親が作る「復習ノート」など……「中学受験算数」の誤解3つ
親が作る「復習ノート」は黒歴史に⁉
そこで今回は、受験業界に30年近くいる筆者が接してきたご家庭の9割近くがしていた「中学受験算数の誤解」をご紹介しながら、効果的な勉強方法についてアドバイスします。
誤解1.計算ミスにはひたすら練習が有効
9割の人がしている中学受験算数の誤解の1つ目は、計算ミスをなくすには毎日ひたすら練習して量をこなすのが大切ということです。確かに計算ミスをなくすには、日々の練習の積み重ねが大事です。しかし、毎日計算練習をしているのにミスが減らないとしたら、計算をするのが“作業”になってしまっていて、頭を使って“工夫”をしていないということが原因として考えられます。
例えば、
15×12=?
これは、いくつでしょうか?
答えは180です。
計算を工夫する習慣がついている子は、すぐに計算を始めません。もっと簡単な式に直して計算するのです。まず、15×12という計算は、15を2倍して30に、12はその半分の6にします。そして、30×6=180と答えを導くのです。
もう1つ問題です。
999×234=?
これはどのように計算しますか?
ひっ算でそのまま解くと、とても複雑ですね。そこでまずは999に注目します。999はあと1を足せば、1000になる数字です。
そこで上の計算を次のように書き換えます。
(1000ー1)×234
つまり1000×234ー234となり、単純な引き算にすることができます。
答えは、234000ー234=233766です。
このように複雑な計算を真っ向勝負で力づくで解くよりも、工夫できることを考える方が楽に正確に解けることがあります。楽に、正確に解く。一石二鳥です。
中学受験の算数問題は、一見複雑な計算ではあるものの、工夫することによって実はシンプルな計算で答えを出せるものが多くなっています。計算の工夫の“着眼点”も試されているわけです。
誤解2.平面図形には天性のひらめきが必要
2つ目の誤解は、平面図形の問題を解くには天性のひらめきやセンスが必要ということです。平面図形は問題のパターンに限りがあるため、センスが絶対必要というわけではありません。図解問題は、演習・作図経験・知識の蓄積、それによる補助線や解法の類推スキルでトレーニングできます。算数が苦手な子でも“得点源”にできるのが平面図形なのです。
なぜ得点源にできるのかというと、平面図形の問題を作る学校の先生が問題のネタ切れだからです。だれも見たことのない斬新な平面図形の問題を作るのは、とても難しいものです。ごくまれに見たことのない図形問題の良問が出題されると、算数講師の間で「さすが○○中の問題だね」と話題になるくらいです。
図形を得意分野にするためには、まず図をノートに書くことから始めましょう。図解問題が得意でない子の多くは図を書けません。しかし、作図の作業を通じて「ああ、この辺とこの辺は、二等辺三角形なのか!」というように、書いているうちに自分で気付いて答えを出せることがあるのです。
特に円や扇形の単元の授業だと図を写せない子が多く見られますが、まずは定規やコンパスを使って、ていねいに作図をすることから始めます。図形が苦手なら、図をしっかりと書くところからはじめましょう。きっと図形が得意分野になるはずです。
誤解3.「見直しノート」を作れば弱点を克服できる
3つ目の誤解は、「見直しノート」を作ってあげれば、弱点を克服できるという誤解です。保護者の方がわが子につくる見直しノートは、“全部わが子ができなかった問題”になってしまう傾向があります。それは子どもにとっては「黒歴史ノート」のようなものです。できない問題ばかりだと、子どもはやる気が出ず、心が折れてしまう可能性があります。もし、そのノートがあまりうまく機能していないようであれば、子ども自身に解説を作らせるというスタイルの「復習ノート」がおすすめです。 算数の問題を考えるためには、なぜそうなるのかを言葉で理解する必要があります。それぞれの数字の意味、表や図を書くときに注意することはなにか、なぜその式になるのか、ということについて頭の中を整理することができるからです。単純な反復練習ではなくて、「理解を深めるための証明」という考え方で復習ノートを作ると、知識の定着がより強いものになるでしょう。
最近の中学入試では、考え方を書かせる学校が増えています。式が書ければ問題ありませんが、ふだんから解説を書く訓練をしていれば、記述式の解答にも対応できるようになります。
自分で解説を書く復習ノート作りは、時間がかかります。しかし大事なことは、できなかった問題が解けるようになることであって、できなかった問題を解き直すことではありません。間違えた問題を解き直しているのに、なかなか解き方を身につけられないなら「復習ノート」の活用を試してみる価値はあるでしょう。
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