のようにも思えるかもしれませんが、実際に周りを見れば、大人でも自分を抑える人が得意な人と苦手な人がいるように、それまでの経験がカギになるのです。
ちなみに、スイッチをオフにすると癇癪を起こすからといって、「じゃあ、ちょっとだけだよ」と譲歩してしまうと抜け出せません。決めた区切りを地味にコツコツと守り続けていき、それは絶対なのだということがいずれ伝われば、癇癪はなくなっていきます。また、ゲーム機自体に子どもが自由にアクセスできるとどうしてもその区切りが緩みがちになるので、使ったら親に返すなど管理体制から整えることをおすすめします。
「負の強化」の状態になると危険領域に
ゲームは「正の強化」であるとお話ししましたが、それよりもさらに一歩進んでしまい、ゲームをやっていないと手がうずうずしてしまう、気持ちがイライラしてしまう、そしてゲームに手を伸ばしたらその嫌な気分が解消される……このようなことが起こっていたら、それは「負の強化」という状態といえるでしょう。例えば、頭が痛い、お腹が痛い、そんなときに「これを飲めば効く」とわかっていれば、つい薬に頼ってしまいます。これと同様で、ゲームに触れれば落ち着くと認識してしまうと、どうしても手が伸びるようになってしまう状態のことです。自分が不快な状況にさらされているときに、ある行動を取ったらそこから解放されるとわかれば、その行動をより頻繁に取りたくなるものです。もしゲームを手にしていないと落ち着かないような状態にまできていたら「依存」が起こっているともいえますので、そうなる前に親が関わっていくことが大事です。
最近、WHOが「ゲーム障害」をあらたに「依存症」領域に加えました。今、ゲーム依存で悩む人たちは世界中にいます。ひどいと入院して治療するというようなケースも出てきています。子ども任せにしてしまうとのめり込みやすくなりますし、今回のテーマである「癇癪」もエスカレートしかねません。
どこかで制限をつけることがカギになりますので、まずは癇癪を起こされることを恐れずに、ほどほどのところでスイッチを切る習慣を身につけていくことが大切です。